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女性のがん死亡数は15年で550万人に増加 女性のがん対策は社会の義務

 女性のがんによる世界の年間死者数は2030年までに550万人に増加するという予測を、米国がん学会(ACS)などが報告書にまとめた。これは、日本でみると、兵庫県や北海道の人口に相当する数だ。女性のがん死亡数は今後15年で60%近く増加するという。
女性のがん死亡数は2030年までに年間550万人に増加
 報告書「女性のがんの世界的な負担」は、フランス・パリで10月~11月に開催された「世界がん会議」で発表された。  女性のがんの増加に影響しているのは人口増加と高齢化だが、特に途上国では若い女性でもがんが増えている。女性のがんによる死亡の大半が成年期と中年期に起きており、その死亡数は心臓疾患に次いで多いが、多くは早期発見して治療をすれば防げるという。

 先進国では女性に多いのは「乳がん」「結腸直腸がん」「肺がん」で、死亡原因の第3位になっている。途上国ではこれらのがんに加えて、「子宮頚がん」も増えている。女性のがんが増えた要因は、▽経済成長に伴う運動不足、▽不健康な食事、▽肥満率の増加、▽出産年齢の上昇と高齢化だ。

 「女性のがんは、患者や家族にとって重い負担となりますが、医療財政にも大きな損失をもたらします。女性に多いがんは早期発見し治療をすれば、進行を抑えることができます。そのために検査と医療の体制を整備する必要がありますが、特に途上国では対応が遅れています」と、米国がん学会の世界保健部門を統括するサリー コーワル氏は言う。

 2012年には世界で670万人がんを発症し、350万人が死亡した。発症例の56%と死亡例の64%は途上国に集中しており、特にアジアで多い。中国では2012年に170万人がんを発症し100万人が死亡したという。
乳がんと子宮頸がんへの対策が遅れている
米国がん学会「女性のがんの世界的な負担」
 特に発症が増えているのは乳がんで、2015年には世界で170万人が発症し、2030年までに320万人に倍増すると予測されている。乳がんによる死亡を減らすために鍵となるのは検査による早期発見だ。画像診断によるスクリーニング、生検による確定診断に加えて、外科療法などの治療をタイムリーに受けられるよう医療体制を整備することが望まれる。

 途上国では、先進国で主流となっている化学療法(抗がん剤)や分子標的療法などの効果な治療を普及させるのは難しいが、乳がん患者の大半を占めるエストロゲン受容体が陽性なタイプに対しては、エストロゲンを減らすタモキシフェンなどの抗エストロゲン薬が効果的だ。これらに薬剤は比較的安価なので、途上国でも普及できる可能性がある。

 また、子宮頸がんも女性に増えているがんで、途上国では発症数が2030年までに25%以上増えると予測されている。ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種により効果的に予防できるので、積極的に勧められるが、途上国にはワクチン接種が行われていない地域が多い。
女性のがんがもたらす社会的損失は大きい
 女性は社会の柱であり、女性のがんがもたらす損失は大きい。報告者では女性のがんによる経済的損失は2009年に3.2兆円(286億ドル)に上り、米国だけでも9,200億円(82億ドル)に上ると推計されている。

 「女性のがんを早期発見し、発症した場合は安全で効果的な医療ケアを受けられるよう、政府は医療体制の拡充に力を入れるべきです。がん治療の医療費は年々増加していますが、女性のがんを早期発見し診断するための検査の費用は高額ではなく、政府にとって効果的な投資となります」と、コーワル氏は指摘する。

 「女性の命を救うことは、患者や家族にとって大きな意義があるだけではなく、公共・民間を問わず社会にとって義務となっています」と強調している。

Global Burden of Cancer in Women(米国がん学会)
女性のがん(米国がん学会)
[Terahata]
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