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「不妊治療」の助成を拡充 産みたい女性を支援 国や自治体の取り組み

 政府は出生率改善の対策として、不妊治療支援の拡充をはかっており、不妊治療の経済的負担を軽減するため、4月から不妊治療への助成の対象を大幅に変えた。初回の助成額が倍増するなどした一方で、年齢制限を設けた。妊娠や出産できる確率が高い若い人が、治療を受けやすくする狙いがある。
不妊治療のネックとなっているのは「費用」
 「不妊」とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しないものをいう。日本産科婦人科学会は、この「一定期間」を「1年」と定めている。

 厚生労働省の「出生動向基本調査」(2010年)によると、不妊の心配をしたり、検査や治療経験のある夫婦は27.6%。検査や治療の経験がある(治療中を含む)割合は16.5%に上る。

 晩婚化などを背景に、不妊治療の実施件数は増加している。日本産科婦人科学会の調査によると、日本で体外受精や顕微授精などの生殖補助医療(ART)によって生まれた子供は、2012年は年間3万7,953人に上った。また、日本でARTにより生まれた子供は累計で34万1,750人に上る。

 子どもを望む夫婦にとって、不妊治療のネックとなっているのは「費用」だ。体外受精の1回の費用は30~50万円程度とされ、保険はきかない。

 経済的な理由がネックとなり、不妊治療を諦める人も少なくない。そこで、政府は2004年度に助成制度を導入した。不妊治療の費用を助成する国の制度は今年から大幅に変わった。

 対象となるのは、体外受精などの高度な不妊治療が必要な夫婦。2人の合算の所得が730万円未満であることが条件となる。

 2014年4月以降、新たに助成制度を利用する人のうち、はじめて助成を受ける際の治療開始時の妻の年齢が40歳未満の場合、年間助成回数と通算助成期間の制度は廃止され、通算助成回数は6回までとなる。

不妊治療の助成拡大 初回15万円から30万円に倍増
 国の助成では、助成限度額は1回15万円だが、初回の治療に限って30万円に引き上げられた。男性の治療も行えば最大15万円をさらに上乗せして助成する。

 また、特定不妊治療のうち精子を精巣または精巣上体から採取するための手術を行った場合は、凍結杯移植を除いて、1回15万円まで助成する。

 一方、治療開始時の女性の年齢が43歳以上は対象外となった。助成を受けられる通算回数も、40~42歳なら3回となった。従来の助成制度では年齢にかかわらず、助成回数は10回までだった。

 制度が見直されたのは、加齢とともに卵子の老化が進むなどし、出産に至る確率が下がるためだ。日本産科婦人科学会によると、体外受精1回あたりの出産率は、31歳までは20%程度あるものの、37歳では14.2%、40歳では7.7%、45歳では0.6%となっている。

 一方で、もっとも多く不妊治療を受けた患者の年齢は40歳。患者が高齢になるほど治療成績は下がり、反対に流産率は上がる。

 厚生労働省は「治療が長期化すると心身の負担が大きくなる。生殖適齢期にある出産に至る確率が高い人が必要な治療を受けられるようにした」と狙いを説明する。
8割が経済的な負担を理由に治療を中断
 新制度について、不妊体験をもつ人のセルフ・サポートを支援するNPO法人「Fineファイン」が2013年に公表した調査では、不妊治療の経済的負担について、もっとも多かったのは「100万~200万円未満」(24.8%)。次いで「10万~50万円未満」(18.8%)、「50万~100万円未満」(17.6%)と続く。遠方の医療機関で治療を受ける人も多く、交通費や宿泊費もかさむ。

 同調査では、経済的な負担が理由で高額の治療を受けることを躊躇した、あるいは延期などをしたことがある人は81.0%に上った。

 「Fineファイン」は「現行の助成制度で通算の助成回数が減らされたのは残念だ。現状では6回以上の治療を受けている人も多いので、もっと助成回数を増やしてほしい。現代では不妊治療を行なう施設の増加や自治体による相談窓口の設置など、受診や相談もしやすくなっている。男性の不妊治療を含め、広く社会の理解が必要だ」と述べている。
独自の助成制度を設けている自治体も
 独自の助成制度を設けている自治体もある。東京都は「東京都特定不妊治療費助成」を設けている。

 国の規定は「治療ステージA(新鮮胚移植を実施)」と「治療ステージB(凍結胚移植を実施)」がともに15万円なのに対し、東京都は治療ステージAで20万円、治療ステージBで25万円まで助成する。

 さらに2015年4月から「精巣内精子生検採取法等に係る医療費助成」を開始し、特定不妊治療の一環で行われる精巣内精子生検採取法(TESE)、精巣上体内精子吸引採取法(MESA)などの費用の一部を助成している。

 東京福祉保健局のホームページでは助成を受けるのに必要な申請書や提出前のチェックシートのダウンロードもできる。

 さらに、区市町村によっては、独自に助成制度を設けている自治体もある。港区は「年間で最大30万円、通算5年で150万円」の助成を行っている。

不妊治療に関する取組み(厚生労働省)
NPO法人Fine(ファイン) 現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会
東京都特定不妊治療費助成(東京都)
日本生殖医学会 生殖医療専門医
[Terahata]
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