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不眠対策のお酒は逆効果 アルコールが睡眠メカニズムを乱す原因に
2015年01月25日
眠る前にアルコールを飲むと、脳に本来備わっている睡眠を調整するためのメカニズムが妨げられるおそれがある。アルコールは体の睡眠調節メカニズムである睡眠恒常性(ホメオスタシス)に影響を与え、不眠を引き起こすことが、米ミズーリ大学医学部による研究で明らかになった。
アルコールは睡眠を調整する脳のメカニズムを妨げる
アルコールには強力な誘眠もしくは睡眠誘導の作用があることが知られている。米国成人の約20%が眠るためにアルコールを飲んでいるという。
しかし、眠る前にアルコールを飲むと、かえって睡眠の質が低下することが明らかになった。ミズーリ大学医学部の研究チームは、アルコールが睡眠に与える影響について5年以上研究している。
これまでは、アルコールが「概日リズム」に影響し、睡眠を促すと考えられていた。概日リズムは体内時計によって調整され、およそ24時間周期で繰り返される。
しかし、実際にはアルコールは人の「睡眠恒常性」(ホメオスタシス)に影響し、睡眠を促すことが、ミズーリ大学医学部のマヘーシュ タッカー氏らの研究で明らかになった。
睡眠恒常性は、肉体や脳の疲労度に応じて眠りの質をコントロールする働きをする。睡眠時間の調整にはアデノシンという睡眠物質が関わっている。
アルコールの作用でアデノシン濃度が上昇
アデノシンは覚醒していた時間に応じて必要とされる睡眠を調整している。覚醒していた時間が長くなるとアデノシンの濃度が上昇し、脳の前脳基底部にある覚醒促進細胞の活動が抑えられ、睡眠が促される。
夜の早い時間に寝ると、翌日の夜中や早朝に目を覚ますことがあるのは、睡眠恒常性の働きによるものだ。
研究チームがラットおよびマウスを用いて実験を行ったところ、アルコールの摂取によってアデノシンの濃度が上がり、覚醒促進細胞の活動が抑えられることが判明した。
寝る前に頻繁に飲酒をしている人たちを対象に、アルコール離脱が睡眠にどのように影響するかについても検討した。飲酒する時間が長いと被験者は予想通り眠りに落ちたが、数時間以内に目を覚まし、眠りに戻れなくなった。
アルコールが睡眠の質を低下
眠れないからといってお酒を飲むと、いったん眠くはなるが、結局、夜中や早朝に目が覚め、その後、眠れなくなるという事態に陥るのは陥ってしまうのは、睡眠恒常性が影響している。こうした状態が長く続けば、不眠症になる恐れがある。
「アルコールはには眠りを誘発する作用がありますが、アルコールを飲むと睡眠の質はかえって低下します。アルコールを睡眠誘発剤として使用すべきではありません」と、タッカー氏は言う。
アルコールには利尿作用もあるため、トイレに頻繁に行くようになり、朝早く目が覚めてしまい、結果として睡眠の質はさらに低下するという。
「眠れないからといってアルコールに頼るべきではありません。医師に相談し、眠れない根本原因を突き止めるべきです。個別の治療で、また眠れるようになります」と、タッカー氏は述べている。
MU Researchers Find Alcohol Interferes with the Body's Ability to Regulate Sleep(ミズーリ大学 2014年12月10日)
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