ニュース
脳卒中は暑い夏に増える 日常生活の注意点と脳卒中予防10ヵ条
2018年07月18日
気温の高い夏に脳卒中を発症する人が増える。脳梗塞などの脳卒中は、どの季節においても注意が必要だが、夏は生活スタイルを注意すれば防げるものも多い。
脳梗塞の発作が起きたら、できるだけ早く治療を行うことがその後の経過に大きく影響する。脳梗塞の典型的な症状を知っておき、一刻も早く対処できるようにしておくことが大切だ。
脳梗塞の発作が起きたら、できるだけ早く治療を行うことがその後の経過に大きく影響する。脳梗塞の典型的な症状を知っておき、一刻も早く対処できるようにしておくことが大切だ。
脳卒中は夏に多い
日本脳卒中協会は「脳卒中週間」に合わせて、「脳卒中セミナー」を各地で開催している。脳卒中は、脳の血管がつまったり、破れたりして、その先の細胞に栄養が届かなくなって、細胞が死んでしまう疾患だ。
脳卒中は「脳血管障害」とも呼ばれ、血管が詰まるタイプ「脳梗塞」と血管が破れるタイプ「脳出血」「クモ膜下出血」に分けられる。このうち「脳梗塞」は、日本人で発症率が高い。
「脳卒中は冬に多い」と思われがちだが、脳梗塞に限ると、むしろ7~8月の夏に発生数が多くなっており注意が必要だ。
脱水による水分不足に注意
国立循環器病研究センターによると、夏に脳梗塞が起こりやすい理由として挙げられるのが、脱水による体内の水分不足だ。夏には汗を多くかくため、それに見合った量の水分を補給していないと、体が脱水症状に陥り、血液が「ドロドロ状態」となる。その結果、血管がつまりやすくなる。
また、寒さで血圧が上がりやすい冬とは逆に、夏は体の熱を放出しようと血管が拡張しやすくなる。この場合、生理機能が低下している人や、降圧剤などを服用している人は、血管拡張のために血流が遅くなり、血栓ができやすい状態になる。
さらに飲酒は尿量を増加させ脱水の原因になる。これらが重なると夜間に脳梗塞を発症しやすくなる。
糖尿病や高血圧は脳卒中の危険因子。しかし脳卒中は予防が可能だ。
日本脳卒中協会は脳卒中の啓発動画を公開している。
日本脳卒中協会は脳卒中の啓発動画を公開している。
糖尿病の人は脳梗塞のリスクが2~4倍に上昇
脳梗塞は突然起こり、命を奪うこともある恐ろしい病気で、命は助かっても麻痺などのために不自由な生活を強いられることがある。発症するとしばしば長期の入院が必要となる。
脳卒中の実態解明を目指して、福岡県久山町の全住民を対象に1961年に始まった久山町研究では、40歳以上の住民のほとんどすべてが毎年健康診断を受けている。
久山町研究では、糖尿病のある人は、糖尿病でない人の2~4倍、脳梗塞を発症しやすいことが分かった。糖尿病の人の脳梗塞発症率は年を追うごとに改善しているが、それでもリスクはかなり高い。
脳梗塞は動脈硬化のために血液が流れなくなって起こる病気であり、糖尿病はその動脈硬化の進行を早めてしまうからだと考えられている。
脳梗塞の発作を起こすと、多くの場合で片麻痺などの後遺症が残る。介護が必要となった原因疾患の第1位であり、寝たきりを含む重い介護の原因にもなる。
こまめな水分補給が重要 飲酒は要注意
脳卒中予防10ヵ条
脳梗塞の発作が起きたら、できるだけ早く治療を
脳梗塞の主な原因は動脈硬化だ。動脈硬化が進行して、脳へ続く血管の壁にコレステロールなどの成分がたまり、プラークという膨らみができ、血管が狭くなる。
そのプラークが脳の血管の内部を塞いで血流を妨げたり、プラークの中に出血が生じたりすると、プラークが壊れて血栓が作られる。その血栓が脳まで流れて行き脳梗塞を起こす。
万が一、脳卒中を発症した場合でも、急性期治療は進歩しており、少しでも早く治療を受ければ救命や後遺症の低減を得られる。
国立循環器病研究センターは、3つの症状をより簡潔に示した「FAST(ファスト)」という標語を呼びかけている。このうちひとつでも該当すれば脳卒中を疑い、すぐに救急車を呼ぶよう注意を促している。
脳梗塞の発作が起きたら、できるだけ早く治療を行うことがその後の経過に大きく影響する。脳梗塞の典型的な症状を知っておき、一刻も早く対処できるようにしておくことが大切だ。
早めの対応が、命を守り、後遺症を減らす
「突然、片方の手に力が入らなくなる、持っているものを落としてしまう」「突然、どちらかの手足がしびれる」「突然、呂律が回らなくなる、言葉が出なくなる」。でも、しばらくするとこのような症状が消えてしまう。これは脳卒中の前触れ発作である「一過性脳虚血発作」(TIA)である可能性がある。
「一過性脳虚血発作」では、血管に血栓がつまっても、短時間のうちに血栓がとけて血流が再開するため、脳梗塞の症状が短い時間しか現れない。
しかし、一過性脳虚血発作は本格的な脳梗塞の前兆なので、決して安心してはいけない。この発作を起こした人の、3~4割が脳梗塞を起こすという報告がある。特に48時間以内が危険だ。
前触れ発作がおきたら、様子をみずに、すぐ医師に相談しよう。一刻も早く、神経内科や脳神経外科など脳卒中の専門医がいる医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが明暗を分ける。
国立循環器病研究センター久山町研究(九州大学大学院 医学研究院)
脳卒中の予防と患者・家族の支援を目指して(日本脳卒中協会)
動画で学ぶ脳卒中(日本脳卒中協会)
脳卒中になったら、どの病院へ行けば良いのでしょうか? 脳卒中に対応する医療機関や施設(日本脳卒中協会)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「健診・検診」に関するニュース
- 2024年04月25日
-
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠 - 2024年04月22日
- 【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
- 2024年04月18日
- 人口10万人あたりの「常勤保健師の配置状況」最多は島根県 「令和4年度地域保健・健康増進事業の報告」より
- 2024年04月18日
- 健康診査の受診者数が回復 前年比で約4,200人増加 「地域保健・健康増進事業の報告」より
- 2024年04月09日
- 子宮の日 もっと知ってほしい子宮頸がんワクチンのこと 予防啓発キャンペーンを展開
- 2024年04月08日
- 【新型コロナ】長引く後遺症が社会問題に 他の疾患が隠れている例も 岡山大学が調査
- 2024年03月18日
- メタボリックシンドロームの新しい診断基準を提案 特定健診などの56万⼈のビッグデータを解析 新潟⼤学
- 2024年03月11日
- 肥満は日本人でも脳梗塞や脳出血のリスクを高める 脳出血は肥満とやせでの両方で増加 約9万人を調査
- 2024年03月05日
- 【横浜市】がん検診の充実などの対策を加速 高齢者だけでなく女性や若い人のがん対策も推進 自治体初の試みも
- 2024年02月26日
- 近くの「検体測定室」で糖尿病チェック PHRアプリでデータ連携 保健指導のフォローアップなどへの活用も