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自宅で最期を迎えるがん患者 がん患者の「生存期間」「ケアの質」に差
2016年04月07日

筑波大学は、自宅で最期を迎えたがん患者と病院で最期を迎えたがん患者の生存期間に違いがあるかを検証する多施設共同前向き研究を行った。生存期間にはほとんど違いがないか、自宅の方がやや長い傾向があることが分かった。
死を迎える人への「ケアの質」を高める「QOD」を評価
がん患者やその家族、遺族からみた亡くなる過程の医療やケアの質を評価し、死を迎える人への「ケアの質」を高めるために、「死の質」(QOD:Quality of death)に対する評価が世界的に行われるようになってきた。
がん患者のQODが最期を迎える場の影響を受けることは明らかだが、その場所によって生存期間に差があるかどうかについてはよく分かっていない。
そこで、研究チームは、日本国内58医療機関の緩和ケア病棟に入院した患者、緩和ケアチームが関わった患者、在宅緩和ケアを受けたがん患者を対象に、2012年9月~2014年4月に調査した。
対象となった患者数は2,426人で、そのうち2,069人が解析対象となった。対象となった患者を、進行がんの緩和ケアを改善するための予後予測の指標である「PiPS-A」にもとづき、予後が日の単位、週の単位、月の単位の3群に層別化し、それぞれの群において自宅で亡くなった患者と病院で亡くなった患者の生存日数を比較した。
その結果、予後が日の単位もしくは予後が週の単位と見込まれる群においては、自宅で亡くなった患者群の方が、病院で亡くなった患者群に比べて生存期間が有意に長かったことが確認された。
一方、予後が月の単位と見込まれる群においては、亡くなる場所によって生存期間の有意な差はみられなかった。
また、亡くなる3日前以内に行った点滴と自宅での緩和ケアを開始してから3週間以内の抗生剤投与の頻度が、自宅で亡くなった患者は、病院で亡くなった患者より有意に少ないことも明らかになった。

進行がん患者が退院して自宅に戻ることの不安を和らげる結果に
今回の結果から、病院で亡くなった進行がん患者と自宅で亡くなった進行がん患者の生存期間は同等、もしくは、自宅で亡くなった進行がん患者の方が生存期間は長い可能性があることが示された
これらの知見は、退院して自宅に戻ることが生存期間を縮めるのではないかと心配する臨床医や患者、家族に対して、「最期を迎える場によって生存期間が短くなる可能性は低い」という説明に活用できるという。
ただしこの研究は、生存期間に影響する症状の重症度、病状の進行度、家族の支援体制、緩和ケアサービスの利用可能性、そして、患者・家族が希望する看取りの場に関する情報などにもとづいた調整ができていないなど限界がある。
その影響が排除できないため、「自宅の方が長生きする」とまで結論できないが、「進行がん患者が退院して自宅に戻ることの不安を和らげることには使える」と研究者は述べている。
この研究は、筑波大学医学医療系の浜野淳講師、神戸大学医学部の山口崇特定助教ら研究グループによるもので、米国がん学会が発行する医学誌「Cancer」オンライン版に発表された。
筑波大学医学医療系
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