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食べる力を回復 摂食嚥下の在宅リハビリ対応の医療機関マップを公開
2015年10月27日
「摂食・嚥下リハビリ」に関する地域包括的ケアを研究している厚生労働省の研究班が、リハビリを受けられる全国の病院や歯科医院などを検索できる「摂食嚥下関連医療資源マップ」の公開を開始した。
摂食・嚥下障害は大きな問題になりつつある
摂食・嚥下障害は、高齢社会の到来とともに大きな問題になりつつある。原因としては、脳卒中、認知症やパーキンソン病などの神経や筋肉の病気、あるいは舌・咽頭・喉頭がんなどがある。
「食べる」という行為は、栄養を取り入れる、味を楽しむ、食事の場面を通じてコミュニケーションを楽しむなど、生活においてとても大きな意味をもつ。
摂食・嚥下リハビリは、栄養摂取の方法を確立することを目指し、食事や栄養摂取のスタイルを確立することが目標となる。
食品を飲み込む時は、気道の入り口である喉頭蓋などが閉じて、飲食物は食道へ送られる。しかし、この動きがうまくいかないと、飲食物が誤って気道に入る「誤嚥」が起こりやすい。
嚥下障害があると、食品や飲料などをうまく飲み込めなくなるだけではなく、誤嚥による肺炎(誤嚥性肺炎)や窒息などの問題が起こる。誤嚥を防ぐためには、食事の工夫以外にも、食べるときのケアや口腔ケアが重要だ。そこで「摂食・嚥下リハビリ」が必要となる。
摂食嚥下の在宅リハビリは、まだ広く普及していない。専門職が歯科医、耳鼻科医、看護師、言語聴覚士、歯科衛生士などさまざまな分野にまたがっているのも普及を妨げる理由のひとつだ。
例えば脳卒中などで入院した患者が、入院中は摂食嚥下のリハビリを受けられても、退院時に家の近くでリハビリを受けられる医療機関が見つからず、訓練が途切れてしまうことも珍しくない。
摂食嚥下の在宅リハビリを受けられる全国の医療機関などを公開
そのため東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の戸原玄准教授らの研究班は、厚生労働省の研究費を受け、摂食嚥下に携わる医療機関や介護事業所などを示すマップ作りに着手。専門の検査やリハビリを受けられる全国の医療機関などの情報を『摂食嚥下関連医療資源マップ』として公開した。
掲載されているのは、全国のおよそ840ヵ所の病院、歯科診療所、医科診療所、訪問看護ステーション、介護保険施設など。患者の住所を入力すると、近隣で摂食嚥下のリハビリを行う医療機関などを検索できる。嚥下訓練や嚥下内視鏡検査(VE)、嚥下造影検査(VF)などの条件で検索することも可能だ。
同サイトでは現在も医療機関の追加登録を受付け中で、多職種連携事例の紹介、連携を進めるための要点をまとめたガイドブックの作成も進めているという。
嚥下機能検査を急性期病院に入院している患者に実施すると良い結果にならないが、訪問診療を行ったときに入院時より改善しているケースが多いことを戸原准教授が訪問医療で実感したことが、マップ作りのきっかけになっている。
胃ろうのメリットとして、歩行訓練や食べる訓練などのリハビリテーションを行いやすいことが挙げられるが、戸原准教授によると、嚥下障害で胃ろうをつくった場合でも、適切なリハビリを行うと、口から食べられるようになることが多いという。
そのため胃ろうをつくったら、口から食べられるようになることを目標に、できる限りリハビリを行うのが基本となる。とくに脳卒中や軽度の認知症の場合は嚥下機能が回復する可能性が高く、リハビリを行うのに適しているという。
病院のソーシャルワーカーや介護施設で『摂食嚥下関連医療資源マップ』を活用することで、地域における高齢者の継続支援につながると期待されている。
摂食嚥下関連医療資源マップ東京医科歯科大学高齢者歯科学分野
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