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女性だけの病気ではない 「男性乳がん」孤立しがちな患者を支援
2019年07月11日
乳がんは女性だけの病気と思われがちだが、男性も罹患する可能性があり、その数は年々増え続けている。がん情報を発信しているNPO法人キャンサーネットジャパンは、男性乳がん患者の交流会「男性乳がんの会 メンズBC」を発足し、孤立しがちな患者の支援と病気への理解を広める活動を行っている。

「第5回男性乳がんの会 メンズBC」にて、
昭和大学病院乳腺外科・沢田晃暢准教授のレクチャーに耳を傾ける参加者たち
乳がん患者のうち、男性は1%未満 未だ社会の認知低く
乳腺にできる悪性腫瘍、乳がん。女性特有の病気と思われがちだが、男性にも乳腺はあり、乳がんを発症する可能性はある。
厚生労働省が2019年1月に発表した「全国がん罹患者数」によると、2016年に新たに乳がんと診断されたのは女性が9万4千848人、男性は674人。男性は患者全体の1%未満と少ないが、患者数は年々増加の傾向にある。
男性乳がんだけを対象とした治療方法は、まだ開発されていないため、女性の乳がんと同じ方法(手術・放射線治療・薬物療法)で行われる。女性の乳がんと異なるのは発症年齢で、男性のほうが5〜10歳高く、60代以上で発症することが多い。
また、男性のほうが病期の進んだ状態で診断されることが多いが、これは「乳がんは女性だけの病気」という思い込み、乳がんという病気に対する恥ずかしさから受診が遅れることなどが理由と考えられる。「男性乳がん」の存在を広く知らせることが、早期発見への第一歩と言えるだろう。
患者同士の交流と情報提供の場を 「男性乳がんの会 メンズBC」

「男性乳がんの会 メンズBC」を立ち上げた
認定NPO法人キャンサーネットジャパンの大友明子さん
認定NPO法人「キャンサーネットジャパン」は、2018年1月に男性乳がん患者の交流会「男性乳がんの会 メンズBC」(BCはBreast Cancerの略)を発足。罹患者数が少なく、孤立しがちな患者の支援と、この病気への理解を広める活動をしている。
第5回メンズBCは、東京都品川区の昭和大学病院で行われ、男性乳がん患者10名と家族2名が参加。会の前半は昭和大学病院の沢田晃暢准教授が男性乳がんに関する世界の研究事例などを紹介。後半では、国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科の下村昭彦医師、隈病院の藤島成医師が加わり、参加者からの治療や副作用に関する質問、生活上の悩みに答えた。
「男性乳がんについての情報は少なく、同病の人と会うこともなかなかありません。患者さん同士、同じ悩みを共有できる場を作りたかった」と話すのは、会を立ち上げた認定NPO法人キャンサーネットジャパンの大友明子さん。
「患者さんが抱いているのは、治療や副作用についての悩みだけではありません。女性特有の病気と思われているため、職場に乳がんだということがうまく伝わらず、誤解を受けたという人もいるようです」(大友さん)
会の中でも、参加者から「女性ばかりの待合室にいると、変な目で見られる」という話があった。まずは社会に対して、男性乳がんという病気の認知度を高めることが重要である。
第6回メンズBCは、ジャパンキャンサーフォーラム2019のプログラムの1つとして、8月17日(土)15:00〜16:30に国立がん研究センター築地キャンパス 研究棟にて開催される。
■文/瀬田尚子出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。
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