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「脳梗塞発症リスク予測法」を開発 遺伝子検査で脳梗塞を予防
2017年01月26日
脳梗塞の発症リスクをゲノム情報(DNA配列)にもとづき予測する新しい方法を開発したと、岩手医科大学 いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)などが発表した。
脳梗塞発症リスクをDNA配列から予測
岩手医科大学 いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)などの研究チームは、東北地方に多い脳卒中に着目し、国内の多数のコホート研究・バイオバンクと共同で、ゲノム情報にもとづく脳梗塞の発症リスク予測法を確立した。
さらに、この予測法が脳梗塞の3つの病型全てでリスクを予測できることや、脳梗塞の発症リスクを高めるとされている生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動)の罹患と独立していることを明らかにした。
この手法を用いて1人ひとりが自身のリスクを知り、生活習慣の改善などに役立てることで、脳梗塞の予防に寄与できる可能性がある。また、糖尿病など脳梗塞以外のさまざまな疾患に応用することで、1人ひとりの体質に合わせた個別化医療・個別化予防の一助となることが期待できる。
研究は、IMM生体情報解析部門の清水厚志特命教授、八谷剛史特命准教授を中心とした研究チームによるもので、医学誌「Stroke」オンライン版に発表された。
ゲノムコホート研究で脳梗塞と関連の深い遺伝子を解明
脳卒中は日本人の死因の第4位、要介護原因の第1位で、その6割を占める脳梗塞の患者数は80万人に上り、年間6万5千人が死亡している。自分自身の脳梗塞のかかりやすさを知ることは、生活習慣の改善による予防(セルフメディケーション)につながる。
これまでも脳梗塞と関連の深い遺伝子多型を同定しリスクを予測しようとする研究が行われてきたが、これまでにみつかった遺伝子多型では発症リスクを十分に予測できていなかった。
IMMは、復興支援事業である東北メディカル・メガバンク計画の一環として、東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)とともに、岩手県・宮城県の被災地を中心とした大規模健康調査と「ゲノムコホート研究」を実施。
研究チームは、従来のゲノムワイド関連解析(GWAS:Genome Wide Association Study)による「どの遺伝子多型が発症と関連するか」というアプローチではなく、「すべての遺伝子多型をリスク評価に用いる」というリスク計算に重点を置いたアプローチをとる方針を立てた。
具体的には、動植物の品種改良に用いられていた遺伝統計による手法である多遺伝子モデル(polygenic model)を改良し、新規のリスク計算手法(iPGM:iwate polygenic model)を開発。このiPGMを用いて脳梗塞のリスク予測に取り組んだ。
このiPGMを用いて身長の推定や血中のタンパク質濃度の推定などを行い、高精度予測が可能であることを確認した上で、東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)、オーダーメイド医療の実現プログラム(BBJ)、九州大学・久山町研究(久山町)、多目的コホート研究(JPHC Study)、日本多施設共同コーホート研究(J-MICC)と連携して、脳梗塞のリスク予測に取り組んだ。
遺伝子によるオーダーメイド医療の実現へ
その結果、高リスク群では低リスク群と比べ脳梗塞発症のオッズ比が1.8~2.0倍であることが確認でき、研究チームが構築した方法で脳梗塞の発症リスクを予測できることが検証できた。
「今後、このリスク予測法の改良を進めて精度をさらに向上させれば、既知のリスク要因や生活習慣改善などと組み合わせ、個別化予防を実現できる可能性がある。さらに、これらの手法が生活習慣病、がん、うつなどの発症リスク予測にも役立つことが期待できる」と、清水特命教授は述べている。
「ゲノムコホート研究」は、ある特定の集団を一定期間にわたって追跡し、環境要因・遺伝的要因などと疾患との関係を解明することを目指す研究。日本では、東北メディカル・メガバンク計画(15万人)、多目的コホート研究(14万人)、日本多施設共同コーホート研究(10万人)などが行われている。
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