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「生活不活発病」が熊本地震でも注目 「社会参加」「生きがい」で予防
2017年01月26日

心身の機能が低下する「生活不活発病」を新たに症状したり悪化させるケースが、熊本地震の発生により、被災した人の中に増えていると報告されている。「生活不活発病」を予防するために重要なのは、社会参加でいきいきとした充実した生活をおくることだという。
心身機能が低下し、生活活動が困難に
「生活不活発病」は、「生活が不活発」なことによって生じる全身機能の低下をさす。局所的な症状(拘縮、筋力低下、褥瘡、静脈血栓症など)だけでなく、全身的な症状(心肺機能低下)や知的活動低下、うつ症状などがあらわれることもある。
生活不活発病は「心身機能」「生活活動」「社会参加」が相互に関係し、悪化していくと考えられている。リスクの高い人では、まず心身機能全体が低下し、それにより生活活動が困難になる。そうなると、家庭内の役割や社会参加の範囲も狭くなり、さらに生活が不活発になるという悪循環に陥りやすい。
一般に高齢者は「生活が不活発」になりやすく、いったん生じると悪化しやすい。また、地震などの災害による環境の変化は、社会参加の阻害条件として大きく、生活機能低下につながりやすい。
「生活不活発病」は熊本地震でも問題に
2016年の熊本地震の後も、大分県の調査で「身体機能が低下した」と訴える高齢者が多数みつかった。「地震発生後、自宅建物の被害やライフラインの停止などにより、被災者は不便な生活を強いられる。避難所避難者のほか、自宅で不便な生活をおくる人も多い。高齢者は2週間動かずにいると体が衰えるので早めの対策が必要」と、大分県では注意を呼びかけている。
介護予防には、要介護(要支援)状態になることを予防するという意味がある。具体的には、運動機能向上や栄養改善、口腔機能向上、閉じこもりの予防などだ。
「介護予防というと、スポーツジムにあるようなマシーンを使って筋トレに励んでいる姿や、公民館やデイサービスなどで、みんなそろって体操やレクレーションをしている場面を思い浮かべる人が多いが、高齢者にとっては、生活が不活発にならないよう"生きがい"をもってもらうことも大切」と、大分県由布市の湯布院病院の衛藤宏氏は言う。
介護予防のキーワードは「生活」と「生きがい」で、これらを達成するために、「ウォーキングなどの運動機能や筋トレによる筋力の向上に加えて、"まだまだやれるじゃないか"と心のあり方を変えて自信をもち、"何かやってみよう"という社会参加につなげていくことが真の介護予防」としている。
「心身機能」「活動」「参加」の3つの要素

「社会参加が活発な状態」を目指す
生活機能上の問題は誰にでも起りうるものなので、ICFは特定の人々のためのものではなく、「全ての人に関する分類」となっている。社会参加の具体的な手段が生活動作であり、さらに、これらの生活動作は、さまざまな心身機能から成り立っている。
「生活不活発病」の提唱者であり、被災地での多くの調査などで注目されている大川弥生氏(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 ロボットイノベーション研究センター 招聘研究員)は、「生活不活発病の予防・改善のポイントは、"生活を活発化する"こと。いきいきと充実した、楽しい生活を送ることがポイントで、それが生活不活発病を予防・改善する手段であり、目的でもある。具体的には"社会参加"が活発な状態」と指摘する。
「生活不活発病を予防・改善するのは、その人が社会参加を通じて、いきいきと充実した生活を送ること」と、大川氏は強調している。
一連の熊本県熊本地方を震源とする地震による避難生活に伴う心身の機能の低下の予防について(厚生労働省)生活機能低下予防マニュアル~生活不活発病を防ごう~(障害保健福祉研究情報システム)
介護予防の考え方と対策(大分県)
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