ニュース

自宅で最期を迎えるがん患者 がん患者の「生存期間」「ケアの質」に差

 筑波大学は、自宅で最期を迎えたがん患者と病院で最期を迎えたがん患者の生存期間に違いがあるかを検証する多施設共同前向き研究を行った。生存期間にはほとんど違いがないか、自宅の方がやや長い傾向があることが分かった。
死を迎える人への「ケアの質」を高める「QOD」を評価
 がん患者やその家族、遺族からみた亡くなる過程の医療やケアの質を評価し、死を迎える人への「ケアの質」を高めるために、「死の質」(QOD:Quality of death)に対する評価が世界的に行われるようになってきた。

 がん患者のQODが最期を迎える場の影響を受けることは明らかだが、その場所によって生存期間に差があるかどうかについてはよく分かっていない。

 そこで、研究チームは、日本国内58医療機関の緩和ケア病棟に入院した患者、緩和ケアチームが関わった患者、在宅緩和ケアを受けたがん患者を対象に、2012年9月~2014年4月に調査した。

 対象となった患者数は2,426人で、そのうち2,069人が解析対象となった。対象となった患者を、進行がんの緩和ケアを改善するための予後予測の指標である「PiPS-A」にもとづき、予後が日の単位、週の単位、月の単位の3群に層別化し、それぞれの群において自宅で亡くなった患者と病院で亡くなった患者の生存日数を比較した。

 その結果、予後が日の単位もしくは予後が週の単位と見込まれる群においては、自宅で亡くなった患者群の方が、病院で亡くなった患者群に比べて生存期間が有意に長かったことが確認された。

 一方、予後が月の単位と見込まれる群においては、亡くなる場所によって生存期間の有意な差はみられなかった。

 また、亡くなる3日前以内に行った点滴と自宅での緩和ケアを開始してから3週間以内の抗生剤投与の頻度が、自宅で亡くなった患者は、病院で亡くなった患者より有意に少ないことも明らかになった。
進行がん患者が退院して自宅に戻ることの不安を和らげる結果に
 今回の結果から、病院で亡くなった進行がん患者と自宅で亡くなった進行がん患者の生存期間は同等、もしくは、自宅で亡くなった進行がん患者の方が生存期間は長い可能性があることが示された

 これらの知見は、退院して自宅に戻ることが生存期間を縮めるのではないかと心配する臨床医や患者、家族に対して、「最期を迎える場によって生存期間が短くなる可能性は低い」という説明に活用できるという。

 ただしこの研究は、生存期間に影響する症状の重症度、病状の進行度、家族の支援体制、緩和ケアサービスの利用可能性、そして、患者・家族が希望する看取りの場に関する情報などにもとづいた調整ができていないなど限界がある。

 その影響が排除できないため、「自宅の方が長生きする」とまで結論できないが、「進行がん患者が退院して自宅に戻ることの不安を和らげることには使える」と研究者は述べている。

 この研究は、筑波大学医学医療系の浜野淳講師、神戸大学医学部の山口崇特定助教ら研究グループによるもので、米国がん学会が発行する医学誌「Cancer」オンライン版に発表された。

筑波大学医学医療系
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2025年08月21日
歯の本数が働き世代の栄養摂取に影響 広島大学が新知見を報告
2025年07月07日
子供や若者の生活習慣行動とウェルビーイングの関連を調査 小学校の独自の取り組みを通じた共同研究を開始 立教大学と東京都昭島市
2025年06月27日
2023年度 特定健診の実施率は59.9%、保健指導は27.6%
過去最高を更新するが、目標値と依然大きく乖離【厚労省調査】
2025年06月17日
【厚労省】職域がん検診も市町村が一体管理へ
対策型検診の新項目はモデル事業で導入判断
2025年06月02日
肺がん検診ガイドライン19年ぶり改訂 重喫煙者に年1回の低線量CTを推奨【国立がん研究センター】
2025年05月20日
【調査報告】国民健康保険の保健事業を見直すロジックモデルを構築
―特定健診・特定保健指導を起点にアウトカムを可視化
2025年05月16日
高齢者がスマホなどのデジタル技術を利用すると認知症予防に 高齢者がネットを使うと健診の受診率も改善
2025年05月16日
【高血圧の日】運輸業はとく高血圧や肥満が多い 健康増進を推進し検査値が改善 二次健診者数も減少
2025年05月12日
メタボとロコモの深い関係を3万人超の健診データで解明 運動機能の低下は50代から進行 メタボとロコモの同時健診が必要
2025年05月01日
ホルモン分泌は年齢とともに変化 バランスが乱れると不調や病気が 肥満を引き起こすホルモンも【ホルモンを健康にする10の方法】
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶