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「肥満でも健康」の状態は長く続かない 20年で検査値が悪化
2015年01月25日

肥満と診断された時点でも健康診断の検査値が正常で、健康状態が良好と判定されたとしていも、それは一時的なものであることが多い。肥満を解消しなければ、大半の人は20年後に「不健康」な状態に陥るという調査結果が発表された。
肥満や過体重の人は要注意
太っている人は、高血圧や2型糖尿病、腎臓病など、さまざまな病気にかかりやすい。脂肪の蓄積は、インスリンの効き方が悪くなるインスリン抵抗性を引き起こし、血糖コントロールの悪化につながる。そのため、過体重や肥満の人は、減量をするようアドバイスされることが多い。
ロンドン大学ユニバーシティー カレッジ(UCL)の研究で、過体重の人は痩せている人に比べ、心臓発作や脳卒中、特定の種類のがんなどを発症するリスクが月日を経るごとに高まることが明らかになった。
研究チームは、39~62歳の男女2,521人(男性が75%)を対象に、この種の調査としては最長規模となる20年間の追跡調査を行った。1992/1994年から2012/2014年にかけて、5年ごとに追跡調査を行った。
「肥満であっても健康でいたいと願う人は多いのですが、残念ながら過半数の人で、健康でいられる期間は長くないことが明らかになりました」と、UCLのジョシュア ベル氏は言う。
研究チームは、体格指数(BMI)やコレステロール、血圧、空腹時血糖値、インスリン抵抗性の検査を行った。初期段階で肥満とされた人は181人だった。
「健康的な肥満」について、高血圧や高コレステロールではなく、また心臓病や糖尿病などの疾患のない状態と定義した。「健康的な肥満」と判定されたのは66人だった。
20年の研究期間中に、これらの健康的な肥満とされた人の約半数の健康状態が低下した。5年後には21人(32%)が「不健康な肥満」の状態に、10年後には27人(41%)、15年後には23人(35%)、20年後には51%にあたる34人が「不健康」な状態に陥っていた。
また、肥満とされた人のうち、期間中に減量して標準体重になった人の割合は11%にとどまった。
肥満や過体重にメリットはない 5%の減量をアドバイス
「20年という長期間でみると、肥満でありながら健康でいられる人は多くはいないことが明らかになりました。太りすぎや肥満であることにはメリットはありません。肥満は体にとって危険信号のようなもので、健康を損ないやすい状態なのです」と、ベル氏は話す。
若い頃に体格指数(BMI)が25以下で標準体重だった人も安心はできない。フィンランドで行われた26歳の成人1,488人を対象とした別の研究では、6年間の追跡期間中に、BMIがわずかに上昇しただけで、コレステロール値や血圧値、血糖値などが上昇することが示された。
過体重や肥満の人は、減量して標準体重まで落とすことが勧められるという。ただし、体重を大きく減らさなければならないわけではなく、「肥満や過体重の人は体重の5%を減らすだけでも、肥満にともなう合併症、腰痛や関節痛など、さまざまな病気を予防・改善しやすくなります」と、研究者はアドバイスしている。
The Natural Course of Healthy Obesity Over 20 Years(Journal of the American College of Cardiology 2015年1月6日)Metabolic Signatures of Adiposity in Young Adults: Mendelian Randomization Analysis and Effects of Weight Change(PLOS Medicine 2014年11月9日)
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