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がんの遺伝子情報にもとづく「個別化治療」の実用化へ向けて前進
2016年01月14日
国立がん研究センターは、個々のがん患者の遺伝子異常にもとづく「個別化治療」を実現するために、新たに「遺伝子診療部門」を開設した。
昨年12月に、わずか5ミリリットルの血液で、がんに関係する60種類の遺伝子異常をまとめて調べることができる新たな手法を開発したと発表した。
がんのゲノム診療が進めば、がんを発症しやすい人を事前に発見し予防したり、発症した場合より効果的な治療を行えるようになると期待されている。
昨年12月に、わずか5ミリリットルの血液で、がんに関係する60種類の遺伝子異常をまとめて調べることができる新たな手法を開発したと発表した。
がんのゲノム診療が進めば、がんを発症しやすい人を事前に発見し予防したり、発症した場合より効果的な治療を行えるようになると期待されている。
がんの「ゲノム解析」を日常診療に導入
国立がん研究センターは、同センターの中央病院に「遺伝子診療部門」を開設し、がん診療に網羅的な遺伝子診断にもとづく診療を本格的に導入する準備を整えたと発表した。
「遺伝子診療」は大きく分けて、遺伝的にがんになりやすい人への「個別化予防」と、個々のがん患者の遺伝子異常にもとづく「個別化治療」がある。
これまでも同病院では、「個別化予防」を遺伝相談外来で行ってきたが、もう一方の「個別化治療」については、検査の品質管理、遺伝子解析情報の臨床的意義付け、患者への伝達方法、情報の取り扱いなどさまざまな課題が残されており、本格的な日常診療への導入には至っていなかった。
一方、遺伝子解析技術が進歩し、治療標的となるがんの遺伝子異常も次々と明らかにされており、「個別化治療」を日常診療に導入することが課題となっている。
そこで同病院は、個々の患者の治療選択における網羅的遺伝子検査の有用性を検証する目的の研究「TOP-GEAR(トップ-ギア)プロジェクト」を2013年に開始し、2015年には十分な精度管理が担保された網羅的遺伝子検査室を院内に設置した。
「遺伝子診療部門」は、中央病院や研究所など各部門のゲノム診療や研究に関わるメンバーで構成され、専門家チームによる最終診断、解析結果レポートの作成、診療コンサルテーション、遺伝相談外来併診など、中央病院の全診療科をサポートする。
ゲノムとは生物のもつ遺伝子の全体を指す言葉。生物の細胞内にあるDNAがその実体で、遺伝子や遺伝子の発現を制御する情報なども含まれている。
同部門の開設により、「ゲノム診療を日常診療に本格導入する体制が整った。日本のがん診療の新たな1ページが開かれた」としている。
わずかな血液で、がん遺伝子60種類を検出
国立がん研究センターは昨年12月に、わずか5ミリリットルの血液で、がんに関係する60種類の遺伝子異常をまとめて調べることができる新たな手法を開発したと発表した。
従来の検査では、がん組織を外科的な手法で切除したり、内視鏡などで採取する必要があったが、患者の体に負担をかけずに、何度でも繰り返し検査ができるとして臨床現場への応用に期待が寄せられている。
がんの発症にかかわる遺伝子異常は、肺がんや乳がんなどの種類を超えて共通するものがあり、血液中に含まれていることが多い。
膵臓がんで死亡する人の数は年間に約3万人で、5年相対生存率も7%と極めて低い難治性のがんだ。
研究では、膵臓がん患者の95%以上で、がんの発症初期に遺伝子の突然変異が起こることに着目し、患者の血液中にがん組織から出た微量のDNAが現れると想定して、48人の患者の血液のなかの60種類の遺伝子を解析した。
研究では、新たに開発した次世代シークエンサーにより細胞の遺伝子の塩基配列を高速・高精度に解読し、網羅的なゲノム解析を行った。
その結果、48人分の血液の約3割にあたる14人分で遺伝子の変異を検出。わずか5ミリリットルの血液からでも、60種類の遺伝子異常を検出できることが確認された。
同センターでは「研究で用いた解析方法は、膵臓がんに限らず、乳がんや肺がんなどあらゆるがんで可能であり、また、生検が困難な患者や、薬剤耐性獲得変異など経時的な複数回の検査が必要な場合にも有用だ。より患者負担が少ない網羅的ゲノム解析手法として臨床応用が期待される」と述べている。
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