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高血圧は脳卒中や心筋梗塞以外の疾患に影響 治療して健康寿命を延伸
2015年07月15日

国立循環器病研究センターは、高血圧がおよぼす疾患リスクについての疫学的総説を発表した。高血圧は、虚血性心疾患や脳卒中などの循環器病に加えて、心房細動、腎機能低下、慢性腎臓病、認知症、がんなど、さまざまな疾患の発症に関連している。
高血圧が心房細動や腎臓病の発症リスクを高める
高血圧が、脳卒中や、心筋梗塞などの虚血性心疾患において重要な危険因子となることは、これまでさまざまな疫学・臨床研究でも示されてきていた。さらに、高血圧には循環器病以外の疾患のリスクとなることも分かってきた。
そこで研究グループは、国立循環器病研究センターなどが大阪府吹田市で実施しているコホート研究である「吹田研究」で得られた成果をまとめた。
1989年に開始した吹田研究では、都市部の住民を対象に心筋梗塞などの冠動脈疾患の危険度などを調査している。2014年には、10年間の冠動脈疾患を発症する確率を予測する「吹田スコア」を開発した。
吹田研究で判明した高血圧が関連し発症リスクが上昇する疾患としては、心房細動、腎機能の低下などがある。腎機能低下の促進は、脳卒中、心臓病それぞれのリスクを高めることも分かった。さらに慢性腎臓病で、かつ高血圧である場合、循環器疾患に対するリスクが相乗的に高くなるという。
高血圧がんや血管性認知症のリスクに
中年期の高血圧が、高齢になった際の認知症リスクとなることは、多くの疫学追跡研究から示されている。しかし、高齢者に見られる高血圧は、中年期の高血圧と異なり、認知症リスクとの関連性は詳しく分かっていない。高血圧は認知症、特に血管性認知症のリスクとなるが、アルツハイマー病との関連性はみられないという。
欧米の大規模コホート研究では、高血圧がん発症および死亡リスクとなることが示されている。特に、高血圧が、腎がん、食道がん、膵がんなどの危険因子であることが認められている。
さらに、口腔衛生状態の問題を示す4項目(歯周病、不正咬合、歯牙喪失、歯肉出血)のうち3項目以上該当する人は、高血圧になりやすいという傾向が認められている。
これらの報告により、高血圧には循環器病以外にも、さまざまな疾患と関連していることが示唆された。高血圧の予防や治療を行うことは、循環器病の予防・治療のみならず、多岐に渡る疾患の予防にも関与するので、健康寿命の延伸において重要だ。
今回の研究は、国立循環器病研究センター予防健診部の小久保喜弘医長と、高血圧・腎臓科の岩嶋義雄医長らによるもの。米国心臓学会の高血圧専門誌「Hypertension」の8月号に発表された。
国立循環器病研究センターHigher Blood Pressure as a Risk Factor for Diseases Other Than Stroke and Ischemic Heart Disease(Hypertension 2015年6月15日)
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