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認知症の社会的負担は年間14.5兆円 介護の家族負担は6兆円超
2015年06月16日

認知症患者の医療や介護の費用に労働生産性の損失などの社会的な負担を加えた「社会的費用」は、2014年に14.5兆円に上ることが29日、慶応大学医学部と厚生労働省研究班の推計で分かった。
認知症の社会的費用 認知症のため最適な解決の手がかりに
慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の佐渡充洋助教らは、医療機関を受診したり、介護サービスを利用したりする全国の認知症の人を対象に、2014年時点の1年間の負担額を計算した。
「社会的費用」とは、認知症の医療費や介護費などの直接費用に加えて、患者や家族の労働生産性損失など目に見えにくい費用までを含んだ社会全体の費用を意味する。
認知症の社会的費用の内訳は――(1)医療費 1.9兆円、(2)介護費 6.4兆円、(3)家族などが無償で行う介護を金額に換算した「インフォーマルケアコスト」 6.1兆円となった。
全世界の認知症の患者数は、2030年に7,600万人、2050年には1億3,500万人になると推計されている。認知症の社会的費用も増大しており、英国では3兆9,093億円、米国では17兆5,264億~24兆12億円に上る。
厚労省によると、日本の認知症の高齢者は2012年に462万人、25年には675万~730万人に増えると推計されている。
日本を含む多くの先進国で認知症を国家的に取り組むべき課題と位置付けられているが、日本で認知症の社会的費用の推計が行われたのは今回の研究がはじめてだ。
2060年の認知症の社会的費用は24兆円超に拡大
研究グループは、全国の医療保険のレセプトデータで構築されるデータベースをもとに、認知症に関する医療費は、入院医療で約9,703億円、外来医療で約9,412億円、合計で約1兆9,114億円という推計を弾き出した。
さらに、介護給付費実態調査をもとに、要介護度ごとに認知症のサービス受給者数と平均利用額を掛け合わせ、それを積みあげることで介護費を推計した。
日本における認知症に関連する介護費は約6兆4,441億円に上ることが分かった。内訳は、在宅介護費が約3兆5,281億円、施設介護費が約2兆9,160億円に上る。
さらに、家族が行う介護などの「インフォーマルケアコスト」については、全国の医療機関や支援組織を通じ1482人を調査した。1週間の介護時間や内容を尋ね、介護サービスの単価を基に費用を算出。さらに介護のために働けない経済的損失を、性別、年代別の平均賃金を参考に足し上げた。
その結果、要介護者1人あたりのインフォーマルケア時間は24.97時間/週で、インフォーマルケアコストは総計で約6兆1,584億円と推計された。
発病率、医療の受療率、介護サービスの利用率などが現在と同じであると仮定して、将来推計人口の変化に応じた社会的費用の将来推計も計算した。その結果、団塊ジュニア世代が85歳以上になる2060年の認知症の社会的費用は24兆2,630億円に達することが分かった。
「患者や家族の生活の質を向上させるために、限られた財源をどう活用すれば良いか、検討を重ねる必要がある。費用対効果の研究が必要だ」と、主任研究者の佐渡氏は話している。
認知症の社会的費用を推計―認知症患者や家族の生活の質の向上のため最適な解決の手がかりに―(慶應義塾大学 2015年5月29日)
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