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働く母親たちの母乳育児を守る取り組みが必要 世界母乳育児週間

 8月1日~7日は「世界母乳育児週間」だった。ユニセフ(国連児童基金)は、「もっとも弱い立場にある子供たちの成長を促し、母乳育児への関心を高めることが、強い社会を築いていくために重要」として声明を発表した。
生後半年までの完全母乳率は世界全体で38%
 今年の「世界母乳育児週間」のテーマは、「母乳育児と仕事―多くの働く母親と幼児がよりよい人生のスタートを切るために」。母乳育児の推進のために、職場の方針強化に向けた支援の必要性が訴えられた。

 声明では「母乳育児は、乳幼児期の知能と身体の発達に必要な栄養を与え、母子の愛着を強め、子供たちの命と健やかな成長を支える。母乳育児により、幼児の感染症に対する抵抗力も高まる」と指摘している。

 さらに、母乳育児の恩恵は生涯にわたって続くという。医学誌「ランセット」に発表された最近の研究では、1年以上母乳で育てられた子供は、1ヵ月間のみ母乳育児で育てられた子供に比べ、その後の就学年数はより長く、学力テストの点数がより高く、成人してからより多くの収入を得られるということが明らかになった。

 こうした報告があるにもかかわらず、推奨されている生後6ヵ月間を母乳のみで育てられている幼児は世界で38%に留まり、母乳育児率の伸び率は低迷している。

 世界保健総会では、6ヵ月未満の乳児への完全母乳育児率を、2025年までに50%以上にするという目標を定めた。この目標を達成するためには、母乳育児を阻む障壁を乗り越えなければならない。

 「母乳育児を国の開発計画の優先政策と位置付け、母乳育児を支えるプログラムを実施するための資金や人材を増強し、母乳育児がもたらす利益を広く伝えるためにコミュニティや家庭に働きかけるなど、政府がその取り組みを主導していくべきだ」と強調している。
母乳育児を続けやすい職場環境を整備する必要がある
 働く母親たちが母乳育児をする権利を守ろうとしない職場の在り方が、多くの母親たちを母乳育児から潜在的に遠ざけている原因になっているという。

 世界の8億3,000万人の働く母親たちの大多数は、乳児育児を行う上で職場からのサポートを得られていない。また、この数値には、パートタイムや季節労働など非正規雇用で働く女性は含まれていない。貧しい国々で暮らす貧困層の母親たちこそ、母乳育児を続けるにあたり、大きな壁に直面しているといえる。

 これは、働く母親とその幼児だけが被る損失ではなく、雇用者にとっても損失となる。母乳育児を続けやすい職場環境など、適切な支援を受けられる環境で働く母親は仕事への満足度が高く、雇用主への忠誠心が強いと報告されている。

 さらに、母乳で育てられた子供は病気になりにくく、母親も仕事を休む回数が減る。こうした効果は、仕事の生産性を高めることに貢献し、最終的には仕事やより広範囲の経済活動に利益を与えられる。

 ILO(国際労働機関)は、母乳育児を続ける権利を含め、妊娠中の女性や乳児を育てる母親たちを守り、非正規の労働環境にある女性のために実現可能な選択肢を提供するための3つの条約を採択した。

 その条約とは、「育児休暇をとっている母親と幼児が、一定以上の生活水準を維持できるように、母親の就業時の3分の2以上の収入を保障する」「妊娠・育児をしている女性が、健康を害する可能性のある仕事に従事しないように保護し、妊娠・出産による不当な差別を受けないようにする」「雇用者は、育児休暇をとった母親が復業したときに、休暇をとる前と同じポジションを確保できるよう努める」というものだ。

 67ヵ国がこのうち1つ以上を批准している。「より多くの政府がこの流れに加わり、妊産婦の保護を実現するために行動する必要があります」と、声明では指摘している。

 「母乳育児は、何百万もの子供たちの人生を向上させるだけでなく、家族やコミュニティ、社会にまで寄与します。私たちはいま、職場でも母乳育児ができるよう、挑戦を続けています。力を合わせれば、働く女性が母乳育児を続け、母親たち自身、子供たち、そしてその先の世代の健康な生活に貢献できるよう、支えることができるはずです」と、ユニセフ(国連児童基金)のアンソニー・レーク事務局長とWHO(世界保健機関)のマーガレット・チャン事務局長は述べている。

World Breastfeeding Week(世界保健機関 2015年8月1日)
[Terahata]
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