ニュース
加熱調理の「アクリルアミド」にがんリスク 食品安全委員会が報告書
2016年02月17日
ジャガイモや野菜などの食材を高温で熱したときに生じる化学物質「アクリルアミド」について、内閣府食品安全委員会の作業部会は「がん発症を増やす懸念がないとは言えない。できる限り量を減らすべきだ」とする評価書案を公表した。
アクリルアミドがんを引き起こす 本格調査を実施
食品は加熱調理する過程でさまざまな化学物質が生成される。その中には、食品を食べやすくする、好ましい風味を醸し出す、保存性を高めるなど有用な効果をもたらすものがある一方で、健康に悪影響をもたらす副産物ができることがある。
炭水化物を含む食品を120度以上の高温で調理した食品に含まれる有害化学物質のひとつが「アクリルアミド」だ。
できるだけアクリルアミドの摂取量を減らす必要がある
内閣府食品安全委員会の作業部会は今回、日本人の食生活におけるアクリルアミドのリスクを5年にわたって検討し、報告書案をまとめた。
それによると、日本人の1日当たりの平均の摂取量は、体重1キログラム当たりおよそ0.2μgで、これは動物実験で発がん性が確認されている量と比べておよそ1000分の1だった。日本は欧州連合(EU)加盟国(0.4~1.9μg)より低く、香港(0.21μg)とほぼ同じだった。
しかし海外のリスク評価機関の中には、1万分の1より多い場合は低減対策が必要だと指摘しているものもあり、動物実験でがんが認められた最少量と日本人の平均推定摂取量が比較的近かった。報告書案では「できるだけアクリルアミドの摂取量を減らす必要がある」と結論している。
委員会は一般からの意見を募った上で最終的な評価書をまとめる。
アクリルアミドを減らすために家庭でできること
食品安全委員会によると、日本人では油で揚げたジャガイモや炒めたモヤシなど野菜からの摂取が多かった。長時間、高温で揚げるなどしないことや、野菜を調理前に水にさらすなどすることで、量を減らすことができる。
農林水産省は、家庭で調理するときにアクリルアミドができにくくする方法をまとめた冊子「安全で健やかな食生活を送るために アクリルアミドを減らすために家庭でできること」を作成し、ホームページで公開している。
それによると、アクリルアミドを減らすために家庭でできる方法として、次のことが効果的だ。
・ 炭水化物の多い食品を、必要以上に長時間、高温で加熱調理しないフライドポテトなどの揚げ物は、油の温度や揚げ時間に注意。じゃがいもや野菜などの炒め物も同様に、あまり焦がさないようにする。過度の加熱は食材の風味や栄養も損なう。 ・ 食品の加熱方法を見直し 煮る、蒸す、ゆでる調理法がお勧め
煮る、蒸す、ゆでるなどの調理法は、揚げ物や炒め物に比べてアクリルアミドが生成しにくい。
また、食品を下ゆでしたり加熱前に水にさらすと、アクリルアミドの原因となるアスパラギン、還元糖(ブドウ糖、果糖など)の量を減らす効果を得られる。
低温で長期保存したジャガイモは糖分が増えているため、加熱時にアクリルアミドができやすくなる。揚げ物や炒め物よりも、煮たり蒸したりする料理がお勧めだ。 ・ 低温で長期貯蔵したジャガイモを高温調理しない
ジャガイモは、低温で保存するとアクリルアミドができる原因となる成分であるブドウ糖と果糖が増える。そのため、低温で長期貯蔵されたジャガイモを、フライドポテトのような高温調理に使用することは避けるべきだ。
食品中のアクリルアミドに関する情報(農林水産省 2015年10月30日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「健診・検診」に関するニュース
- 2024年04月25日
-
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠 - 2024年04月22日
- 【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
- 2024年04月18日
- 人口10万人あたりの「常勤保健師の配置状況」最多は島根県 「令和4年度地域保健・健康増進事業の報告」より
- 2024年04月18日
- 健康診査の受診者数が回復 前年比で約4,200人増加 「地域保健・健康増進事業の報告」より
- 2024年04月09日
- 子宮の日 もっと知ってほしい子宮頸がんワクチンのこと 予防啓発キャンペーンを展開
- 2024年04月08日
- 【新型コロナ】長引く後遺症が社会問題に 他の疾患が隠れている例も 岡山大学が調査
- 2024年03月18日
- メタボリックシンドロームの新しい診断基準を提案 特定健診などの56万⼈のビッグデータを解析 新潟⼤学
- 2024年03月11日
- 肥満は日本人でも脳梗塞や脳出血のリスクを高める 脳出血は肥満とやせでの両方で増加 約9万人を調査
- 2024年03月05日
- 【横浜市】がん検診の充実などの対策を加速 高齢者だけでなく女性や若い人のがん対策も推進 自治体初の試みも
- 2024年02月26日
- 近くの「検体測定室」で糖尿病チェック PHRアプリでデータ連携 保健指導のフォローアップなどへの活用も