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日本健康会議が活動報告 民間組織が連携し「生活習慣病の重症化予防」
2016年07月27日
健康寿命を延ばし、医療費を抑制する取り組みを民間主導で進める「日本健康会議」が、発足から1年間の活動報告会を都内で開き、2020年までに実現を目指す8項目の目標について2016年度の状況を発表した。同会議が800市区町村以上を目標に掲げている「生活習慣病の重症化予防」は、118市区町村が実施し、目標達成率は14%であることが分かった。
民間組織が連携し「生活習慣病の重症化予防」を推進
「日本健康会議」は、経済団体・保険者・自治体・医療関係団体など民間組織が連携し、厚生労働省・経済産業省の協力のもと、国民の健康寿命の延伸と、医療費適正化に向けて、実効的な活動を行うことを目的とした団体。
各組織が連携し、問題解決に向けた具体的な活動を行い、その成果をホームページなどで継続的に公開している。勤労世代の健康増進と高齢者の就労・社会参加を促進し、経済の活性化にもつなげることを目指している。
同会議の実行委員には、日本経済団体連合会の榊原定征会長、健康保険組合連合会会長の大塚陸毅氏、全国健康保険協会の小林剛理事長、日本医師会の横倉義武会長、日本糖尿病学会の門脇孝理事長、日本看護協会の坂本すが会長ら計32人が名を連ねる。
同会議が目的としているのは下記の4項目――・保険者とかかりつけ医などの連携による生活習慣病の重症化予防
・事業主と保険者などの連携による健康経営の普及促進
・健康増進活動を支援する事業者の支援・育成
・健康寿命延伸および医療費適正化に資する取り組みの推進
重症化を防ぎ糖尿病からの人工透析を減らすために
目標のひとつとして、糖尿病の重症化で人工透析になると医療費が増加するため、「かかりつけ医などと連携して生活習慣病の重症化予防に取り組む自治体を800市町村に増やす、その際、糖尿病対策推進会議などの活用を図る」を掲げている。現段階で118自治体が実行しており、達成率は14%だった。
「健保組合等保険者と連携して健康経営に取り組む企業を500社以上とする」という目標は、138社が実行しており、達成率は27%だった。
「協会けんぽなどの保険者のサポートを得て健康宣言などに取り組む企業を1万社以上とする」という目標は、2,970社が実行しており、達成率は29%だった。
一方で、「予防・健康づくりに向けて47都道府県の保険者協議会すべてが、地域と職域が連携した予防に関する活動を実施する」という目標は、達成率は0%だった。
「加入者自身の健康・医療情報を本人に分かりやすく提供する保険者を原則100%とする。その際、情報通信技術(ICT)等の活用を図る」という目標については、市町村国保(69%)、国保組合(12%)、健保組合(34%)、協会けんぽ(97%)、共済組合(18%)という達成率だった。
「全団体が実施」を目標にしている価格の安いジェネリック医薬品(後発薬)の使用割合を高める取り組みは、市町村国保(4%)、国保組合(1%)、健保組合(8%)、協会けんぽ(62%)、共済組合(15%)という達成率だった。
保健・医療が一体となり糖尿病対策を推進
塩崎恭久厚生労働相は「勤労世代の健康増進および高齢者の就労・社会参加を促進すれば、経済の活性化にもつなげられる。関係各所が連携し課題解決に向けた具体的な活動を行い、その成果を継続的に可視化させることが重要だ」と強調。
「日本健康会議」の活動報告会では、全国の自治体や企業が、先進的な取り組み事例を発表した。
島根県海士町は、保健・医療が一体となり糖尿病対策を推進している。1990年から本格的な糖尿病対策をスタートし、地元診療所と協力して町民の糖尿病の実態を調査し、管理台帳を作成しているほか、調理実習や試食会を取り入れた糖尿病教室、運動教室などを定期的に開催している。
年1回実施する糖尿病健診では、県内外の糖尿病専門医・眼科医・神経内科医・歯科医と連携をはかり、合併症を含めた総合的な健診を行っている。健診による早期発見、糖尿病外来相談に加え、食事・運動指導を中心とした初期教育を徹底し、糖尿病の一次・二次・三次予防を進めている。
保健と医療、地域医療と専門機関が連携した患者管理システムの構築により、住民の知識は深まり、健康な町づくりへの取り組みが定着。糖尿病患者の脳梗塞や心筋梗塞による死亡率は低下した。
地域・職域・保険者の枠を超えて連携
全国健康保険協会(協会けんぽ)大分支部は、健康経営の普及を目指し、「一社一健康宣言」事業に取り組んでいる。登録した事業者には、従業員ひとりひとりがインターネットで個人に合った健康情報を利用できる「QUPiO」を提供するなどして、事業所が主体となる健康づくりへの取り組みを支援している。2013年からスタートし、7月現在で546事業所が登録している。
山梨県南アルプス市は、健診事業者との協働体制で総合健康診断を実施。健診会場にて、健診結果の返却方法に関するチラシを配布している。健診結果で指導が必要な者に対してはハガキで通知を行い、予防・対策に向けて、保健部門と国保部門で連携を図り、面談での説明会を開催している。
面談時には、健診結果の見方を分かりやすく説明した上で、口頭で指導を行う。加えて、健診結果の読み方や病気に関する豆知識、食事・運動習慣のアドバイスなど読みやすい形でまとめたチラシを手渡し、市民の生活習慣改善につなげている。
長崎県保険者協議会は、県内の健康課題や地域特性に応じた効果的な事業を行うために、専門部会を中心に、地域・職域・保険者の枠を超えて連携し、保険運営の安定化を目指している。
主な活動として、医療費分析や情報収集を行う「企画分析部会」、保健事業の共同実施などを検討する「保健事業部会」の2つの専門部会を運用。各医療保険者の知見を結集し支援活動を行っている。
生活習慣病対策のための人材育成 事業所の健康づくりを支援
サンスター健康保険組合は、服用する薬情報をウェブ上で見られる「健康情報貯金箱・お薬情報玉手箱」を活用し、従業員の健康状態の認識と改善を推進し、ジェネリック医薬品への変更を支援している。
従業員とその家族の健診結果・医療費のお知らせ・お薬手帳などの健康情報をウェブアカウント上で一元管理。これまで紙でバラバラに保存していた情報をひと目で確認できるだけでなく、経年変化もチェックできる。また、薬をジェネリック医薬品に変更した場合の差額や効果を提示し、使用を促進している。
薬の飲み方に関する知識や健診結果の解説ページ、飲み忘れ防止のアラームなどさまざまな情報を提供し、従業員の健康維持と向上に役立ている。
長崎県国民健康保険団体連合会は、地域・職域の保健指導に従事する技術職、事務職それぞれに向けた健診・保健指導プログラム研修会を年1回開催。生活習慣病対策のための人材育成にも力を入れている。加えて、企業の管理栄養士や保健師などの実務者を対象とした研修会を年3回行い、課題共有とより効果的な活動を推進している。
全国健康保険協会(協会けんぽ)福島支部は2015年より「健康事業所宣言」事業をスタート。健診や保健指導の実施に加え、高血圧対策・禁煙対策など4種類のプランから選択した取り組みを通じて、事業所の健康づくりを支援している。
エントリー事業者には、健診の結果をまとめた「事業所健康度レポート」を発行。メタボ・血圧・代謝など6つの項目に分け、生活習慣病リスクを数値化。同業態や全国の平均とも比較できるようにして、健康度を明示している。同事業は県との共催で実施。県が進める「福島県次世代育成支援企業認証」制度のポイント加算なども行っている。
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