ニュース

「脳卒中と心臓病、死亡数を5%低下」 21学会が5ヵ年計画を発表

 脳卒中と循環器病の死亡率を5%減らし、健康寿命を延伸させることを目標とする5ヵ年計画を、日本脳卒中学会と日本循環器学会が発表した。日本糖尿病学会など関連19学会の協力を得て策定した。「脳卒中・循環器病対策基本法」の法制化を求める活動も進める。
脳卒中、心臓病死を5%減、健康寿命を延伸

 厚生労働省の2015年の調査によると、心筋梗塞や心不全などの心臓病は日本人の死因の2位で、脳卒中は4位。高齢者の死亡原因を見ると両者を合わせた死亡数はがんに匹敵する。

 脳卒中と循環器病の多くは、2型糖尿病や高血圧など生活習慣病が原因となり起こる動脈硬化を基盤とする疾患である点が共通している。

 一度発症すると患者の生活の質(QOL)を大きく低下させ、介護が必要となる主たる原因の4分の1を占めている。さらに、両疾患は国民医療費の20%を占めており、超高齢社会に向けた医療改革を考えるうえで、緊急に取り組まなければならない重要課題となっている。

 5ヵ年計画では、脳卒中と循環器病による年齢調整死亡率を5年で5%、10年で10%低下させ、健康寿命を延伸させることを目標としている。

 脳卒中、心不全、血管病(急性心筋梗塞、急性大動脈解離・大動脈瘤破裂、末梢閉塞性動脈疾患)を重要3疾病として位置付け、それぞれについて課題を掲げた。
医療体制を充実 切れ目ない医療と介護を受けられるように
 医療体制の充実のため、発症直後に適切に対応するため、患者を速やかに医療機関に救急搬送できる仕組みをつくる。24時間365日外科的治療も可能な「包括的センター」を核に、専門の医師がいる「1次センター」を整備し、ネットワーク化を進める。

 同時に、地域において急性期、回復期、慢性期の施設、さらには在宅療養に至るまで切れ目ない医療と介護を受けることができる体制を構築する。

 脳卒中や急性心筋梗塞などを発症した患者を、速やかに適切な急性期医療機関に救急搬送できる体制を構築する必要もある。

 急性期について、脳卒中については、発症から4.5時間以内に「rt-PA」治療開始が可能な体制を構築し、器病については、救急隊の発症現場到着から2.5時間以内に心臓カテーテル治療を含む「冠動脈インターベンション」の実施率10%の実現を目指す。

 急性期病院から地域医療・在宅医療に至るまで、切れ目のない運動リハビリテーション、食事、運動などの生活指導、メンタルケア、カウンセリングを含めた包括的リハビリテーション、さらには生活環境整備を含めた社会的支援が必要であり、多職種による介入を早期から継続的に行う。
地域包括支援センターを整備 全国の患者を登録してデータを収集
 また、脳卒中や循環器病の患者を地域で診るためには、各地域において医療と介護の統合を進める必要があり、地域包括支援センターが介護だけではなく医療を統合した機能を持ち、多職種、多機関を地域で総括的にマネージメントする役割を果たす必要がある。

 地域医療や在宅医療では、慢性期を診る地域の病院や専門クリニック、在宅医、訪問看護、かかりつけ薬局、介護施設などが連携し、患者一人ひとりの生活環境にあった医療・介護が受けられるような体制をつくることが必要とした。

 がん登録のような全国の患者を登録して基本的なデータを集めることも盛り込んだ。

 循環器病ついては、循環器診療の実態を調べた研究「JROAD」などをもとに、脳卒中については、脳卒中の救急医療や地域医療に関する研究「J-ASPECT」や、「日本脳卒中データバンク」を基盤に、全国規模の登録システムを確立する。これにより、全国の疾患別の罹患率、致死率などがデータ化され、医療の質の向上をはかれる。
予防や国民への啓発も強化 人材も育成
 予防や国民への啓発では、病態や病期に応じた4つのステージを設定し、ステージごとに達成目標と対策を掲げた。

 具体的には「喫煙率を19%から15%へ減少」「1日の食塩摂取を2グラム減少」「多量飲酒者(アルコール換算1日60グラム)の割合を10%減少」「運動習慣がある人の割合を倍増」「収縮期血圧を2ミリHg下げる」などの目標を掲げている。
 目標を達成するために専門医や医療専門職の育成のみならず、幅広い人材を育成していく必要がある。

 具体的には、「地域包括ケア・在宅医療の普及をリードする人材」「チーム医療のリーダーとなる人材」「臨床研究推進を担う人材」「医療イノベーションを担う人材」「医療行政との架け橋となる人材」「基礎研究を担う人材」「教育的人材」及び「市民への啓発活動を担う人材」について、育成の強化、拡充を支援する。

 こうした計画実現には国の関与が欠かせない。医療・介護体制の整備を実現するために、都道府県がまとめる第7次医療計画に反映されるよう求めていく。また、事業の全国的な展開を押す進めるためには「脳卒中・循環器病対策基本法」の制定も必須となるので、関連団体とともに法制化への取り組みを進める。

脳卒中と循環器病克服5カ年計画 ストップCVD(脳心血管病) 健康長寿を達成するために!(日本脳卒中学会)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2025年08月21日
歯の本数が働き世代の栄養摂取に影響 広島大学が新知見を報告
2025年07月07日
子供や若者の生活習慣行動とウェルビーイングの関連を調査 小学校の独自の取り組みを通じた共同研究を開始 立教大学と東京都昭島市
2025年06月27日
2023年度 特定健診の実施率は59.9%、保健指導は27.6%
過去最高を更新するが、目標値と依然大きく乖離【厚労省調査】
2025年06月17日
【厚労省】職域がん検診も市町村が一体管理へ
対策型検診の新項目はモデル事業で導入判断
2025年06月02日
肺がん検診ガイドライン19年ぶり改訂 重喫煙者に年1回の低線量CTを推奨【国立がん研究センター】
2025年05月20日
【調査報告】国民健康保険の保健事業を見直すロジックモデルを構築
―特定健診・特定保健指導を起点にアウトカムを可視化
2025年05月16日
高齢者がスマホなどのデジタル技術を利用すると認知症予防に 高齢者がネットを使うと健診の受診率も改善
2025年05月16日
【高血圧の日】運輸業はとく高血圧や肥満が多い 健康増進を推進し検査値が改善 二次健診者数も減少
2025年05月12日
メタボとロコモの深い関係を3万人超の健診データで解明 運動機能の低下は50代から進行 メタボとロコモの同時健診が必要
2025年05月01日
ホルモン分泌は年齢とともに変化 バランスが乱れると不調や病気が 肥満を引き起こすホルモンも【ホルモンを健康にする10の方法】
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶