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冬に気持ちが落ち込む「季節性うつ病」 3つの方法で対策
2014年11月04日

「このところ落ち込むことが多くなった」「憂鬱な気分がする」「体もだるいし疲れやすくなった」。そう感じている人はいないだろうか? もしそうであれば、秋から冬にかけて発症が増える「季節性うつ病」が疑われる。
冬になると発症が増える「ウインターブルー」
うつ病の中に、秋から冬にかけて毎年症状があらわれる「季節性うつ病」がある。この病気は、「季節性感情障害」(SAD)ともいわれている。
季節性うつ病の特徴は周期性にある。毎年、日照時間が短くなる10月から11月にかけて症状があらわれはじめ、日差しが長くなる3月頃になると回復するというサイクルを繰り返す。その症状から「ウインターブルー」(冬季うつ病)という別名がある。
季節性うつ病は脳機能障害の一種で、「倦怠感」「気力の低下」などの症状がみられることが多い。長時間眠っても睡眠不足を感じて睡眠時間が異常に長くなる「過眠」や、食事が甘い物や炭水化物に偏り食べ過ぎる「過食」などが伴う場合もある。症状が重いと日常生活に支障をきたすこともある深刻な病気だ。
季節性うつ病の予防や治療には、午前中に起床して太陽の光を浴びる規則正しい生活習慣が効果的だ。日差しが短くなり始める秋からは、ウォーキングや通勤時間などを活用し、積極的に朝の光を浴びるとよい。
日中に太陽光を浴びるとセロトニンという物質が作られる。セロトニンは、脳から分泌される睡眠ホルモンであるメラトニンの原料となる。太陽の光が少ない冬の期間は、セロトニン減少が起きメラトニンが十分に生成されない。
メラトニンには、季節のリズム、睡眠・覚醒リズム、ホルモン分泌のリズムといった概日リズム(サーカディアンリズム)を調整する作用があり、不足することで変調をきたしやすくなる。
なぜ秋から冬にかけて発症が増えるのか
なぜ秋から冬にかけての時期に季節性うつ病を発症しやすくなるのかというと、日照時間が減ることによって、脳内における「セロトニン トランスポーター」(SERT)と呼ばれるタンパク質の量が著しく変動するためだ。
デンマークのコペンハーゲン大学の研究チームは、11人の季節性うつ病の患者と、23人の健康な人を対象に、陽電子断層撮影法(PET)という検査を行い、脳にどのような変化が起きているかを調べた。
その結果、うつ病の兆候がみられる人、特に冬に発症した人は夏に発症した人に比べ、SERTレベルが5%高くなっていることが判明した。
SERTは脳内の神経伝達物質である「セロトニン」を回収することで、神経伝達を調節している。SERTレベルが上昇し、セロトニンの量が不足することが、うつ病の一因になっている。
季節性うつ病を緩和するための3つの対処法

季節性うつ病の改善に必要なのは、自然の光により多く当たること。とはいえ、冬は日が短くなるので、なかなかそうもいかない。可能であれば、自宅や仕事場の照明を明るいものに取り替えると効果的だ。
治療では「高照度光療法」が行われることが多い。太陽光やそれと同等の光を浴びることで体内時計を調節して生体リズムを整える治療法で、多くの患者で効果があるという。 2 運動を習慣化する
運動をすることで、爽快感や活動的な気分を得られる。寒い季節はできるだけ動きたくないかもしれないが、運動を習慣化することで心身にもたらされる改善効果は大きい。
活発な運動によって、気持ちをコントロールする神経伝達物質のひとつ「ドーパミン」が分泌され、気分が落ち込んでいたり、イライラに悩まされているときに、症状を改善する効果を得られる。
日光のもとで早歩きするだけでも大きな違いがある。運動をはじめることは、生活スタイルを改善するための第一歩になる。 3 「ToDoリスト」を作り整理する
やるべきことが山積みになっていると、気分も萎えがちだが、タスクやプロジェクトが順序良く、きちんと整理されていると、落ち込みや憂鬱感を緩和できる。
「ToDoリスト」を作成し、実行可能なものに優先順序を付けて、自分に合った生産性向上スタイルを身に付けることが、うつ病の対策になる。
生産性を高め、自分が取り組むべき目標やタスクを明確にすることで、時間の有効活用につながる。手付かずのタスクだらけになり、頭を悩ますことからも解放される。タスクからタスクへスムーズに移ることができれば、気分が落ち込むことも少なくなる可能性がある。 Researchers confirm the biochemical cause of seasonal depression(SAD)(コペンハーゲン大学 2014年10月19日)
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