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糖尿病性腎症の重症化を予防するプログラムを策定 【厚生労働省】

 厚生労働省は糖尿病性腎症の重症化を予防するプログラムを策定した。日本医師会、日本糖尿病学会などの日本糖尿病対策推進会議とともに、糖尿病性腎症から透析治療に移行する患者を減らすために、全国的な取り組みを開始する。
透析が必要となる糖尿病患者を減らすために
 厚生労働省が「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を、日本医師会、日本糖尿病対策推進会議との協定にもとづき策定した。

 糖尿病性腎症が進行するリスクの高い患者を早期にみつけだし、適切な治療を行い重症化を予防するのが狙い。未受診者らへの受診勧奨や保健指導とも連動しており、人工透析が必要となる患者を減らすことを目的としている。

 糖尿病性腎症は、腎臓が障害されて働きが低下する病気。腎臓には糸球体という細い血管が集まった組織があり、血液から老廃物を濾過して排出している。しかし、血液中のブドウ糖が異常に増えると、糸球体が徐々に壊されていく。

 糖尿病性腎症を発症すると腎臓に異常が起こり、初期には微量アルブミン尿が、障害が進むにつれタンパク尿が出るようになる。また、老廃物を十分に取り除けなくなり、体内に溜まっていく。さらに、塩分や水分も十分に排出されなくなり、体内に蓄積されてむくみを生じる。

 進行すると、腎臓の働きが失われる腎不全という状態になり、透析治療が必要になる。腎臓の働きが低下する前に治療を始めることが大切だ。腎症は透析の原因になるだけではなく、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患の重大な危険因子でもある。腎臓を守ることは、心臓や脳を守ることにつながる。
かかりつけ医と専門医の連携を重視
 プログラムは、▽健康診査・レセプトなどで抽出されたハイリスク者への受診勧奨、保健指導、▽治療中の患者に対する医療と連携した保健指導、▽糖尿病の治療中断者や健診未受診者への対応――などの取り組みで構成される。

 日本透析医学会の調査によると、2014年12月時点の透析患者数は32万448人。新たに透析を開始した3万6,377人のうち、糖尿病が原因となった患者は43.5%に相当する1万5,809人に上る。

 透析が必要となる糖尿病患者を減らすために重視されているのは、かかりつけ医と専門医との連携だ。

 糖尿病は初期の段階では自覚症状が乏しいので、治療を中断してしまう患者が少なくない。プログラムでは治療中断を防ぐために、都道府県や市町村といった自治体との連携を強化し、地域の医療機関に周知し、生活状況をふまえた保健指導を役立てる仕組み作りが考えられている。

 プログラムは「糖尿病性腎症重症化予防プログラム開発のための研究」(研究代表者:津下一代・あいち健康の森健康科学総合センター長)の報告書もふまえて策定された。
微量アルブミン尿検査で腎機能をチェック
 一般的な健康診断でも行われている腎臓の検査は、尿検査と血液検査だ。尿検査でタンパクが出たら、腎臓に障害のあるサインだ。血液検査では、腎臓の働きが低下すると血液中に増える老廃物である血清クレアチニンを調べる。

 しかし、糖尿病がある場合には、この2つの検査だけでは不十分だ。糖尿病腎症を早く発見するためには、微量アルブミン尿検査を受ける必要がある。アルブミンは糖尿病のごく初期に尿中に少量もれてくるタンパクだが、通常の尿検査では分からない。糖尿病と診断されている場合は少なくとも年1回、できれば半年に1回は微量アルブミン尿検査を受けることが必要となる。

 プログラムでは、糖尿病の治療中に尿アルブミン、尿蛋白、eGFRなどにより腎機能低下が判明し、保健指導が必要と医師が判断した患者に対して集中的な保健指導が行う仕組みが考えられている。
腎症の進行段階に合わせた治療や保健指導を実施
 糖尿病性腎症は徐々に進行していき、病気の進行段階によって症状が異なる。病期は、尿タンパク値、またはアルブミン値などによって診断され、病期に合わせた治療が行われる。

 第1期(腎症前期)から第2期(早期腎症期)にかけては、微量アルブミン尿が出る。この時点では、まだタンパク尿の数値も微々たる変化であり、自覚症状はほとんどない。このときに厳格な血糖コントロールを行えば、糖尿病腎症の進行を食い止めることが可能になる。

 第3期(顕性腎症期)になると、腎機能の低下が進み、尿に含まれるアルブミンが多くなっていく。ここまで進行すると、次第に血圧も上昇し、高血圧によって血管が傷つけられ、さらに腎臓の状態を悪化させるという悪循環に陥ってしまう。

 第3期以降では、進行を遅らせることはできても、良い状態に戻すことはできないため、第2期の段階までで糖尿病性腎症をみつける必要がある。

 都道府県レベルで医師会や糖尿病対策推進会議などと議論し、各都道府県で、連携協定を締結することや糖尿病性腎症重症化予防プログラムを策定することで、自治体での取組みを円滑に実施する支援が考えられている。

 リスクの高い糖尿病患者に対しては、電話などによる指導、個別面談、訪問指導、集団指導などの保健指導が行われる。検査値等を用いて患者が自身の健康状態(糖尿病性腎症)を正しく理解し、生活習慣改善につなげることを目標としている。

 例えば「生活習慣改善が困難な患者」「治療を中断しがちな患者」「医療機関に管理栄養士などがおらず、実践的な指導が難しい場合」「専門病院との連携が困難な地域」といった場合には、医師以外の専門職が保健指導に携わるプログラムが考えられている。
かかりつけ医が総合的な診療を行うプログラム
 「日本糖尿病対策推進会議」は2005年に、日本医師会、日本糖尿病学会、日本糖尿病協会の三者が中心となり設立された。糖尿病性腎症などの合併症の予防などに積極的に取り組んでいる。

 糖尿病対策推進会議などの方針のもと、医師会は連絡票や事例検討などを通じて、自治体と協力して各地域でプログラムを推進する。

 地域のかかりつけ医は、病歴聴取や診察、保険診療での検査などにより患者の病期を判断し、心血管疾患のリスクや他の合併症の状況を把握し、患者に説明するとともに、保健指導上の留意点を保健指導の実施者に伝える。

 さらに必要に応じて糖尿病専門医と連携し総合的に診療を行う。地域連携パスを作成し、かかりつけ医と専門病院などの医療機関との連携を強化し、診療をバランスよく提供できる共同診療体制を地域で運用する。

 自治体での事業評価のために、血圧、血糖、腎機能などの検査値を共有する必要がある。日本糖尿病協会が発行する「糖尿病連携手帳」を活用し、患者の同意のもと、医療機関と情報を共有できるようにする取り組みが考えられている。
自治体の先行例を全国に広げる試み
 広島県呉市、東京都荒川区、埼玉県などの一部の自治体においては、レセプト(医療報酬明細書)により対象者の候補をリストアップした上で、かかりつけ医に事業参加の同意を得て、検査結果等のデータの提供を受け事業を実施するかたちで先行している。

 レセプトを有効活用することにより、健診未受診者からの抽出や併発疾病等の確認が可能となることから、抽出にあたってはレセプト等の情報も活用することも計画されている。

 過去に糖尿病治療歴がある、または過去3年間の健診でHbA1c7.0%以上が確認されているのに、最近1年間に健診受診歴やレセプトにおける糖尿病受療歴がない者を対象として状況確認を行い、可能な限り健診受診、医療機関受診につなげるとともに、必要に応じて保健指導などを行う。

糖尿病性腎症重症化予防プログラムの策定について(厚生労働省 2016年4月20日)
[Terahata]

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