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社会福祉施設の転倒労働災害を防止に 厚労省がマニュアルをまとめる
2016年05月17日
高齢者や障害者の福祉事業、保育事業などの社会福祉施設で労働災害の発生が増加している。そのため厚生労働省はこのほど、労働災害防止のための安全管理マニュアルや、職場の危険を発見するための「見える化」安全活動に関するリーフレット、転倒防止や腰痛予防のための好事例集を取りまとめた。
高齢者や障害児者の介護や看護にあたる介護系職員や看護師、また乳幼児の保育を担当する保育士は腰痛や転倒などのリスクが大きい。社会福祉施設で労働災害が多発する背景には高齢者や障害者、乳幼児の安全性や快適性を確保・向上させることが最優先に考えられ、職員の安全衛生問題への取り組みが後回しにされやすいことや、腰痛予防や転倒災害防止の具体的な対策や手順に関する情報が少ないことなどが考えられる。
この状況が続けば、社会福祉施設で働く職員の離職や新規就労を阻害する原因にもなりかねないことから、厚生労働省では2013年に「職場における腰痛予防対策指針」を大幅に改訂。「社会福祉施設の労働災害防止(介護従事者の腰痛予防対策)」としてマニュアルを公表している。
そのため今回は、腰痛に次いで発生件数が多い転倒事故に焦点をあて、施設の安全管理に活用されることを目的に安全管理マニュアルの編集が行われた。平成24年度の社会福祉施設における転倒災害事例を見ると、転倒災害は「階段での踏み外しや滑りによる転倒、床が濡れていて足を滑らせての転倒」、「室外での雪や氷、雨水で足を滑らせての転倒」、「駐車場での車止めにつまずいての転倒」などが多く見られることが判明。社会福祉施設特有の事例として、移乗などの介助時にバランスを崩したり、利用者が倒れそうになるのをかばって転倒したり、という事例もあった。
そのうえで転倒災害の再発防止対策として、「転倒事故発生場所」の表示を行う、朝礼や申し送り時に事故事例を発表させる、事故事例をもとにチェックリストを作成し職員が定期的にチェックする、などの注意喚起が有効であると指摘。段差のあるところや廊下、浴室などそれぞれの場所ごとに災害事例と予防対策などをまとめ、同じ事故が繰り返されないよう注意を促している。
また施設の利用者をかばって介助者も共に転倒するなど、利用者が要因となる転倒災害についても防止対策を詳しく説明。利用者の安全を守るのは当然のこととしながらも、介助者自身の安全を守ることにも注意を向け、介護補助具を効果的に使ってより安全性を確保する方法などを示している。
ほかにも職場に潜む危険を可視化(見える化)することで、より効果的な安全活動を行う方法や4S活動(整理、整頓、清掃、清潔)、ヒヤリハット活動(HH活動)などの方法についても紹介。転倒の基礎知識や関連法令、各種届出など、さまざまな角度から転倒労働災害防止に役立つ情報を掲載している。
また、この安全管理マニュアルの内容をもとに、「見える化で作業の安全を!」というリーフレットも製作。実際に福祉施設でとられている安全対策の事例集も公開され、写真入りで参照しやすい内容となっている。
社会福祉施設における労働災害防止対策について
関連する法律・制度を確認>>保健指導アトラス【労働安全衛生法】
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