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膵臓がんを早期発見 わずかな血液で判定 新技術の実用化に成功
2016年08月03日

金沢大学発のバイオベンチャー「キュービクス」は、少量の採血だけで膵臓がんを見つけ出す新たな検査手法を開発し、金沢大学付属病院などと共同で臨床試験に取り組んでいる。
わずかな血液で膵臓がんを早期発見できる
膵臓がんに対する関心が高まっている。大相撲の第58代横綱、千代の富士の九重親方は膵臓がんのため死去した。
日本では毎年3万人以上が膵臓がんで亡くなっている。膵臓は体の深部に位置し、胃や腸など他の臓器に囲まれており、がんが発生しても見つけるのが難しい。また、早い段階では特徴的な症状もない。そのため、胃がんや大腸がんのように早期のうちに見つけることは難しく、膵臓がんとわかったときにはすでに進行していることが多い。
金沢大医薬保健研究域の金子周一教授らが開発した膵臓がんを血液で診断する新たな検査キットは、がんの有無を血中にあるRNAという物質の量の変化を遺伝子レベルで測定する「マイクロアレイ血液検査」法を応用している。
体の中に異物が入ってきたり、がん細胞ができると、体が反応しそれを排除しようとする。血液からの排除信号をとらえ、そのもとになるRNAの働き方のパターンを数値化して、がんを発症しているかを判定するのがマイクロアレイ血液検査。
具体的には、採取した血液からRNAを抽出し試薬を混ぜる。特殊な装置に入れて温度を変化させることでRNAを増やし、一定以上の数値を超えたら膵臓がんにかかっていると判定する仕組みだ。
キュービクスは2004年に設立され、医療関連機器や診断薬の開発を手がけている。がんの検査手法の開発にも力を入れ、この検査法を実用化した。
この検査方法であれば、CT(コンピュータ断層撮影)、MRT(磁気共鳴画像)、PET(陽電子放射断層撮影)でさえも見つけられない早期のがんを発見することができる。
9割の精度でがんを発見 がん検診の受診率向上につなげる
2.5ccの血液を採取するだけで、3日程度で、すい臓がん、胆管がん、胃がん、大腸がんなどの消化器系がんをおよそ9割の精度で発見できるという。
すでに膵臓がん患者50人と非がん患者100人を対象とした臨床試験に取り組んでおり、今年度中に終了する予定だ。欧州や米国でも大きな反響をよび、現在導入を目指した共同研究もはじまっている。
検査費用は1回当たり3万~3万5,000円を見込み、2019年中の実用化を目指している。
現在のがんの検診には、身体的負担、時間的拘束といった課題があり、検診率が伸び悩んでいる。この検査方法であれば、血液だけの検査のため課題を解決でき、がん検診の受診率向上をはかれると期待されている。
金沢大学大学院先進予防医学研究科(システム生物学分野)キュービクス
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