ニュース

家を改修すると血圧が下がる? 断熱化すると室温が上がり血圧が低下

 住宅を改修して断熱化して、冬季の室温が上がると、それに伴って居住者の血圧が下がる傾向にあることが、国土交通省が実施した調査で明らかになった。
 高齢者ほどこの傾向は強くなり、断熱改修が省エネに役立つだけでなく、健康にも良い影響を及ぼすことが示された。
住宅を断熱化すると血圧が低下
 国土交通省は、住宅の壁や窓を断熱化して室温を上げると血圧が低下する傾向がみられるとの調査結果を発表した。高齢者を中心に、冬の起床時に室温が低いほど血圧が高くなることも判明した。

 血圧の上昇は心筋梗塞や脳卒中などの死亡率の高い疾患のリスクになる。健康日本21では、収縮期血圧を4mmHg低下すると、循環器疾患死亡者数が1万5,000人減少すると推計している。

 同省は、「高齢者ほど室温低下による血圧の上昇が大きくなるため、室温が低くならないように注意することが大切だ。窓ガラスを複層ガラスに取り換えたり、壁に断熱材を入れたりするなど、住宅リフォームを推進すると効果的」と呼びかけている。
住宅の断熱化と健康への影響に関する調査
 調査は、住宅の断熱性能と居住者の健康との関連を探ることを目的に、2014年度から4年間の予定で実施。

 冬の2週間、2,759人(平均年齢57歳)を対象に、住宅の室温や居住者の血圧を連日測定した。

 その結果、起床時の室温が低いほど血圧が高くなる傾向が認められた。また、高齢者ほど室温低下による血圧の上昇が大きくなった。

 高齢者は寒さによる刺激の影響を受けやすく、血管の収縮による血圧上昇をまねきやすい。断熱による刺激が小さくなり、血圧が低くなったとみられる。

 また、冬の起床時の室温と血圧の関係を1,753人分のサンプルを用いて調べたところ、室温がふだんより10度低くなると最高血圧が7.3mmHg高くなることが分かった。

 年齢が10歳上がると血圧の上昇幅は8.8mmHgとより大きくなり、高齢者ほど住宅の室温低下に注意が必要であることが明らかになった。

 さらに、165人を対象に断熱改修前後の室温と血圧の変化を調べたところ、断熱化で室温が平均2.7度上昇したのに対し、最高血圧は同1.0mmHg低下。室温が上がるほど血圧は下がる傾向がみられた。
1970年代の集合住宅は断熱性や気密性が低い
 東京都健康長寿医療センター研究所よると、1970年代に建てられた集合住宅の窓や壁を断熱性や気密性の高い状態に改修すると、冬場の床の温度は3度程度高くなる。

 国土交通省の2012年の推計によると、全国の住宅約5,000万戸のうち、断熱性能などを定めた国の基準を満たすのは6%たらずだという。

 欧州のフィンランドなどの寒冷な国では、断熱性能が良い省エネ住宅の普及が進み、冬季室温が低い住宅が多い。その結果、冬季の死亡増加率は10%に抑えられているという。

 日本でも欧州と同じ傾向がみられ、省エネ住宅が普及している北海道では冬季死亡増加率が少なくなっている。

 調査は、東京都健康長寿医療センター研究所などの研究チームによるもの。スマートウェルネス住宅等推進事業で、助成を受けて断熱化工事を実施した住宅を対象に、冬期2週間の家族の血圧、居間・寝室・脱衣所の温湿度、身体活動量の調査やアンケートなどを実施した。

住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する調査の中間報告(国土交通省 2017年1月13日)
冬場の住居内の温度管理と健康について(東京都健康長寿医療センター 2013年12月2日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2023年08月09日
8020達成率は5割以上 若い世代の歯周病増、口腔ケアが課題に
厚労省「令和4年歯科疾患実態調査」より
2023年08月08日
若い世代でも「脂肪肝疾患」が増加 やせていても体脂肪が蓄積 肥満とどう違う?
2023年07月28日
2022年度版「健診・保健指導施設リスト」状況を報告します【保健指導リソースガイド】
2023年07月24日
標準体重でも3分の1は実は「肥満」 BMIは健康状態をみる指標として不十分 やせていても安心できない
2023年07月11日
自治体健診で高齢者のフレイルを簡便に判定 「後期高齢者の質問票」でリスクが分かる 「フレイル関連12項目」とは?
2023年06月20日
肝臓学会が「奈良宣言2023」を発表 肥満・メタボの人は「脂肪肝」にもご注意 検査を受けることが大切
2023年06月12日
自治体健診で「心房細動」を早期発見 健康寿命と平均寿命の差を縮める 日本初の「健康寿命延伸事業」 大分県
2023年06月05日
要介護認定リスクと関連の深い健診6項目が明らかに 特定健診・後期高齢者健診のデータから判明 名古屋市
2023年05月19日
令和4年度「東京都がん予防・検診等実態調査」 受診者増加のための取組み率は健康保険組合で85%に上昇
2023年05月18日
さんぽセンター利用の5割以上「健診結果の措置に関する説明力が向上」
-『令和4年度産業保健活動総合支援事業アウトカム調査報告書』-
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶