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孤独な高齢者の医療費は上昇 高齢者の孤立を防ぐ効果的な介入が必要
2015年04月30日

社会的に孤立しており孤独を感じている高齢者は、社会とのつながりをもつ人に比べ、通院し治療を受ける頻度が高いことが、米ジョージア大学の研究グループの調査で明らかなった。「高齢者に対するメンタルケアを効果的に行うことで、医療費を削減できる可能性がある」と研究者は述べている。
孤独な高齢者は受療や入院の頻度が高い
米国のジョージア大学公衆衛生学部の研究グループは、60歳以上の退職して独居を続けている米国人3,530人を対象に、ミシガン大学医学部が2008年と2012年に全国調査した研究のデータを解析した。
研究グループは参加者にアンケート調査を行い、「社会的な交流が乏しい」「置き去りにされていると感じる」「他者から孤立している」と回答し、孤独を示すスコアが高い高齢者を特定した。
さらに、2回の調査で「慢性的に孤独である」と判定された高齢者を対象に、どれだけ医療サービスを利用し、受療や入院の頻度にどれだけ影響するかを調査した。
その結果、孤独を感じている医療者は、医療機関を訪問する頻度が目立って高いことが判明した。孤独な高齢者の割合は、初回調査の53%から2回目の調査では57%に増加していた。
また、孤独を感じている高齢者は、抑うつ症状や、日常の作業の困難がみられることが多く、自分の健康状態を「良い」と評価する確率が低いことも判明した。
「孤立した高齢者は孤独を感じるようになり、体の不調が増える傾向があります。その結果、医療機関を受診したり入院する頻度が高くなり、医療費の上昇につながっています」と、ジョージア大学公衆衛生学部のジャイアニ ジャイウォルハナ助教授は言う。
「顔なじみの医師を訪問するのとは異なり、入院治療はどんな医療従事者に顔を合わすのか分かりません。このことは、多くの高齢者に負担感を与えることが分かりました」と、ジャイウォルハナ氏は説明する。
隠された「孤独」の医療コスト 効果的な介入が必要
高齢者の多くは、かかりつけ医と長期にわたる関係を築いている。そうした高齢者が慢性的な孤独感をいやすために、医師を訪問するためにアポイントメントを増やしている可能性があるという。
「友人や親類に囲まれて満足度の高い生活をおくる高齢者は多いことが分かりました。しかし、"孤独"は主観的な問題であり、多くの社会的な交流を保ちながら"孤独"を感じている高齢者も少なくないことに注意する必要があります」と、ジョージア大学老年学研究所のシャスティン ゲルスト エマーソン氏は言う。
孤立した高齢者に対し、目標を設定し介入することで、受療頻度を下げ、医療費を飛躍的に減少できる可能性がある。
「孤独な高齢者は今後ますます増え、医療も増加していきますが、現状では公衆衛生に携わる保健師や医療従事者の多くは、高齢者の孤独について注意をほとんど注意を払っていません」と、エマーソン氏は注意を促している。
慢性的な孤独を感じている高齢者と、電話やインターネットで連絡をとり、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の予防や自己管理について情報提供することは、高齢者の孤立を防ぐ手段となる可能性があるという。
「孤独は生活習慣病と異なり、容易に予防することができ、医療コストもほとんどかかりません。地域で高齢者への連絡を継続して行い、孤立化を防ぐことが、結果として医療費の削減につながる可能性があります」と、指摘している。
The hidden costs of loneliness(ジョージア大学 2015年3月31日)
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