ニュース
メトホルミンはがん治療に効果的 がん攻撃細胞の機能を回復
2015年04月09日
2型糖尿病治療薬「メトホルミン」に、がん細胞を攻撃する免疫細胞を活性化する作用があることが、岡山大大学院医歯薬学総合研究科などの研究で明らかになった。
メトホルミンで治療した患者はがんになりにくい
メトホルミンは、2型糖尿病患者に世界で最も多く処方されている治療薬だ。これまでに、メトホルミンで長期間治療した患者は、それ以外の薬剤で治療した患者に比べ、がんの罹患率と死亡率が低いことが分かっている。
研究グループは、がん細胞を移植したマウスにメトホルミンを投与する実験を行い、がんが小さくなることを確認した。
メトホルミンを投与したマウスのがんの塊に浸潤したCD8T細胞を解析したところ、その数の増加と機能の回復が著しいことが明らかになった。
一方、がん細胞を攻撃する「T細胞」や「CD8T細胞」を除去したマウスではがんは縮小しなかった。
がん患者の血液中には、がん細胞を攻撃するCD8T細胞があるにもかかわらず、がんは縮小しない。原因は、がんの塊に浸潤したCD8T細胞が疲弊し、がん細胞を殺傷する能力が失われ、免疫作用を調整するサイトカインを産生する力が失われ、増殖できなくなるからだ。
メトホルミンを投与すると、CD8T細胞は回復し、細胞死を起こさなくなった。その結果、腫瘍局所にCD8T細胞が長くとどまるようになり、がんを攻撃する機能が回復することが明らかになった。
メトホルミンは長い歴史があり安全性と効果が確認されている
「ビグアナイド系薬剤」は、欧州のマメ科植物であるガレガソウから抽出された「グアニジン」に血糖降下作用があることが分かり、1950年代に開発された。
「フェンホルミン」には「乳酸アシドーシス」という副作用があることが分かり使用が中止されたが、「メトホルミン」については、英国の大規模臨床研究「UKPDS」で安全性と効果が確認され、現在も幅広く治療に使われており、欧米では2型糖尿病の第1選択薬になっている。
メトホルミンは一般的な免疫治療薬や抗がん剤などに比べ安価なのもメリットとなる。「メトホルミンの作用を従来のがん治療法と組み合わせると、治療効果のさらなる改善につながる」と、研究者は述べている。
研究は、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科免疫学分野の鵜殿平一郎教授と榮川伸吾助教、西田充香子氏らの研究グループによるもので、「米科学アカデミー紀要」電子版に1月26日付けで発表された。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科免疫学分野
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「がん」に関するニュース
- 2023年08月07日
- 【がん予防の経済効果】 がんのリスク要因を減らして1兆円超の経済的負担を軽減 生活スタイルや環境の改善が重要
- 2023年07月31日
- どんな女性が乳がん検診を受けていないかを調査 がん検診の受診率を高めるために何が必要?
- 2023年07月10日
- 活発に体を動かしている高齢者は生活の質が高い 運動・身体活動は老化を遅らせる最適な方法
- 2023年07月05日
-
行政事業レビュー「がん診療連携拠点病院機能強化事業等」
「がんの死亡率減少」と「仕事と治療の両立」が議論の焦点に - 2023年06月26日
- 「高齢社会白書」2023年版を発表 高齢者の社会参加が健康や生きがいを生み出す 各地の取組みも紹介 内閣府
- 2023年06月19日
- 肺がんを検診で早期発見・治療すると生存率と医療費が改善 京都市が市民を対象に調査 肺がんは早期発見がカギ
- 2023年06月12日
- 【子宮頸がん】日本はHPVワクチン接種と検診の実施率が低い 子宮頸がんの罹患率と死亡率がともに増加
- 2023年05月19日
- 令和4年度「東京都がん予防・検診等実態調査」 受診者増加のための取組み率は健康保険組合で85%に上昇
- 2023年05月08日
-
「誰一人取り残さない」第4期がん対策推進基本計画が閣議決定
がん検診受診率目標60%、デジタル化の推進 - 2023年04月04日
- 乳がん検診の「マンモグラフィ」は効果がある 革新的なマンモグラフィ検査も開発 女性の負担を軽減