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フレイルの高齢者、自立喪失リスクが約2.4倍に上昇 健康長寿医療センター
2017年11月22日

東京都健康長寿医療センターは、フレイルが日本人高齢者の中長期的な自立喪失(要介護発生または死亡)の危険因子であることを、高齢者約1,500人の7年間追跡した調査で明らかにした。
加齢に伴う心身の活力の低下「フレイル」
近年、健康余命への影響因子として、疾病や身体的健康度のみでなく、加齢とともに心身の活力が低下し、要介護状態などの危険性が高まる「フレイル」も注目されている。
フレイルとは、「加齢とともに心身の活力(例えば筋力や認知機能など)が低下し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの危険性が高くなった状態」を指す。
これまでに、欧米諸国の複数の追跡研究で、フレイルが生活機能障害や死亡のリスクを上昇させることが示唆されているが、日本人高齢者を対象とした追跡研究は少なく、フレイルの中長期的な予後は明らかになっていなかった。
自立喪失の発生率 前期高齢者で約3.4倍、後期高齢者で約1.7倍
研究グループは、群馬県草津町の高齢者約1,453人の平均7年(最大12年)の追跡研究により、フレイル、メタボリックシンドロームなどの諸因子による、要介護発生または死亡の自立喪失のリスク上昇の程度を調査した。
その結果、男女ともにフレイル群、プレフレイル群はフレイル無し群と比較して、自立喪失の発生率は有意に高率だということが判明した。
統計解析の結果、フレイル無し群に対し、フレイル群では自立喪失の発生リスクは約2.4倍と推定された。また、前期高齢者と後期高齢者に分けた場合、フレイル群の自立喪失発生リスクは、前期高齢者で約3.4倍、後期高齢者で約1.7倍となり、前期高齢者の方が自立喪失におよぼすフレイルの影響がより大きいことが明らかとなったという。
今回の研究では、日本人高齢者のフレイルが健康余命のエンドポイントである自立喪失に大きく影響していることを明らかになった。フレイルを改善するための運動、栄養、社会参加などからなる介入研究の知見が積み重なりつつある現状をふまえると、フレイル進行の先送りを図るための働きかけを組織的に進めることは、高齢者の健康余命延伸の効果をもたらす可能性が高いと考えられるという。

メタボリックシンドロームの影響は認められず
一方、健康寿命延伸のためには生活習慣病の予防も重要だと考えられているが、メタボリックシンドロームと健康余命との関連についてはよく分かっていない。
研究では、メタボリックシンドローム区分と自立喪失発生率との間には一定の関連は認められず、自立曲線にも明らかな差はみられなかった。
メタボリックシンドロームに関しては、循環器疾患発生の危険因子としての意義は確立されている。したがって、メタボリックシンドロームの予防は、要介護発生の大きな原因である脳卒中の予防に結びつくことから、高齢期に到達する前から積極的に行われることが望ましいと考えられるという。
この研究は、東京都健康長寿医療センター研究所の新開省二副所長と北村明彦研究部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「日本公衆衛生雑誌」10月号に掲載された。
東京都健康長寿医療センター高齢期のフレイル,メタボリックシンドロームが要介護認定情報を用いて定義した自立喪失に及ぼす中長期的影響:草津町研究(日本公衆衛生雑誌 2017年11月8日)
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