ニュース
糖尿病を発症すると20年後に認知能力の低下が起こりやすい
2014年12月05日

糖尿病患者や糖尿病予備群が血糖コントロールの悪い状態が続くと、20年後に認知機能の低下が起こりやすいことが、米国の1万3,000人以上を対象とした調査で明らかになった。
血糖コントロールが不良だと認知能力は低下しやすい
中年期に糖尿病を発症すると、20年後に認知症を発症し、記憶力や思考力が低下する危険性が高まることが、米ジョンズホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学部の研究で明らかになった。
「糖尿病の人や糖尿病予備群は、20年後に認知能力の低下するリスクが19%上昇することが示されました。影響が大きいのは、十分な血糖コントロールを得られていない患者です」と、ジョンズホプキンス大学のエリザベス セルビン准教授(疫学部)は言う。
発表されたのは、米国の4地域の住民を前向きに長期間追跡した「Atherosclerosis Risk in Communities」(ARIC)研究の成果。この研究は、米国立衛生研究所の資金提供を得て行われた。
「認知症を発症する5~7年前に、認知能力の低下が起こります。糖尿病が認知能力の低下にどう影響するかを調べることが研究の目的です」と、セルビン氏は説明している。
調査には平均年齢57歳の男女1万3,351人が参加し、うち1,779人が糖尿病と診断された。研究チームは、調査を19.3年(中央値)継続し、言語能力、実行能力と処理速度、言語の流暢さを調べるテストを行った。
その結果、認知機能の低下は、糖尿病のある人ではそうでない人に比べ、19%多いことが判明した。
一般に、認知能力の低下は年齢が高くなると自然に進行するが、糖尿病でない人が65歳で経験する認知能力の低下を、糖尿病のある人では60歳で経験するという。
認知症は糖尿病の「第8の合併症」
記憶力や思考力などの認知能力の低下は、過去1~2ヵ月の血糖値の平均を示すHbA1cが5.7%未満の人に比べ、7%以上の人でより進行しやすいことも判明した。また、糖尿病の罹病期間が長いほど、これらの能力は低下しやすくなる傾向が示された。
血糖コントロールが不良の状態が続くと、脳卒中や心臓病、腎臓病、網膜症などの合併症が起こりやすい。同様に認知症も起こりやすいことが最近の研究で明らかなっており、認知症は糖尿病の「第8の合併症」と呼ばれている。
社会の高齢化に合わせて認知症は糖尿病と同じく増加している。米国では、2010年に認知症の医療コストは1,590億ドル以上に上り、2040年には80%増えると予測されている。
なぜ糖尿病の人で認知能力の低下が起こりやすいかは不明だが、「高血糖は脳の血管にもダメージをもたらしている可能性がある」と研究者は指摘している。
50歳を過ぎたら、血糖コントロールの改善をより徹底的に行い、活動的な生活をすることが、認知症の予防につながる。「肥満のある人は、体重を5~10%減らすことで、糖尿病を改善できます」と、セルビン氏は指摘している。
精神的な活動を活発にし、感覚的な刺激の豊かな生活をし、運動を習慣として行い、食事を含む規則正しい生活スタイルを身に付けることが、認知症の予防につながる。
Diabetes in Midlife Linked to Significant Cognitive Decline 20 Years Later(ジョンズホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学部 2014年12月1日)Diabetes in Midlife and Cognitive Change Over 20 Years: A Cohort Study(Annals of Internal Medicine 2014年12月2日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「特定保健指導」に関するニュース
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】女性と男性はストレスに対する反応が違う メンタルヘルス対策では性差も考慮したアプローチを
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
- 2025年02月25日
- ストレスは「脂肪肝」のリスクを高める 肥満やメタボとも関連 孤独や社会的孤立も高リスク
- 2025年02月25日
- 緑茶を飲むと脂肪肝リスクが軽減 緑茶が脂肪燃焼を高める? 茶カテキンは新型コロナの予防にも役立つ可能性が
- 2025年02月17日
- 働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
- 2025年02月17日
- 肥満やメタボの人に「不規則な生活」はなぜNG? 概日リズムが乱れて食べすぎに 太陽光を浴びて体内時計をリセット
- 2025年02月17日
- 中年期にウォーキングなどの運動を習慣にして認知症を予防 運動を50歳前にはじめると脳の健康を高められる
- 2025年02月17日
- 高齢になっても働き続けるのは心身の健康に良いと多くの人が実感 高齢者のウェルビーイングを高める施策
- 2025年02月12日
-
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より - 2025年02月10日
- 【Web講演会を公開】毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」2025年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」