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女性のがん死亡数は15年で550万人に増加 女性のがん対策は社会の義務
2016年12月01日

女性のがんによる世界の年間死者数は2030年までに550万人に増加するという予測を、米国がん学会(ACS)などが報告書にまとめた。これは、日本でみると、兵庫県や北海道の人口に相当する数だ。女性のがん死亡数は今後15年で60%近く増加するという。
女性のがん死亡数は2030年までに年間550万人に増加
報告書「女性のがんの世界的な負担」は、フランス・パリで10月~11月に開催された「世界がん会議」で発表された。
女性のがんの増加に影響しているのは人口増加と高齢化だが、特に途上国では若い女性でもがんが増えている。女性のがんによる死亡の大半が成年期と中年期に起きており、その死亡数は心臓疾患に次いで多いが、多くは早期発見して治療をすれば防げるという。
先進国では女性に多いのは「乳がん」「結腸直腸がん」「肺がん」で、死亡原因の第3位になっている。途上国ではこれらのがんに加えて、「子宮頚がん」も増えている。女性のがんが増えた要因は、▽経済成長に伴う運動不足、▽不健康な食事、▽肥満率の増加、▽出産年齢の上昇と高齢化だ。
「女性のがんは、患者や家族にとって重い負担となりますが、医療財政にも大きな損失をもたらします。女性に多いがんは早期発見し治療をすれば、進行を抑えることができます。そのために検査と医療の体制を整備する必要がありますが、特に途上国では対応が遅れています」と、米国がん学会の世界保健部門を統括するサリー コーワル氏は言う。
2012年には世界で670万人がんを発症し、350万人が死亡した。発症例の56%と死亡例の64%は途上国に集中しており、特にアジアで多い。中国では2012年に170万人がんを発症し100万人が死亡したという。
乳がんと子宮頸がんへの対策が遅れている

女性のがんがもたらす社会的損失は大きい
女性は社会の柱であり、女性のがんがもたらす損失は大きい。報告者では女性のがんによる経済的損失は2009年に3.2兆円(286億ドル)に上り、米国だけでも9,200億円(82億ドル)に上ると推計されている。
「女性のがんを早期発見し、発症した場合は安全で効果的な医療ケアを受けられるよう、政府は医療体制の拡充に力を入れるべきです。がん治療の医療費は年々増加していますが、女性のがんを早期発見し診断するための検査の費用は高額ではなく、政府にとって効果的な投資となります」と、コーワル氏は指摘する。
「女性の命を救うことは、患者や家族にとって大きな意義があるだけではなく、公共・民間を問わず社会にとって義務となっています」と強調している。
Global Burden of Cancer in Women(米国がん学会)女性のがん(米国がん学会)
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