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【世界禁煙デー】 禁煙するなら、たばこをきっぱりやめるのが効果的
2016年06月01日

禁煙に取り組む際は、徐々にたばこの本数を減らすより、きっぱりとやめるほうが継続しやすく、効果的であるという研究結果を、英国のオックスフォード大学などの研究チームが発表した。
"禁煙実行日"決め、きっぱりと喫煙をやめた方が成功率が高い
世界保健機関(WHO)によると、世界では喫煙が原因で年間600万人が死亡しており、うち500万人が喫煙が直接的な原因となり死亡している。さらに年間60万人が喫煙習慣がないにもかかわらず受動喫煙により死亡しているという。
たばこをやめれば疾患リスクを大幅に低減できるが、ニコチンの依存性は強力で禁煙は容易ではない。しかし、禁煙補助剤やニコチン置換療法、個別のカウンセリングや行動療法などの有効な手段もあり、何度か挑戦した末に禁煙に成功する人も多い。
研究チームは、英国在住で禁煙したいと考えている成人697人(平均年齢49歳)を、きっぱりと喫煙をやめる「断煙」グループと、2週間かけて75%を減らす「減煙」グループに分けた。
参加者全員に看護師によるカウンセリングを実施し禁煙を指導し、減煙グループはニコチンパッチやニコチンガムを使用し、断煙グループはニコチンパッチのみを使用した。禁煙開始日以降はニコチン置換薬を提供した。
その結果、4週間後の時点で減煙グループの39%がたばこを止めていたのに対し、断煙群では49%に上った。6ヵ月後も禁煙を継続していたのは、減煙群では16%、断煙群では22%で、短期的にも長期的にも断煙グループのほうが禁煙成功率が高かった。
「禁煙を試みる喫煙者は"禁煙実行日"をはっきりと決め、その日が来たらきっぱりと喫煙をやめた方が成功率が高いことが判明しました。確実にたばこをやめるために、適切な保健指導を行うことが大切です」と、オックスフォード大学プライマリケア学部のニコラ リンドソン ホーリー氏は言う。
喫煙は「喫煙病」(依存症+喫煙関連疾患) 治療が必要
日本呼吸器学会、日本循環器学会などが参加している「禁煙推進学術ネットワーク」が作成した「禁煙ガイドライン(2010年改訂版)」でも、「バレニクリン(禁煙補助剤)や、ニコチンパッチ、ニコチンガムなどのニコチン代替療法は禁煙率を高めるのに常に有効。喫煙者に対するたばこ依存症の集中治療を行うと効果が高い」と推奨している。
同ガイドラインでは「日本では保健医療従事者ですら、いまだに喫煙は個人的趣味・嗜好の問題と思っている人が少なくないが、喫煙は"喫煙病(依存症+喫煙関連疾患)"という全身疾患であり、喫煙者は"積極的禁煙治療を必要とする患者"という認識が必要」としている。
「たとえ禁煙に失敗したとしても、禁煙を試みるのは何もしないでいるよりもずっと良いことを知っておくべきです。禁煙に成功した人の中には、何度かの失敗を経て到達する人が少なくないからです。禁煙のチャンスを増やすために、徐々に減煙する禁煙方法も選択肢として残しておくべきでしょう」と、リンドソン ホーリー氏は指摘している。
「世界禁煙デーをきっかけに、多くの喫煙者に禁煙に挑戦してほしいと思います。禁煙を奨励し指導できる保健行政を全国規模に広げる必要があります。減煙をどのようにサポートすれば禁煙成功率を高められるかについても、今後検討していくべきでしょう」と、英国心臓財団のマイク クナプトン氏は言う。
If you want to quit smoking, do it now(オックスフォード大学 2016年3月15日)Gradual Versus Abrupt Smoking Cessation: A Randomized, Controlled Noninferiority Trial(journal Annals of Internal Medicine 2016年3月3日)
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