ニュース

糖尿病の男性は「ED」(勃起不全)のリスクが高い EDは治療できる

 糖尿病の合併症は、血糖コントロールを良好に行い、高血圧や高コレステルールなどの治療を行えば、抑えることができる。糖尿病の合併症の怖さを意識することは大切だが、男性患者にとって、「男性力」の衰えも気になるのではないだろうか。
EDが糖尿病を早期発見するための指標に
 米国の研究グループがこのほど、糖尿病の男性では「勃起障害」(ED)を発症する割合が、糖尿病でない男性の2~3倍に上るとの調査結果を報告した。

 勃起障害(ED)は、男性の10人に1人が経験する深刻な問題だ。しかし、EDが性的な問題に限らないことをご存知だろうか? 糖尿病で血糖値が高い状態が続くと、EDが引き起こされることがある。

 勃起障害(ED)とは、性交時に挿入できる程度まで勃起できない、または挿入できても最後まで勃起を持続できない状態のことだ。加齢に伴い勃起能力が落ちてくるのは自然なことだが、それによって生活の質(QOL)が大きく損なわれると本人が自覚しているならば、治療が必要となる。

 多くの男性はEDの症状が出ていても、それが治療可能であることを知らない。しかも、米国メリーランド州ボルチモアにあるチェサピーク泌尿器科アソシエイツによると、EDは糖尿病を早期発見するための指標となる可能性があるという。
なぜ糖尿病の男性はEDになりやすいか
 「糖尿病という疾患が、勃起を達成するのを二重に攻撃しているのをご存知でしょうか?」と、チェサピーク泌尿器科アソシエイツのED治療プログラムのディレクターであるマルク シーゲルバウム氏は言う。

 「血糖値が高い状態が続くと、細小血管がダメージを受け、陰茎への血流が悪くなります。さらに、陰茎や会陰に張り巡らされている神経にも障害が起き、神経線維から脳への伝達が悪くなり、男性の性的反応を引き起こすのが難しくなります。血管が障害を受け陰茎への血流が減少したり、神経障害が起きると、男性は勃起を達成できなくなります」と、シーゲルバウム氏は説明する。

 血糖コントロールが良くないと、陰茎への血流の減少に加えて、神経損傷や神経障害が起こりやすくなる。これらは、男性の勃起機能を維持するために非常に重要で、勃起に関わる神経が損傷を受けると、元の状態に戻すのは難しくなる。血糖コントロールを良好に維持することは、男性の性的な機能を保つためにもとても重要だ。
糖尿病の男性はEDの発症率が2〜3倍高い
 米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)の調査では、下記のことが明らかになっている。
▽糖尿病のある男性の20%から75%が、生涯にわたりある程度のEDを経験している。
▽糖尿病のある男性は、糖尿病のない男性に比べ、EDを発症する割合が2〜3倍高い。
▽糖尿病のある男性は、糖尿病のない男性に比べ、EDを10〜15年早く経験する可能性がある。
▽とくに45歳以下の男性で、EDは糖尿病を早期発見するための指標なる可能性がある。

 NIDDKによると、EDの危険因子は右の通りだ。逆に言えば、年齢以外は、生活スタイルを改善し治療を受けることで、EDの危険因子を減らすことができる。

 糖尿病に加えて、EDの主な原因には、高血圧、腎臓病、アルコール乱用、血管疾患などがある。薬の副作用、心理的要因、喫煙、ホルモン欠乏などを原因としてEDを発症することもある。
EDの原因を治療することが大切
 EDを経験した男性は、医師に相談することが勧められる。医師は、血糖コントロールの状態に含め、性的問題の種類や頻度、薬の服用状況、喫煙・飲酒習慣、健康状態などについて質問し、性的な問題の原因を特定するための検査を行う。患者がうつ状態にあるのか、生活で最近に起こった変化について尋ねることもある。

 重要なのは、EDの根底にある原因を治療することだ。「正常な性的欲求と、男性ホルモンであるテストステロンの値が正常であっても、糖尿病の治療を受けないでいると、陰茎への血流が障害され、EDになる可能性が高まります」と、シーゲルバウム氏は指摘する。

 「EDは老化に伴う現象ではなく、原因が別にある可能性があります。EDの根本的な原因を突き止めるために、医師による総合的な医学検査を受けることをお勧めします」。
EDの治療は進歩している
 食事療法や運動療法、薬物療法によって、糖尿病を治療し進行を抑えることは、EDを治療するためにも重要だ。糖尿病を治療することで、血流が良くなり、神経障害も抑えられる。糖尿病患者は、血糖値、血圧、コレステロール値をコントロールし目標数値に近づけておくことで、EDのリスクを低下させることができる。これらは糖尿病の他の合併症を予防するためにも必要だ。

 加えてEDの問題を抱えている男性は、泌尿器科や専門の医師のアドバイスを受けることが勧められるという。多くの場合でEDの治療は効果がある。EDの治療は進歩しており、バイアグラやレピトラ、シアリスといった飲み薬や、簡単にできる注射薬など、さまざまな治療法がある。それぞれの治療法には長所と短所があり、不安を軽減するための心理カウンセリングを併行することもある。

Could Erectile Dysfunction Help Diagnose Diabetes in Men?(チェサピーク泌尿器科アソシエイツ 2017年11月17日)
Diabetes & Sexual & Urologic Problems(米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所 2008年12月)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2025年06月02日
肺がん検診ガイドライン19年ぶり改訂 重喫煙者に年1回の低線量CTを推奨【国立がん研究センター】
2025年05月20日
【調査報告】国民健康保険の保健事業を見直すロジックモデルを構築
―特定健診・特定保健指導を起点にアウトカムを可視化
2025年05月16日
高齢者がスマホなどのデジタル技術を利用すると認知症予防に 高齢者がネットを使うと健診の受診率も改善
2025年05月16日
【高血圧の日】運輸業はとく高血圧や肥満が多い 健康増進を推進し検査値が改善 二次健診者数も減少
2025年05月12日
メタボとロコモの深い関係を3万人超の健診データで解明 運動機能の低下は50代から進行 メタボとロコモの同時健診が必要
2025年05月01日
ホルモン分泌は年齢とともに変化 バランスが乱れると不調や病気が 肥満を引き起こすホルモンも【ホルモンを健康にする10の方法】
2025年05月01日
【デジタル技術を活用した血圧管理】産業保健・地域保健・健診の保健指導などでの活用を期待 日本高血圧学会
2025年04月17日
【検討会報告】保健師の未来像を2類型で提示―厚労省、2040年の地域保健を見据え議論
2025年04月14日
女性の健康のための検査・検診 日本の女性は知識不足 半数超の女性が「学校教育は不十分」と実感 「子宮の日」に調査
2025年03月03日
ウォーキングなどの運動で肥満や高血圧など19種類の慢性疾患のリスクを減少 わずか5分の運動で認知症も予防
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶