ニュース

「健康寿命」を延ばすと2~5兆円の節減効果 介護予防事業の普及が条件

 健康状態に問題がなく日常生活が制限されることなく暮らせる期間を示す「健康寿命」を延ばすと、10年間に2~5兆円程度の医療・介護費用が節減できるという推計を、厚生労働省研究班(主任研究者=辻一郎・東北大学大学院公衆衛生学分野教授)がまとめた。
10%が「要介護1」に変わると2兆4,914億円の低減効果
 「要介護2」以上の人は、自力では立ち上がりや歩行などが困難になり、食事や排泄、入浴、衣服の着脱などで介助が必要になる。厚生労働省の「介護給付費実態調査」によると、1年間継続して介護予防サービスや介護サービスを受給した人の数は349万。うち、要介護2以上は217万人となっている。

 研究班は、宮城県大崎市の65歳以上住民約1.5万人を追跡して、要介護発生リスクとの関連を調査した。要介護2以上の人の合計が2011年時点から20年まで、1年に1%ずつ、10年で計10%減った場合の介護費の節減額を算出した。

 厚労省の調査から推計した結果、この10%全て介護が不要な状態になると、10年間で5兆2,914億円を節減できることが分かった。10%が「要介護1」に変化すると、2兆4,914億円を低減できるという。1年間に換算すると、それぞれ5,291億円と2,491億円になる。

 研究班によると、介護予防事業特定高齢者施策の利用が高いと、要介護1以上の増加を減らせることが明らかになっている。介護予防事業が軽度要介護認定率の増加を抑えている。

 一方、厚労省は特定高齢者施策の利用者数が高齢人口の5%となることを目安として「地域支援事業実施要綱」に提示しているが、利用率が5%以上であった施設は全体の0.4%だった。介護予防事業が十分に普及していない現状がある。

 生活機能や心身機能が改善する人の特徴をつかめれば、介護予防効果の期待できる対象者を絞り込むことができ、介護予防システムの効果が高まる。「要支援・要介護ハイリスク者を拾い上げる予測精度の高いスクリーニング・ツールを開発して、市町村が地域の特性に応じて効果的な介護予防の取組みを実施できるように対策することが必要」と、研究班は述べている。

東北大学大学院医学系研究科 社会医学講座公衆衛生学分野
「国民の健康寿命が延伸する社会」に向けた予防・健康管理に関する取組の推進(厚生労働省)
厚生労働科学研究 健康寿命のページ(厚生労働省)

[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2023年08月09日
8020達成率は5割以上 若い世代の歯周病増、口腔ケアが課題に
厚労省「令和4年歯科疾患実態調査」より
2023年08月08日
若い世代でも「脂肪肝疾患」が増加 やせていても体脂肪が蓄積 肥満とどう違う?
2023年07月28日
2022年度版「健診・保健指導施設リスト」状況を報告します【保健指導リソースガイド】
2023年07月24日
標準体重でも3分の1は実は「肥満」 BMIは健康状態をみる指標として不十分 やせていても安心できない
2023年07月11日
自治体健診で高齢者のフレイルを簡便に判定 「後期高齢者の質問票」でリスクが分かる 「フレイル関連12項目」とは?
2023年06月20日
肝臓学会が「奈良宣言2023」を発表 肥満・メタボの人は「脂肪肝」にもご注意 検査を受けることが大切
2023年06月12日
自治体健診で「心房細動」を早期発見 健康寿命と平均寿命の差を縮める 日本初の「健康寿命延伸事業」 大分県
2023年06月05日
要介護認定リスクと関連の深い健診6項目が明らかに 特定健診・後期高齢者健診のデータから判明 名古屋市
2023年05月19日
令和4年度「東京都がん予防・検診等実態調査」 受診者増加のための取組み率は健康保険組合で85%に上昇
2023年05月18日
さんぽセンター利用の5割以上「健診結果の措置に関する説明力が向上」
-『令和4年度産業保健活動総合支援事業アウトカム調査報告書』-
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶