日本型食生活が「動脈硬化」を防ぐ 「日本食」は世界に誇れる健康食
日本医師会と米穀安定供給確保支援機構は、ごはんを主食とした日本型食生活の有用性を考えるサミットを開催した。
生活習慣病や肥満を予防・改善するために、ごはんを主食とした日本の食文化の再評価がはじまっている。日本食は、「一汁三菜」(主食・主菜・副菜・汁物)という構成が伝統になっている。そして日本食のおかずとして、魚が多く使われ、豆腐や納豆などの豆類が多く、野菜が豊富で脂肪が少ないことが特徴だ。
日本食で大切にされているのは、「季節感を大切にした演出と味わい」「さまざまな食材と調理法」「素材の味を引き出した絶妙な味わい」という点だ。
日本医師会と米穀安定供給確保支援機構は昨年10月に、ごはんを主食とした日本型食生活による生活習慣病予防・治療の有用性について考える「食育健康サミット」を開催した。テーマは「脂質の質を考慮した血管管理―健康寿命延伸のために」。
厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2015年版)」で、肥満・生活習慣病の予防のために、エネルギー産生栄養素バランスを、タンパク質(13~20%)、脂質(20~30%)、炭水化物(50~65%)という目標量を比率で示した。
動脈硬化は、心筋梗塞などの心臓病や脳卒中などの脳血管疾患だけでなく、寝たきりや認知症など生活の質を著しく落とす疾患の原因になる。
食事摂取基準では、動脈硬化の予防の観点から飽和脂肪酸の目標量を7%以下として、過剰摂取を控えることを推奨している。一方で、悪玉LDLコレステロールが正常値の場合のコレステロールの摂取については上限値を削除した。
丸山千寿子・日本女子大学家政学部食物学科教授は、「脂質管理における日本食の意義」と題し講演。
米自体は他の穀物と比べても、特に栄養的に優れているというわけではない。玄米や胚芽米などは、体にいい成分が含まれているものの、大部分は炭水化物からできているという点では、他の穀物と変わらない。
しかし、「他の食材との相性が良い」という点で、米のごはんには、どの穀物をしのぐ柔軟性がある。
実際に、パンやめん類に合うもので、ごはんに合わないものは少ないのではないだろうか。食卓に上る料理のほとんどは、ご飯のおかずにしても問題のないものばかりだ。
さまざまな食材との組み合わせによって、必要な栄養素をふだんの食事から無理なく摂取できるのが、ごはんを中心とした和食の魅力だ。
一方で、欧米型の食事スタイルでは、単純糖質や飽和脂肪酸を過剰に摂取してしまう傾向があり、カロリーが多いわりに必須栄養素が不足しがちになる。
そのため、エネルギー必要量が充足しても栄養素が不足したり、逆に栄養素が充足してもカロリー摂取量が過多となる事態が起こりがちだ。
これに対し、飽和脂肪酸や単純糖質の少ない食事を摂取すると、カロリー必要量より10%ほど少ないエネルギー量で必須栄養素を充足できる。栄養素とカロリーのバランスからみて、日本食は自由度の高い食事スタイルといえる。
「飽和脂肪酸を控え、コレステロールの代謝を促進する多価不飽和脂肪酸、中性脂肪の代謝に影響するn-3系多価不飽和脂肪酸を十分に摂取する食事スタイルが望ましい。加えて食物繊維の摂取も効果がある」と、丸山氏は指摘する。
具体的な食材では、バラ肉やひき肉のような脂の多い肉やバターなどの油脂類は避け、n-3系多価不飽和脂肪酸を豊富に含む青魚の摂取が勧められるという。
日本人の伝統的な食事は、魚をさまざまな調理法でとり、海藻、きのこ、こんにゃくなどから食物繊維やミネラルがとれて栄養バランスが良い。効率良く生活習慣病を予防・改善できるという。
日本動脈硬化学会は、「日本食」を動脈硬化予防のため効果的な食事として推奨している。
都築毅・東北大学大学院農学研究科食品機能健康科学講座准教授は「日本食を基盤とした肥満・生活習慣病を防ぐ食事」と題し講演した。
日本人は寿命が長いだけでなく、自立して生活できる期間を示す健康寿命が欧米に対して長いことが知られている。その要因は健康的な日本食にあると都築氏は考えた。
都築氏らは、現在の日本食と米国食を再現し、ラットに一定期間これらの食事を与え、食事内容の違いによる生体への影響を調べる実験を行った。
その結果、日本食はストレス性が低く、エネルギー・消費を促進し、健康維持に有益であることが判明した。
現在の日本食は欧米の影響を受け「食の欧米化」が進行し、また、生活習慣病の発症率が増加している。よって、どの時代の日本食が健康維持に有益かを検討した。
実験で分かったのは、1975年頃の日本食が、内臓脂肪が減少し、エネルギー消費が亢進し、メリットが多いことだった。
長期摂食させた試験でも、1975年日本食は、肥満抑制効果を有し、さらに、老化による脂質・ 糖質代謝調節機能の低下を防いで脂肪肝や糖尿病の発症リスクを低減することが示された
1960年の朝昼夕3食の平均的なメニューは「炭水化物の割合が多く、おかずの種類・量が少ない」特徴があり、75年に比べると栄養バランスに劣る。
1990年は「乳製品や肉類が豊富だが、食の欧米化の影響で脂質が増え、野菜類はもっとも少ない」傾向にあり、体重増加量は75年より多く、エネルギー消費も少なかった。 2005年は「炭水化物が少なく、肉類、油脂類が多く、魚介類が少ない。単身者が増え、おかずの少ない丼ものなどの単品メニューが目立ってきた」特色がある。 1975年の典型的なメニューを調べたところ、食品の流通も進み、多様な食材を使えるようになっていた。日本の伝統的な食材の魚介類や大豆などに加えて、野菜や果実も通年で手に入るようになり、卵や豆類などもよく使われていた。ワカメやヒジキなどの海藻を多く食べており、食物繊維が豊富にとれていた。 「日本人の食事は時代とともに変わってきた。食事により非常に多くの食品成分を同時に摂取しているため、食事全体が生体に及ぼす影響を検討することは重要。1990年ごろから現代にかけては、欧米食の影響を受けすぎて、伝統的な日本食の良さが失われてきたといえる。食事面からだけみると、日本食の長寿効果をもっとも受けているのは、いま70歳ころになっている世代だろう」と、都築氏は述べている。「栄養」に関するニュース
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