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【新型コロナウイルス感染症】 新たな検査法の開発が急ピッチで進む 検出時間を大幅短縮 今月中にも実用化か
2020年03月03日

国立感染症研究所で分離された
新型コロナウイルスの電子顕微鏡画像
新型コロナウイルスの電子顕微鏡画像
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者が増えるなか、ウイルスの有無を迅速に診断できる新たな検査法が求められている。
現在主流となっている「PCR法」は1検体に4~6時間がかかるが、これを15分程度にスピードアップさせる手法の開発が各所で急ピッチで進められている。
現在主流となっている「PCR法」は1検体に4~6時間がかかるが、これを15分程度にスピードアップさせる手法の開発が各所で急ピッチで進められている。
理化学研究所などが新たな手法を開発
現在主流となっている「PCR法」は、ウイルスのDNAを、その複製に関与するプライマーなどを用いて大量に増幅させる方法。ごく微量のDNAであっても検出が可能なため、病原体の検出検査によく使われている。
しかし、現在の手法では、結果が出るまでに4~6時間を要することが障害になっている。
これを10~30分程度に短縮する手法を、理化学研究所や神奈川県衛生研究所が開発した。
理研が開発した「SmartAmp(スマートアンプ)法」を用いる。PCR法では、新型コロナウイルスを検出するため、加熱と冷却を繰り返す作業が必要で、解析に時間がかかる。スマートアンプ法は一定の温度で、より単純な工程で検出でき、時間の短縮につながるという。
神奈川県が、横浜港に停泊しているクルーズ船に乗船していた人の検体から新型コロナウイルスを分離。これを用いて神奈川県衛生研究所と理研が、新しい試薬を使う検査方法の開発に着手し、このほど実際にウイルスを検出するのに成功した。
この取組みを推進するため、文部科学省・科学技術振興機構「世界に誇る地域発研究開発・実証拠点(リサーチコンプレックス)推進プログラム」は追加予算を配分することが決まった。
まだ実証研究の段階にあるが、今後は実用化に向けて急ピッチで研究を進めていくとしている。
産総研なども開発に成功 早期の実用化を目指す
結果が出るまでに時間かかるPCR法を大幅にスピードアップさせ、15分程度で診断ができる手法を、産業技術総合研究所(産総研)と杏林製薬の研究チームも開発した。
開発した新たな機器を使うと、試料を素早く目標の温度に上げ下げすることができ、新型コロナウイルスの有無を早く判定できるという。
新型コロナウイルスの検査をめぐっては、政府は1日当たり最大3,800人に対応できる体制をとっているが、現状は1,000人程度しか検査できていない。障害の1つになっているのは検査の結果が出るまでに多くの時間がかかることだ。
検査機器は小型で、すでに全国の主な研究施設に数十台ある。新たな技術を医療現場に導入し迅速に検査すれば、感染の疑いのある人をその場で検査し、隔離など適切な措置がとれるようになるという。
産総研を所管する経済産業省では、厚生労働省と連携して、現状のウイルス検査と同じ精度があるかなどを確認したうえで、早期の現場での実用化を目指している。

新型コロナウイルス感染症疑いは全例検査するべき
政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は2月末、感染拡大防止のための総合的な基本方針を決め、重症者や死亡者を極力減らすために、患者が増えた地域では、一般医療機関でも感染を疑う患者を受け入れることを求めている。
医療サイトのm3.comが2月に実施した調査によると、医師の60%以上は「新型コロナウイルス感染症疑いを全例PCR検査する必要」があると回答している。
「感染拡大を防ぐためには疑い全例を検査して、陽性なら隔離とすべき」としているが、今後は疑い例の数が爆発的に増える見込みで、全例を検査し隔離するのは難しいという意見もある。
そのため「重症例で治療上もしくは入院管理上必要な症例に限った検査でも仕方ない」と指摘する医師も多い。
迅速かつ簡易に検査できるキットを開発できれば、検査数を増やすことができ、万全の体制で対応できるようになると期待を寄せている。
神奈川県政策局ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室神奈川県衛生研究所と理化学研究所が新型コロナウイルスの迅速検出法を開発しました。(神奈川県 2020年2月27日)
マイクロ流路型遺伝子定量装置 GeneSoC[ジーンソック](杏林製薬)
迅速な新型コロナウイルス遺伝子検査システムの開発開始について(キヤノンメディカルシステムズ 2020年2月25日)
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