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胃がん検診に内視鏡をはじめて推奨 50歳以上は2~3年に1度の受診を
2015年04月30日

国立がん研究センターは、「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」2014年度版を公表した。
市区町村が実施する胃がん検診に、はじめて「内視鏡検査」を推奨した。がんのリスクが高まる50歳以上を対象とし、受ける間隔は2~3年でもよいとしている。
市区町村が実施する胃がん検診に、はじめて「内視鏡検査」を推奨した。がんのリスクが高まる50歳以上を対象とし、受ける間隔は2~3年でもよいとしている。
内視鏡検査により死亡率が低下
「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」は、国立がん研究センターの斎藤博・検診研究部長を主任研究者とする研究班が国内外の最新の研究報告をもとにまとめたもの。
前回の2005年度版では、バリウムを飲む「X線検査」のみが推奨され、「胃内視鏡検査」については、「死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分」として、公共的な予防対策として行う「対策型検診」では推奨せず、人間ドックなどで行う「任意型検診」では「個人の判断で検診受診するための情報提供を行うべき」とされていた。
今回の改訂では、「胃内視鏡検査」はX線検査と並んで推奨グレードBに位置付けられ、「死亡率減少効果を示す相応な証拠があることから、対策型検診および任意型検診における胃がん検診として胃内視鏡検査を推奨する」とされた。
改訂の背景として、2013年以降に報告された研究で内視鏡検査の有利性が確かめられたことを挙げている。新潟県と鳥取県で行われた研究では、3年以内の内視鏡検診により30%、韓国からの報告では57%、それぞれ死亡率が下がり、胃X線検診より効果が大きいことが分かった。今回の改訂では「内視鏡検査は2~3年に1度受けることが望ましい」としている。
自治体が死亡率を減少できる検診方法を選択
なお、内視鏡検査の不利益については、偽陽性、過剰診断の他、前処置の咽頭麻酔によるショックや穿孔・出血などの偶発症があることや、がんを早期発見し治療することが受診者にとっての不利益になる「過剰診断」などを挙げている。
現在の市区町村の胃がん検診は、厚労省の指針に基づいて、40歳以上の住民を対象にX線検査を年1回実施している。独自に内視鏡検査を導入している自治体もある。
同センターでは、胃内視鏡検査が胃がん検診に推奨されることは、受診者にとっては胃がん検診の選択肢が増えることとなり「検診受診率の向上が期待できる」、また、「自治体や個人が胃がん検診の目的である死亡率減少を達成できる検診方法を正しく選択することができるようになる」としている。
一方、胃粘膜の萎縮を調べるペプシノゲン検査と、胃がんの原因となりうるピロリ菌の感染検査という2つの血液検査は、効果がまだ明確になっていないとして推奨しなかった。
「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」2014年度版における胃がん検診の推奨例
(1)胃X線検査
利益(死亡率減少効果)を示す相応な証拠があります。不利益については偽陽性、過剰診断、放射線被ばくの可能性があります。両者を勘案して対策型検診・任意型検診としての実施を勧めます。検診対象は50 歳以上が望ましく、不利益について適切な説明を行うべきです。 (2)胃内視鏡検査
利益(死亡率減少効果)を示す相応な証拠があります。不利益については偽陽性、過剰診断、前処置の咽頭麻酔によるショックや穿孔・出血などの偶発症の可能性があります。両者を勘案して対策型検診・任意型検診としての実施を勧めます。検診対象は50歳以上が望ましく、検診間隔は2~3年とすることが可能です。ただし、重篤な偶発症に迅速かつ適切に対応できる体制が整備できないうちは実施すべきではありません。さらに、精度管理体制の整備と共に、不利益について適切な説明を行うべきです。 (3)その他の方法
ペプシノゲン法、ヘリコバクター・ピロリ抗体、これらの併用法は利益(死亡率減少効果)が不明なことから、対策型検診としての実施は推奨しません。任意型検診として実施する場合には、死亡率減少効果が不明であることと不利益について適切な説明を行うべきです。 (出典「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」2014年版)
「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」2014年度版発行(国立がん研究センター 2015年4月20日)
利益(死亡率減少効果)を示す相応な証拠があります。不利益については偽陽性、過剰診断、放射線被ばくの可能性があります。両者を勘案して対策型検診・任意型検診としての実施を勧めます。検診対象は50 歳以上が望ましく、不利益について適切な説明を行うべきです。 (2)胃内視鏡検査
利益(死亡率減少効果)を示す相応な証拠があります。不利益については偽陽性、過剰診断、前処置の咽頭麻酔によるショックや穿孔・出血などの偶発症の可能性があります。両者を勘案して対策型検診・任意型検診としての実施を勧めます。検診対象は50歳以上が望ましく、検診間隔は2~3年とすることが可能です。ただし、重篤な偶発症に迅速かつ適切に対応できる体制が整備できないうちは実施すべきではありません。さらに、精度管理体制の整備と共に、不利益について適切な説明を行うべきです。 (3)その他の方法
ペプシノゲン法、ヘリコバクター・ピロリ抗体、これらの併用法は利益(死亡率減少効果)が不明なことから、対策型検診としての実施は推奨しません。任意型検診として実施する場合には、死亡率減少効果が不明であることと不利益について適切な説明を行うべきです。 (出典「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」2014年版)
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