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夫や妻との別れで脳卒中リスクが上昇 配偶者を失うと生活習慣が悪化
2016年04月07日
離婚や死別などで配偶者を失った人は、脳卒中のリスクが高まることが、45~74歳までの男女5万人を対象とした調査で明らかになった。「配偶者を失うとストレスが増え、飲酒量が増えるなど生活が乱れるおそれがある」と研究者は述べている。
離婚や死別により脳卒中リスクは上昇
離婚や死別などにより脳卒中の発症リスクが1.26倍増加することが、日本人約5万人を対象とした研究で明らかになった。特に脳出血については強い関係がみられ、脳出血リスク男性で1.48倍に、女性で1.35倍に上昇するという。
「JPHC研究」は日本人を対象に、さまざまな生活習慣と、がん・糖尿病・脳卒中・心筋梗塞などとの関係を明らかにする目的で実施されている多目的コホート研究。今回の研究は、大阪大学大学院社会医学講座公衆衛生学、同大学グローバルコラボレーションセンターなどのなどの研究チームがまとめたもの。
婚姻状況は健康に影響を与える重要な要因であり、一般に既婚者は非婚者(離別・死別)に比べ健康状態が良いことが知られている。また、婚姻状況の変化は循環器疾患の発症リスクを上昇させるが、脳卒中発症リスクとの関連などについて詳しくは分かっていなかった。
そこで研究チームは、既婚から非婚への婚姻状況の変化が、その後の脳卒中発症のリスクにどのような影響を与えるかを脳卒中タイプ別に分析し、その関連が居住形態や仕事の有無によって変化するかどうかを検討した。
全国9ヵ所(岩手、秋田、長野、沖縄、茨城、新潟、高知、長崎)の9保健所管内に住む、調査時点(1990年と1993年)で既婚の40?69歳の男女4万9,788人(男性 2万4,162人、女性 2万5,626)を対象に、平均15年間追跡し、研究開始5年前に配偶者と同居していたことを条件に、既婚(配偶者と同居)から非婚(配偶者との別居)への変化について調べた。
15年間の追跡期間中に2,134人の脳卒中発症が確認された。調査開始時期に婚姻状況変化がある人ほど、脳卒中を発症リスクが高い傾向があり、リスクは全脳卒中では男性1.26倍、女性1.26倍、脳出血性脳卒中では男性1.48倍、女性1.35倍にそれぞれ上昇した。

人をとりまく社会環境にも考慮する必要がある
婚姻状況の変化が脳卒中リスクを上昇させる理由として、配偶者を失うことで生活習慣や精神状態の変化している可能性が考えられる。過去の研究では、配偶者を失うと飲酒量が増えたり、野菜や果物の摂取が減ったりといった変化があることが分かっている。「心理的ストレスレベルが上昇し、生活を楽しめなくなる傾向にある。このような婚姻状況の変化により起こるさまざまな変化が脳卒中の発症リスクを上昇させているのではないか」と、研究者は述べている。
調査では、居住形態の違いによる影響も分析した。「婚姻状況が変化せず子供と同居なし」と比べた脳卒中の発症リスクは、「離婚して子供と同居なし」では男性1.10倍、女性1.15倍と有意差はなかったが、「離婚して子供と同居あり」は男性1.44倍、女性1.45倍と男女ともに有意に上昇した。親としての役割を持つことが配偶者との離別による影響を加重している可能性が示唆された。
一方、親との同居による影響では、性差が見られた。「婚姻状況が変化せず親と同居なし」比べた脳卒中の発症リスクは、「離婚して親と同居あり」では、男性の0.96倍に対し女性では1.33倍と有意に高かった。また、「離婚して親と同居なし」の男性では1.25倍と有意に高かったことから、男性では親との同居が脳卒中リスクの軽減に影響している可能性がある。
就労の有無による影響については、男性では無職例が少ないので女性のみの結果となった。就労しており離婚経験のない女性に比べた脳卒中の発症リスクは、就労中の離婚経験者では1.14と有意差はなかったが、無職の離婚経験者では2.98と有意に高かった。

Marital Transition and Risk of Stroke: How Living Arrangement and Employment Status Modify Associations(Stroke 2016年3月1日)
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