ニュース

高血圧に特化した「治療アプリ」を開発 介入の難しい生活習慣改善を支援

 自治医科大学の苅尾七臣教授の研究グループは、疾患治療用プログラム医療機器として「治療アプリ」の研究開発を行うキュア・アップと産学共同で、高血圧症に特化した「治療アプリ」の開発を行うと発表した。
 同アプリは、血圧と生活習慣のデータをもとに患者ごとに個別に判定し、食事や運動、睡眠など最適な改善案を提案する。患者140人を対象にアプリの有効性を検証し、薬事承認を目指す。
高血圧の生活習慣改善の介入は難しい
 2016年の国民健康・栄養調査によると、30歳以上の日本人男性の約60%、女性の約45%が高血圧と判定されている。しかし、生活習慣の改善については、介入(指導)法に関するエビデンスが少なく、確実な効果が得にくい状況にある。

 高血圧は心血管病(脳卒中や心疾患)の最大のリスク因子で、高血圧に起因する死亡者数は年間10万人と推定されている。日本の高血圧患者の推定人口は4,300万人で、うち継続的に治療を受けている患者数は1,011万人に上る。

 高血圧の年間医療費は1.8兆円で推移しており、糖尿病の1.2兆円に対しても高額だ。さらに高齢化も進むなか、心血管疾患全体の医療費は増加傾向にある。

 高血圧の治療や予防には、生活習慣の改善が不可欠で、健康日本21(第2次)では、食生活・身体活動・飲酒などの対策推進により、国民の収縮期血圧平均値を10年間で4mmHg低下させることを目標としている。

 しかし、生活習慣の改善は、患者の意欲や職場・家庭の生活環境の影響をうけやすく、継続が難しく、医療機関のみによる介入は効果を発揮しにくいという課題がある。

関連情報
患者ごとに最適な治療ガイダンスを提供する
 こうした状況下、キュア・アップは、モバイルテクノロジーを適用した新しい医療のかたちとして、医学的エビデンスにもとづく個別最適化された治療ガイダンスを提供し、患者の意識・行動変容を促し、習慣化をサポートする「治療アプリ」の開発を進めている。

 そこで、自治医科大学内科学講座循環器内科学部門の苅尾七臣教授の研究グループは、キュア・アップと共同で、高血圧に特化した「治療アプリ」を開発し、新たなプログラム医療機器としての薬事承認を目指して臨床研究を開始することになった。

 「高血圧治療アプリ」は、IoT血圧計を用いた血圧モニタリングと生活習慣ログなどのデータから、個人の血圧特性と生活習慣を自動分析し、それぞれの患者に最適な治療ガイダンス(食事、運動、睡眠などに関する知識や行動改善を促すための情報)を提供する。

 高血圧患者における降圧効果、生活習慣の改善との関係を評価し、同アプリの有効性を検証するため、多施設臨床研究(140人を予定)を今年6月より開始した。この研究をもとに、高血圧治療における生活習慣改善と行動変容のエビデンスを構築し、新たな高血圧治療として同アプリの実用化を目指す。
治験実施で薬事承認を目指す
 院外・在宅でも正しい医療ガイダンスが受けられる「高血圧治療アプリ」は、これまで頻繁に受診しにくかった、働き盛りの人々や、遠隔地の人々にも、質の高いパーソナライズド(個別化)医療を提供することが可能になる。

 また、主治医は同アプリの患者データを共有することができ、実診療に活かせると共に、受診頻度が少なくても、適切に血圧管理を行えるようになる。時系列データの蓄積によりアルゴリズムを改良することも可能で、患者の利用が増えるほど、その介入精度が高まる。

 研究チームは、「高血圧治療アプリ」が保険診療の中で普及することで、高血圧の重症化予防や心血管疾患の抑制につながるとしている。薬事承認を目指した治験実施に向けて、データ蓄積とプログラム改良を進める予定だ。

 デジタルテクノロジーを用いた新たな治療アプローチである同アプリの普及を拡大することで、高血圧に対する投薬量や受診頻度の継続的な低減につながり、将来的な医療費削減にも貢献できるとしている。
日本でいち早くアプリの臨床試験を開始
 キュア・アップは、高度なソフトウェア技術と医学的エビデンスにもとづいた疾患治療用プログラム医療機器の研究開発から製造まで行うMedTechベンチャー。「アプリで病気を治療する」という新しい医療サービスを日本で初めて実現するために、「治療アプリ」の開発に取り組んでいる。

 「治療アプリ」が目指すのは、臨床試験などにより治療効果を明らかにし、医療機器として承認を受けて実用化すること。同社は、日本でいち早く臨床試験を開始し、第1弾となる「ニコチン依存症治療用アプリ」が現在治験中であるほか、複数の疾病への開発も開始している。

 また、日本で生み出したモデルをベースに「日本発のデジタルヘルスソリューション」として、順次グローバルにも展開していく予定としている。

自治医科大学
キュア・アップ
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2025年02月25日
【国際女性デー】女性と男性はストレスに対する反応が違う メンタルヘルス対策では性差も考慮したアプローチを
2025年02月25日
【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
2025年02月25日
ストレスは「脂肪肝」のリスクを高める 肥満やメタボとも関連 孤独や社会的孤立も高リスク
2025年02月25日
緑茶を飲むと脂肪肝リスクが軽減 緑茶が脂肪燃焼を高める? 茶カテキンは新型コロナの予防にも役立つ可能性が
2025年02月17日
働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
2025年02月17日
肥満やメタボの人に「不規則な生活」はなぜNG? 概日リズムが乱れて食べすぎに 太陽光を浴びて体内時計をリセット
2025年02月17日
中年期にウォーキングなどの運動を習慣にして認知症を予防 運動を50歳前にはじめると脳の健康を高められる
2025年02月17日
高齢になっても働き続けるのは心身の健康に良いと多くの人が実感 高齢者のウェルビーイングを高める施策
2025年02月12日
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より
2025年02月10日
【Web講演会を公開】毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」
2025年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶