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「マタハラ」を派遣社員の半数、正社員も2割が経験 「迷惑」「辞めたら」

 妊娠や出産を理由にした職場での嫌がらせ「マタニティーハラスメント」(マタハラ)について、厚生労働省が行った初めての実態調査の結果、派遣社員では半数近く、正社員でも2割以上が被害に遭っていたことが分かった。
不安定な働き方をする女性がより深刻な被害を受けている
 厚生労働省は、妊娠や出産をめぐって不利益な扱いや嫌がらせを受ける「マタニティーハラスメント」(マタハラ)に関する初の調査結果を発表した。

 調査は今年の9~10月に、産業や規模別に選んだ6,500社で働く25~44歳の女性などを対象に労働政策研究・研修機構を通じて行われたもので、約3,500人から回答があった。

 職場で妊娠や出産を経験する中でマタハラを受けた女性の割合は、派遣社員がもっとも高く48.7%と半数近くに上ったほか、正社員は21.8%、契約社員は13.3%、パートは5.8%だった。不安定な働き方をする女性がより深刻な被害を受けている実態が明らかになった。

 マタハラの具体的な内容は、「"迷惑""辞めたら?"など、権利を主張しづらくする発言」(47.3%)、「雇い止め」(21.3%)、「解雇」(20.5%)、「賞与の不利益算定」(17.1%)、「退職の強要や非正社員への転換を強要」(15.9%)など。

 マタハラを行ったのは、「直接の上司(男性)」が19.1%でもっとも多く、次いで「役員など(男性)」(15.2%)、「直接の上司(女性)」(11.1%)、「同僚や部下(女性)」(9.5%)と続く。
マタハラ防止策に取り組む事業所では被害は減少
 また、育児休業制度の規定が、就業規則などに明文化された事業所の方が、マタハラの経験率が低いことが明らかになった。

 マタハラの経験率は、育休規定が明文化されていない事業所では25.0%だったのに対し、有期労働者の育休などについて明文化された事業者では17.6%にとどまった。

 また、マタハラ防止策に取り組んでいる事業所の方が、取り組んでいない事業所に比べ、マタハラの経験率が低かった。

 マタハラの経験率は防止策に取り組んでいない事業所で20.5%だったのに対し、取り組んでいる事業所では17.5%だった。

 防止策は具体的に「管理職に対する研修や周知」「職場全体に対する研修や周知」「つわりなどにより不就労が生じた妊婦がいる職場に対する業務上の応援」「相談・苦情対応窓口担当者への研修」「実態調査のためのアンケートや調査」など。

 マタハラ防止策に取り組んでいる事業所では、出産後も働き続ける女性の割合が高く、取り組んでいない事業所で54.5%だったのに対し、取り組んでいる事業所では65.2%に上った。
マタニティーハラスメントは社会問題
 「マタニティーハラスメント」とは、妊娠や出産、育児を理由とした不利益な取扱いとを指し、「マタハラ」と略されることが多い。

 具体的には、解雇、雇い止め、契約更新回数の引下げ、退職や不利益な契約内容変更の強要、降格、減給、賞与などにおける不利益な算定、不利益な配置変更、不利益な自宅待機命令、不利益な人事評価、仕事をさせないなど就業環境を害する行為、前述のいずれかを示唆する発言、妊娠・出産・育児関連の権利を主張しづらくする発言などがある。

 また、派遣労働者については、派遣先から受けた次のような不利益取扱いも含む。妊娠・育休・子の看護休暇を理由とした契約打切や労働者の交替、仕事をさせないなど就業環境を害する行為、前述のいずれかを示唆する発言、妊娠・出産・育児関連の権利を主張しづらくするような発言。

 男女雇用機会均等法による母性健康管理措置や深夜業免除など労働基準法による母性保護措置を受けたことなどを理由として、事業主がこうした不利益を労働者にもたらす取り扱いをするのは禁止されている。

 最高裁は昨年10月、「妊娠による降格は原則禁止で、女性が自由意思で同意しているか、業務上の必要性など特殊事情がなければ違法で無効だ」と初の判断を示した。厚生労働省は是正指導に従わない悪質な事業主の実名を公表するなど指導を強化している。

第164回労働政策審議会雇用均等分科会(厚生労働省 2015年11月12日)
[Terahata]
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