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子ども虐待による死亡事例等の検証結果を公表―転居によるリスク拡大などに警鐘

 厚生労働省の社会保障審議会児童部会「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」はこのほど、子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について第15次報告を取りまとめ、公表した。

 今回は平成29年4月1日から平成30年3月31日までの間に、子ども虐待による死亡事例として厚生労働省が各都道府県を通じて把握した58例、また、平成29年4月1日から6月30日の3カ月間に児童相談所が受理した重症事例(死亡に至らなかった事例)として、厚生労働省が各都道府県を通じて把握した7例について分析。明らかになった課題について報告を行っている。

死亡事例の子ども、0カ月児は14人
 報告によると死亡事例(58例・65人)のうち、心中以外の虐待死は50例・52人。死亡した子どもの年齢は0歳が最も多く28例・28人と全体の53.8%を占めたが、中でも月齢0カ月児が14例・14人もあった。

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 虐待の類型としては身体的虐待が20例・22人、ネグレストが20例・20人。直接の死因は「頭部外傷」が11例・11人と最も多く、主たる加害者は実母が半数近い割合を占めた。

 実母が抱える問題については「遺棄」、「予期しない妊娠/計画していない妊娠」、「妊婦健診未受診」、「自宅分娩(助産師などの立ち会いなし)」などが多い。また養育者(実母)の心理的・精神的問題としては「養育能力の低さ」、「育児不安」などが挙げられている。

 一方、「児童相談所の関与あり」が8例(16.0%)、「市区町村(虐待対応担当部署)の関与あり」が9例(18.0%)、「児童相談所と市区町村(虐待対応担当部署)の両方の関与あり」が6例(12.0%)。何らかの機関(児童相談所、市区町村、保健センター等)が関与していた事例は29例(58.0%)だった。
特定妊婦への対応に課題
 報告では、特徴的で重大であるとした事例4例につき、都道府県・市区町村および関係機関などに、事例発⽣当時の状況や対応等の詳細をヒアリングした内容も掲載している。

 具体的には「①施設⼊所歴がある⻑男が、転居後に実⺟から頭部に衝撃を与える暴⾏を受け死亡した事例」、「②10代の実⽗⺟が予期しない妊娠の後に出産、遺棄し死亡させた事例」、「③要保護児童対策地域協議会の対象となっていた⻑⼥を、実⽗⺟が⾃宅に放置し死亡させた事例」、「④転居にあたり市区町村間で情報共有されていた実⺟が、次男に揺さぶり行為を⾏い死亡させた事例」。

 特定妊婦(児童福祉法で、出産後の子の養育について出産前に支援を行うことが特に必要と認められる妊婦)への対応の課題や、家族全体の状況をアセスメントし、それに対応した支援ができるよう働きかける必要性などを指摘している。
「転居」によるリスク拡大に留意を
 最近の事例において「転居」に伴う課題が指摘されていることから、第5〜14次報告までの虐待死事例の中で、⼼中以外の虐待死事例のうち0カ⽉児を除く事例381人について、転居経験の有無を確認。「転居経験あり」(39.4%)だった150人の事例について、傾向を検証している。

 その結果、「転居あり」の場合、子どもの死亡時の年齢は「1歳」が最多で、同居家族は「実父母」に次いで「ひとり親(離婚)」、「内縁関係」、「再婚」が多かった。また10代で妊娠・出産しているケースも多く、地域社会や親族との接触についても乏しい傾向が見られた。

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 これらのことから、「転居によりこれまで築いてきた支援が途切れるなど、転居そのものがリスクを高める要因となりうる」と報告。施設入所経験があったり、児童相談所が関与したりしている事例も多いことから、これらの関与を避けるために転居している可能性もある、としている。

 そのうえで転居した事例に対応する場合は、若年妊娠・地域とのかかわりが途切れていること・家族構成の変化など、リスクを高める要因に注意してアプローチをはかるよう求めた。

 また転出・転⼊先では、転居前の状況や転居に伴う状況の変化などが端的に分かる確実な引き継ぎ、要保護児童対策地域協議会等を活用したきめ細やかな情報共有、役割分担、関係機関による⾒守り・支援体制を整備し、「切れ⽬のない支援」を行うことが望まれる、としている。

 報告ではそのほか、地方公共団体と国への提言をまとめ、これまでの報告をふまえて子ども虐待による死亡事例などを防ぐためのリスクとして留意すべきポイントも公表している。

[yoshioka]
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