ニュース
赤ワインのポリフェノールで血管が柔らかく 糖尿病の動脈硬化も改善
2017年06月15日

赤ワインに含まれるポリフェノール「レスベラトロール」に、持続的な血管の柔らかさの改善などの健康効果があることが明らかになった。「レスベラトロール」は動脈硬化の進んだ2型糖尿病患者でも効果があるという。
赤ワインのポリフェノール「レスベラトロール」の効果
フランス人は肉などの飽和脂肪酸が豊富に含まれる食事を多く摂取しているにもかかわらず、冠状動脈性心疾患の発症が少ないことは、「フレンチパラドックス」として知られる。そのカギとなるのは赤ワインに含まれるポリフェノール「レスベラトロール」で、1990年代には赤ワインブームが起き、2000年代にはレスベラトロールが長寿遺伝子(サーチュイン)を活性化することが分かり注目を浴びた。
レスベラトロールに関しては、さまざまな研究がされているが、健常人で血管の健康効果を検証された例は少なく、また、血管の柔らかさについては、疾患者であっても瞬間的な効果だけで持続的な効果まで検証された例はなかった。
そこで、Rサイエンスクリニック広尾(東京都港区)の日比野佐和子院長らは今回の試験で、健常人がレスベラトロールを含有する赤ワインエキス末を摂取し続けて、持続的な健康効果(主に血管の柔らかさと脂質代謝を評価)が示されるのかを検証した。結果は医学雑誌「新薬と臨牀」に発表された。
「レスベラトロール」が血管を柔軟にする
その結果、赤ワインエキス末を1日当たり400mg(レスベラトロールとして20mg)摂取し続けたグループで血管の柔らかさの指標であるFMD値が正常値まで上昇し、12週間の赤ワインエキス末の摂取で血管の柔らかさが改善した。
血流依存性血管拡張反応(FMD)検査は、カフで腕を締めた後の血流増大によるずり応力により、血管拡張物質である一酸化窒素(NO)が血管内皮からどれだけ放出されたかを診る検査。管内皮機能が低下しているとNOの産生が少なくなり、FMD値は低下する。
試験ではレスベラトロールを含有する赤ワインエキス末を用いて1日当たり20mgの低用量レスベラトロール(被験食品群)と160mgのオリゴメリックプロアントシアニジン(プラセボ群)を健常人に12週間摂取させ、検査まで12時間以上のウォッシュアウトタイムを設け、血管柔軟性および脂質代謝に対する持続的な効果を評価した。
その結果、被験食品群とプラセボ群との間でFMD値の有意差(P=0.043)が認められ、血圧の降下傾向が示された。その被験食品群のFMD値は、5.1±2.3%から6.8±2.1%と、摂取前のFMD平均値は約30%増加し、正常値目安の6.0%を超える平均6.8%へ改善した。赤ワインエキス末による血管柔軟性の持続的な改善効果ならびに血圧の改善傾向が示された。脂質代謝に関しては、被験食品群においてわずかな皮下脂肪の増加抑制の傾向が認められた。
「これまでも赤ワインの健康効果を雑誌などで紹介してきましたが、この度、アルコールが含まれていない赤ワインポリフェノールで健康効果を示すことができました。アルコールが苦手な方でも毎日赤ワインの健康効果を楽しめると思います」と、日比野佐和子院長はコメントしている。
動脈硬化の軽減効果を2型糖尿病患者でも確認
赤ワインに含まれるレスベラトロールには、2型糖尿病患者の動脈硬化を軽減する効果があることも明らかになった。これは米国腎臓病学会(AHA)のサイエンス セッションで発表された研究だ。
「レスベラトロールは、2型糖尿病の患者さんにおいても、大動脈の構造変化を促し、血管の弛緩を減少させ動脈硬化を改善することが分かりました。これは、特に2型糖尿病や肥満の人に加齢とともに起こる血管異常を治す方法があるという研究成果を裏付けるものです」とボストン医科大学院の血管生物学部のナオミ ハンブルク氏は語る。
今回の研究では、ボストン大学の研究者グループはまず、研究開始時に動脈硬化が認められた2型糖尿病患者57人の大動脈の硬化度を測定した。次に毎日100mgのレスベラトロールを2週間摂取してもらった。その後、300mgのレスベラトロールを2週間摂取してもらい、最後にプラセボ(偽薬)を4週間飲んでもらうという研究を実施した。
その結果、硬化度の高かった人は、300mgのレスベラトロールを摂取すると、動脈硬化が9.1%改善した。100mgの場合では4.8%改善し、プラシーボの場合では逆に増加したという。また、研究開始時に大動脈が硬化していなかった人には、こうした効果はみられなかった。
Rサイエンスクリニック広尾Compound in red wine may reduce artery stiffness in diabetics(米国心臓学会 2017年5月4日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「健診・検診」に関するニュース
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
- 2025年02月17日
- 働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
- 2025年02月12日
-
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より - 2025年02月10日
- 【Web講演会を公開】毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」2025年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」
- 2025年02月10日
- [高血圧・肥満・喫煙・糖尿病]は日本人の寿命を縮める要因 4つがあると健康寿命が10年短縮
- 2025年01月23日
- 高齢者の要介護化リスクを簡単な3つの体力テストで予測 体力を維持・向上するための保健指導や支援で活用
- 2025年01月14日
- 特定健診を受けた人は高血圧と糖尿病のリスクが低い 健診を受けることは予防対策として重要 29万人超を調査
- 2025年01月06日
-
【申込受付中】保健事業に関わる専門職・関係者必携
保健指導・健康事業用「教材・備品カタログ2025年版」 - 2024年12月24日
-
「2025年版保健指導ノート」刊行
~保健師など保健衛生に関わる方必携の手帳です~ - 2024年12月17日
-
子宮頸がん検診で横浜市が自治体初の「HPV検査」導入
70歳以上の精密検査無料化など、来年1月からがん対策強化へ