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夜のコーヒーが概日リズムに影響 カフェインが体内時計を遅らせる
2015年09月30日

夜にコーヒーを飲むと、予定していた就寝時間に眠りにつくのが難しくなり、朝起きるのもつらくなるのは、カフェインによって体内時計が乱されるからだ。カフェインの摂取が概日リズムに影響することが、米コロラド大学の研究で解明された。
カフェインが概日リズムに影響を与える
「カフェインは向精神作用のある成分として世界中で利用されています。今回の研究は、カフェインが概日リズム(サーカディアンリズム)に影響を与えることを示したはじめての研究です」と、コロラド大学ボルダー校のケネス ライト教授(統合生理学)は言う。
夜にカフェインが入ったコーヒーなどの飲料を飲むと睡眠のリズムが乱れるのは、睡眠と覚醒をコントロールしている概日リズムに遅れが出るためだという。
「就寝の3時間前にエスプレッソをダブルで飲むと、およそ24時間の周期で働いている体内時計に40分の"位相後退"(遅い時間へのずれ)が起こる可能性があります」と、ライト教授は言う。
研究チームは、被験者5人(男性2人、女性3人)を対象に、49日間の実験をおこなった。被験者の唾液を定期的に検査し、睡眠と覚醒の周期を調節する「メラトニン」の濃度を調べた。
メラトニンは、松果体から分泌されるホルモンで、概日リズムを調節する作用をもつ。メラトニンは睡眠を促進する作用をもち、明るい光の下では分泌が減少する。ベッドに横たわって体の熱放散を促し、部屋を暗くして休むと、睡眠を促す生理機能を引き出すために効果的なのは、メラトニンの働きによるものだ。
研究チームは被験者を無作為に、▽低照度の光を浴び、プラセボ(偽薬)を服用する、▽低照度の光を浴び、200mgのカフェインを服用する、▽高照度の光を浴び、プラセボ(偽薬)を服用する、▽高照度の光を浴び、200mgのカフェインを服用する――という条件におき、睡眠の状況を調べた。
その結果、就寝3時間前に低照度の光を浴びカフェインを摂取した被験者では、約40分間の概日リズムの位相後退が起こることが判明した。
一方で、高照度の光を浴びた被験者では、概日リズムに85分間の遅れが起こり、高照度の光とカフェイン摂取の両方の条件下に置かれた被験者では、体内時計に105分間の遅れが生じた。
カフェインを摂取しないことが良好な睡眠の秘訣
研究では、決まった時間に眠りたいのであれば、3時間前までのカフェインの摂取を控え、明るい光を浴びないようした方が良いというアドバイスが正しいことが裏付けられた。
カフェインのもつ覚醒作用は、「アデノシン拮抗作用」によると考えられている。アデノシンは神経を鎮静させる作用をもつ物質で、アデノシンが受容体と呼ばれるタンパク質に結合することで作用するが、カフェインはアデノシンのかわりに受容体にとりつき、これをブロックする。つまりカフェインは、アデノシンの鎮静作用を妨げることで、神経を興奮させる。
カフェインを適切に使用すれば、時差ぼけを回避したり、朝の目覚めをすっきりさせるのに役立つ。カフェインがメラトニンやアデノシンに作用するメカニズムが解明されれば、体内時計をリセットする助けになる可能性がある。
「カフェインの効果的な利用方法を知るために、さらなる研究を重ねる必要がありますが、睡眠障害の悩みをもっている人は、夕方以降にカフェインの摂取を控えた方が良いことが、生理学的に解明されました」と、ライト教授は述べている。
この研究は医学誌「Science Translational Medicine」に発表された。
Caffeine at night delays human circadian clock(コロラド大学ボルダー校 2015年9月16日)Effects of caffeine on the human circadian clock in vivo and in vitro(Science Translational Medicine 2015年9月16日)
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