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肥満になると中性脂肪が上がるメカニズムを解明 東北大
2015年08月27日
太っていくにつれて中性脂肪が高くなるメカニズムを、東北大学の研究グループが解明した。肝臓がセンサーとして働き、脳を含めた全身の脂肪代謝のダイナミックな調節に関わっているという。
肝臓から脳に信号が伝わり中性脂肪を調整
過食などの生活習慣が原因で起こる肥満は、2型糖尿病・高中性脂肪・高血圧といった三大病態を引き起こし、メタボリックシンドロームにつながりやすい。メタボリックシンドロームは、動脈硬化の発症の原因になり、医学的にも社会的にも大きな問題となっている。
東北大学の研究グループは、肝臓でのアミノ酸増加に応じて発せられる神経シグナルが、肥満の際の中性脂肪上昇に関わることを発見した。メタボリックシンドロームの主病態のメカニズムを解明する成果だ。
肥満の状況にあると、血中の中性脂肪が高値になり、肝臓でのアミノ酸量が増えることが知られている。研究グループはこのアミノ酸量の増加に着目し、肥満させずに肝臓へのアミノ酸流入だけを増加させたマウスを用い、全身の代謝にどのような変化が起こるかを検討した。
実験マウスは、肥満の時のように血中の中性脂肪が高値となった。詳しく調べたところ、そのメカニズムとして、肝臓でのアミノ酸が増加した情報が、自律神経を通じて脳に伝わり、脳から神経を通じて血中の中性脂肪の分解を抑える指令が発せられるというシステムがあることが判明した。このシステムを遮断すると、肥満になっても中性脂肪の上昇が抑えられた。
肝臓でのアミノ酸増加に応じた栄養過多の情報が、自律神経により脳に伝えられ、それを受け取った脳が、血中の中性脂肪を分解する酵素を減らすよう神経を使って指令を出し、その結果血中で中性脂肪が分解できず、高中性脂肪血症となるという。
肝臓がセンサーとして脂肪代謝に関わっている
研究グループは、全身の糖代謝やエネルギー代謝の調節に、脳が制御する自律神経系のメカニズムが重要であることを世界に先駆けて発見し、糖尿病や肥満の発症機序の解明を進めてきた。今回の研究もこの独自の発見を発展させたものだ。
今回の発見は、肝臓が栄養センサーとして働き、脳を含めた神経系が、全身における脂肪代謝のダイナミックな調節を行っていることを明らかとしたもので、さらには、このメカニズムがメタボリックシンドロームの兆候である高中性脂肪血症の発症機序に関わるということを解明したものだ。
動脈硬化の発症と深く関連するメタボリックシンドロームの主病態のひとつである血中の中性脂肪値の上昇をもたらす仕組みを明らかにすることが、新たな治療法の開発や動脈硬化の予防法の開発につながる可能性がある。
研究は、東北大学大学院医学系研究科糖尿病代謝内科学分野・東北大学病院糖尿病代謝科の片桐秀樹教授、宇野健司助教らのグループによるもので、科学誌「Nature Communications」に発表された。
東北大学大学院医学系研究科糖尿病代謝内科学分野
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