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特定保健指導が医療費適正化に効果 「リスクあり」では医療費が2倍に
2016年02月17日
特定健診で「リスクあり」と判定された人は医療費が上昇する傾向があり、もっとも医療費に差があるのは、男性では「血糖」、女性では「メタボ」。また、特定保健指導を受けていない人は、受けている人に比べて医療費が高い傾向にある――特定保健指導には医療費の抑制効果があることが健康保険組合連合会(健保連)の調査で示された。
受診疾病の上位は「その他の内分泌、栄養及び代謝疾患」「高血圧性疾患」「糖尿病」
調査は、健保連が280の健康保険組合の加入者について、レセプトデータ(2014年5月診療分、103万5,835件)と特定健診・特定保健指導データ(2013年度実施分、218万2,744件)を突き合わせ、特定健診などの受診の有無と医療費との関係などを分析したもの。
特定健診対象者のうち、特定健診受診者(213万6,287人)と、特定健診非受診者(14万6,457人)について、生活習慣病レセプトの有無を調査。▽健診レベル判定別の生活習慣病の医療受診状況、▽特定健診受診者の医療受診疾病名、▽健診検査値のリスク(メタボ、腹囲、血圧、血糖、脂質)有無別の1人当たり医療費、▽リスク有無別の総医療費に占める生活習慣病医療費の割合、▽特定保健指導実施有無別の1人当たり医療費――について調査した。
健診レベル判定別に特定健診受診者の生活習慣病に関するレセプトの有無を調査したところ、「受診勧奨基準値以上」では全体の12.40%がレセプトのない人で、早期治療のための受診勧奨対象者だった。また、逆に、全体の1.75%がレセプトのある人で重症化予防対象者だった。
また、健診レベル判定が「肥満」で「受診勧奨基準値以上」の人の医療受診疾病名(119分類)では、男性・女性ともに「その他の内分泌、栄養及び代謝疾患」「高血圧性疾患」「糖尿病」が上位を占めた。
健診で「リスクあり」と判定 医療費の差は男性で2倍、女性で2倍以上
特定健診で「リスクあり」と判定された人の医療費は、検査項目によって差があることが明らかになった。どの検査にターゲットを絞って特定保健指導をすれば、医療費抑制の効果を得やすいかが示唆されている。
健診検査値のリスク(メタボ、腹囲、血圧、血糖、脂質)の有無別に1人当たり医療費を比較すると、リスクのある人のほうが医療費が高く、また、リスクがある人とない人でもっとも医療費に差があるのは、男性では「血糖」、女性では「メタボ」であることが判明した。
下記のグラフは、「メタボ」「腹囲」「血圧」「血糖」「脂質」のリスク有無別に医科入院外の1人当たり医療費を比較したもの。男性では、もっとも医療費に差があるのは(1)「血糖」で、男性では、リスクあり1万4,064円、リスクなし6,449円と2倍以上の開きがあり、次いで、(2)「メタボ」、(3)「脂質」、(4)「血圧」、(5)「腹囲」の順となっている。
一方、女性では、もっとも医療費に差があるのは、(1)「メタボ」で、リスクあり1万5,734円、リスクなし7,138円と2倍以上の開きがあり、次いで、(2)「血糖」、(3)「脂質」、(4)「血圧」、(5)「腹囲」の順となっている。

血糖・脂質・メタボのリスクあると、生活習慣病医療費の割合が高い
また、リスク有無別に総医療費に占める生活習慣病医療費の割合をみると、「リスクあり」の方が生活習慣病医療費の割合が高く、医科入院では「虚血性心疾患」「脳血管障害」、医科入院外では「高血圧症」「糖尿病」が高い割合を示した。
「メタボ」「腹囲」「血圧」「血糖」「脂質」のリスク有無別に総医療費に占める生活習慣病医療費の医科入院における割合では、男女ともに「リスクあり」のほうが総医療費に占める生活習慣病医療費の割合が高く、男性では(1)「血糖」、(2)「メタボ」、(3)「脂質」の順に高い。また、女性では(1)「メタボ」が最も高く、次いで、(2)「血糖」、(3)「脂質」の順となっている。
なお、ここで言う生活習慣病は、▽糖尿病、▽脳血管障害、▽虚血性心疾患、▽高血圧症、▽高尿酸血症、▽高脂血症、▽肝機能障害、▽高血圧性腎臓障害、▽人工透析をさす。

特定保健指導を受けた人の方が、受けていない人に比べて医療費が低い
保健指導を受けた人と受けていない人で1人当たり医療費を比較すると、「特定保健指導を受けた人の方が、受けていない人に比べて医療費が低い」傾向にあることが判明した。
下のグラフは、特定保健指導実施の有無による医科入院外の1人当たり医療費を比較したもの。男性では、特定保健指導実施者 4,985円に対して、未実施者 7,798円となっており、未実施者のほうが高い。また、各年齢階層を比較しても未実施者のほうが高い傾向がみられる。
女性でも、特定保健指導実施者 6,910円に対して、未実施者 7,488円となっており、やはり未実施者のほうが高い傾向にある。

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