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「更年期障害」を天然の植物成分で治したい 効果・安全性は大丈夫?
2016年07月07日

更年期障害に悩んでいるが「できるだけ薬に頼らず天然由来の植物成分で治療したい」という女性は多い。植物ベースの治療法が更年期症状を緩和する可能性について、オランダの研究チームが発表した。
更年期障害 大豆食品や大豆イソフラボンは「効果あり」
閉経を迎える前後の更年期に、顔がほてるホットフラッシュや、汗が止まらなくなったり、めまいやだるさを感じたりといった「更年期障害」の症状に悩む女性が少なくない。
女性の更年期障害の大きな要因はエストロゲンレベルの低下で、代表的な治療法はホルモン補充療法だ。エストロゲンを補う製剤には「のむタイプ」「貼るタイプ」「塗るタイプ」があり、利便性は向上している。
しかし長期間使うと、子宮内膜増殖症や子宮体がんを発症するリスクが高まったり、ホルモンは肝臓で代謝されるので、肝機能が悪化している人はこの治療を受けることができないというデメリットがある。乳がん・心筋梗塞・脳卒中などの既往症がある人も、病気が悪化する可能性があるので原則的に行えない。
そのため、漢方薬や向精神薬による薬物療法、カウンセリングなどに頼る女性もいる。また、「更年期障害に効く」とされるサプリメントや食品を試す女性は多い。
では、これらの治療は実際に効果があるのか? オランダのエラスムス大学医療センターなどの研究チームが、欧米や中東、日本を含むアジアなど各国の更年期症状に悩む女性6,653人で植物由来のサプリメントや食品、漢方薬の効果を検証した。
それによると、日本でもおなじみの豆腐や納豆など大豆食品や大豆イソフラボンのサプリメントに、一定の効果があることが示された。
植物ベースの治療には「効果を期待できない」ものも
更年期のさまざまな症状に悩む女性が、「できるだけ薬に頼らず天然由来の植物成分で治したい」と考えるのは世界共通のようだ。欧米の40~50%の女性は植物療法などの代替療法を選択する傾向があるという。
このうち特に広く利用されているのが、ホルモン補充療法に用いられるエストロゲンに似た作用を持つ「フィトエストロゲン」であるイソフラボンが豊富に含まれる大豆食品や大豆由来のサプリメントなどだ。
研究チームは、植物ベースの治療による更年期症状への効果を検証した62件の臨床試験から合計6,653人の女性のデータを分析した。
これらの代替的治療法と更年期症状との関連性については、ランダム化比較試験などが行われているが、規模が小さかったり、追跡期間が短い、最適以下の用量であるなどの理由から、はっきりとした結論は得られていないのが現状だ。
研究のの結果、大豆製品や大豆由来のサプリメント、レッドクローバーなどのフィトエストロゲンの摂取によって、1日当たりのホットフラッシュの回数が平均で1.3回減り、膣の乾燥も軽減することが示された。ただ、寝汗の改善には関係していなかったという。
植物ベースの治療では、イソフラボン含有量が大豆よりも多いとされるレッドクローバーや、ブラックコホシュなどのハーブ類、漢方薬なども使われているが、科学的正確さや研究の質の点でかなりの差異がみられた。
ホットフラッシュや寝汗、膣の乾燥などへの効果が期待され、特に欧米諸国で広く使用されているハーブの「ラックコホシュ」関しては、いずれの更年期症状にも効果は示されなかった。
その他、日本でも漢方薬としても使われている「カラトウキ」(セリ科トウキの根乾燥したもの)は、月経不順や更年期障害に効果があるとされるが、今回の研究では更年期症状を改善する効果は示されなかった。
タデ科の植物の根茎である「ショクヨウダイオウ」や松樹皮エキスである「ピクノジェノール」などの植物ハーブは、欧米では治療薬として処方されることもあるが、効果には不明の点も多い。
「これまで行われた研究は一貫性が欠如しており、根拠も確実なものではない。植物療法や自然療法と更年期症状との関連について、より詳しく科学的な検討が必要とされている」と研究者はまとめている。
Some Plant-Based Therapies Associated with Modest Improvement in Menopausal Symptoms(JAMA 2016年6月21日)Use of Plant-Based Therapies and Menopausal Symptoms: A Systematic Review and Meta-analysis(JAMA 2016年6月21日)
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