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特定保健指導の効果を「ビッグデータ」で検証 3年後にメタボが31%減少
2018年01月31日

国立循環器病研究センターは、特定健康診査や特定保健指導の結果を集約した「ナショナルデータベース」を分析し、特定健診および特定保健指導の効果を解析した。特定保健指導により3年後にメタボは31%減少し、腹部肥満も33%改善。心血管リスクも有意に改善したという
ビッグデータによる特定健康診査・保健指導の検証「MetS ACTION-J study」
国立循環器病研究センターは、特定健康診査や特定保健指導の結果を集約した「ナショナルデータベース」を分析し、特定健診および特定保健指導による生活習慣病抑制効果を明らかにしたと発表した。この研究は、国循予防医学・疫学情報部の中尾葉子上級研究員、宮本恵宏部長らの研究グループによるもの。研究成果は、米科学雑誌「PLOS ONE」オンライン版に発表された。
高血圧の患者数は約677万人、糖尿病は約317万人、脂質異常症は約147万人で、増加の一途をたどっている。これら生活習慣病により動脈硬化が進行することで、心疾患と脳血管疾患を発症する危険性は増大する。こうした循環器病は国民医療費や要介護原因の大きな割合を占めており、その原因である生活習慣病の予防と治療は、国民の精神的・財政的負担の軽減、さらには国家財政の改善のために不可欠だ。
特定健診・特定保健指導制度は日本独自の制度であり、収集したデータは、生労働省の「ナショナルデータベース」(NDB)に蓄積されている。研究グループは、腹部肥満および心血管リスクのある人に特定保健指導を行うことで、メタボリックシンドロームや心血管リスクに改善するかを検証した。
特定健診・特定保健指導による抑制効果を実証
研究グループは、2008年に特定健診を受診した約2000万人のうち、(1)2011年も特定健診を受診し、(2)降圧薬・脂質異常症治療薬・糖尿病治療薬を内服しておらず、(3)糖尿病の基準を満たさない受診者のデータの中から、保健指導対象者101万9,688人を抽出し、保健指導受診群11万1,779人と非受診群90万7,909人に分類して解析・比較した。
その結果、受診群では非受診群に比べ、3年後にメタボリックシンドロームと診断される割合が31%減少し、腹部肥満も33%改善した。また、受診群は血圧・中性脂肪・HbA1cの高値、HDLコレステロールの低値などの心血管リスクも有意に改善した。
今回の研究成果より、個人の生活習慣改善に国家レベルの政策として介入することで、メタボリックシンドロームや肥満、心血管リスクを長期的に抑制できる可能性が科学的に証明された。
一方で、健康に対する意識が高い人ほど特定保健指導の受診や改善に積極的である可能性も考えられるという。研究グループは、今後もNDBなどのビッグデータを活用した研究により、日本の医療政策の効果を多角的に検証し、病気の予防および国民の健康に対する意識向上につなげることを目指すとしている。


Effectiveness of nationwide screening and lifestyle intervention for abdominal obesity and cardiometabolic risks in Japan: The metabolic syndrome and comprehensive lifestyle intervention study on nationwide database in Japan (MetS ACTION-J study)(PLOS ONE 2018年1月9日)
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