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心臓マッサージによる救命処置 心停止後の社会復帰が大きく増加
2015年06月16日
人工呼吸をせず、心臓マッサージだけを行う救命処置の普及が、心停止となった人の生存率の上昇に大きく貢献するという調査結果が発表された。
心臓マッサージによる救急蘇生が救命率を向上させる
日本の心臓突然死の数は年間7万人に上り、急性心筋梗塞の半数以上が医療機関の外で起きているという。「心臓マッサージ」(胸骨圧迫)による心肺蘇生の普及は、「AED」(自動体外式除細動器)の普及と合わせ、院外心停止例の救命率向上のカギを握っている。
日本救急医療財団と日本蘇生協議会(JRC)が2010年に策定した「救急蘇生のためのガイドライン」では、「突然倒れた人や、反応のない人をみて、心停止の可能性があると分かったら、大声で叫んで応援を呼び、救急通報(119番通報)を行って、一次救命処置を行い、救急隊が少しでも早く到着するように努める」と示している。
心肺蘇生の在り方をめぐっては、人工呼吸と心臓マッサージを併用した方法が長年標準とされてきたが、心臓マッサージだけでも効果があり、誰でもすぐに行える処置なので救命率の向上がはかれるという研究報告が発表された。
人工呼吸を正確に行うためには訓練が必要で、口と口とを接触させることに抵抗感をもつ人も少なくない。人工呼吸を省く方法であれば、市民による心肺蘇生の実施率の向上が期待できるという。上記のガイドラインでも、一般の発見者が一次救命処置を行う場合、心臓マッサージのみを行った方が良いとしている。
救急隊が到着してAEDを実施するまでの間に、心臓マッサージで心筋への血流を保つことで、心室細動の状態を維持でき、AEDによる救命のチャンスを残すことができる。訓練を受けていない人が人工呼吸を行うとすると、呼吸に力が入ってマッサージの回数が減るおそれもあるという。
心臓マッサージは誰もがすぐに行える処置
「心臓マッサージとAEDによる心肺蘇生は、誰もがすぐに行える処置で、心停止患者の社会復帰に大きな役割を果たしている」と研究者は指摘している。この調査は、石見拓・京都大学環境安全保健機構教授と川村孝教授らの研究グループによるもの。
研究グループは、2005~2012年に国内で心停止によって救急搬送された患者約81万6,385人について、市民による蘇生の有無や種別、社会復帰の状況などを調べた。患者の30.6%が心臓マッサージのみの心肺蘇生を受け、12.3%が人工呼吸つきの心肺蘇生を受け、57.1%は心肺蘇生を受けていなかった。
心臓マッサージだけの蘇生を受けた人の割合は2005年の17.4%から2012年には39.3%に増加。心臓マッサージだけで社会復帰できた人も、人口1000万人当たりの換算で2005年の0.6人から28.3人に増えていた。社会復帰数については、心臓マッサージのみの心肺蘇生の方が、人工呼吸を含む心肺蘇生の実施率を大きく上回ったことが判明した。
心肺蘇生種別の人口1000万人当たりの社会復帰数の経年変化
「日本は胸骨圧迫のみの心肺蘇生を活用した心肺蘇生普及の先進国。今胸骨圧迫のみの心肺蘇生は、簡単で教育、普及、実践が容易であるため、心肺蘇生の普及という観点から大きな期待が寄せられている」と、研究者は述べている。
米国心臓学会(AHA)も、院外で心停止を起こした患者には、救急隊が到着するまでに、胸骨圧迫のみの「両手で行う(ハンズ・オンリー)」の心肺蘇生(CPR)を行うよう推奨している。
Ken Jeong AHA Hands-Only CPR video(米国心臓学会)
Official 2012 Hands-Only CPR Instructional Video(米国心臓学会)
京都大学環境安全保健機構Official 2012 Hands-Only CPR Instructional Video(米国心臓学会)
胸骨圧迫のみの心肺蘇生の普及が日本の院外心停止後生存者数増加に寄与
Dissemination of Chest Compression-Only Cardiopulmonary Resuscitation and Survival After Out-of-Hospital Cardiac Arrest(Circulation 2015年6月5日)
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