ニュース
【新型コロナウイルス】肥満が世界で深刻な問題に 食事や運動など生活スタイルに深刻な悪影響
2020年06月09日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大にともなう都市閉鎖により、世界の多くの人の生活スタイルに、急速に大きな変化があらわれた。
その結果、「飲酒量が増えた」「喫煙量が増えた」「ジャンフードを食べ過ぎるようになった」「家から出られず運動不足になった」というネガティブな影響を受けた人が多く、世界では肥満があらためて深刻な問題になっている。
その結果、「飲酒量が増えた」「喫煙量が増えた」「ジャンフードを食べ過ぎるようになった」「家から出られず運動不足になった」というネガティブな影響を受けた人が多く、世界では肥満があらためて深刻な問題になっている。
COVID-19は肥満に悪影響をもたらしている
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は肥満のある人に深刻な影響をもたらしています。ひとつは、肥満の人がCOVID-19に感染すると重症化する危険性が高いことが分かってきたことです」と、栄養士のゾーイ デイヴィス氏は言う。
「もうひとつは、都市の閉鎖などにより行動が制限されたことで、多くの人が肥満の新たなリスクにさらされていることです。英国では成人の3人に1人が肥満であり事態は深刻です」。
デイヴィス氏は、ロンドンのクイーン メアリー大学を拠点に塩分の過剰摂取をなくすための研究や啓発を展開している「アクション オン ソルト」に所属する研究者だ。
英国でCOVID-19に感染した人の78%は過体重あるいは肥満であり、COVID-19の感染が原因で医療機関で亡くなった人の62%が過体重・肥満であるという報告がある。
この調査には42万8,225人の英国人が参加し、うちCOVID-19で入院した症例は340人だった。また、1,742万5,445人のカルテを調査し、うち5,683人がCOVID-19による死亡例だった。
関連情報
COVID-19に対策するためにも肥満の解消が重要
「肥満が重度であるほど、COVID-19は重症化しやすいことが示されました。肥満以外にも、1型糖尿病および2型糖尿病、心臓病、腎臓病といった基礎疾患があること、高齢や貧困であることなどが危険因子になります」と、デイヴィス氏は言う。
肥満があると、体内で炎症が起こりやすくなり、ウイルスと戦うための免疫力が低下するおそれがある。また、肺への酸素供給を改善する治療薬などが効きにくくなる。
COVID-19に対策するためにも、肥満を解消することが重要となる。「肥満を予防するめたに、すべての人が健康的な食品を手頃な価格で入手できるようにして、不健康な食品やタバコの広告を制限するなど、社会環境を整備する必要があります」と、アクション オン ソルトは主張している。
健康的な食事、運動の習慣化、減量といった生活スタイルの改善がCOVID-19にどう影響するかを、今後の研究で確かめる必要がある。生活スタイルの小さな変化であっても、それが積み重ねると全体的な健康に多くの利益をもたらすことは、これまでの研究でも確かめられている。
都市閉鎖によるネガティブな影響
COVID-19の拡大にともなう都市閉鎖により、世界の多くの人の生活スタイルに、急速に大きな変化があらわれた。日本でも緊急事態宣言が発令され、ほとんどの人が日常生活で大きな変化を強いられた。
なかには「自宅で食事を作ることが増えた」「家族と話す時間が増えた」「部屋を掃除をする回数が増えた」といったポジティブな意見もみられるが、「家から出られず運動不足になった」「飲酒量が増えた」「喫煙量が増えた」「ジャンフードを食べ過ぎるようになった」というネガティブな影響を受けた人も多い。
ジャンクフードやアルコールの摂取量を増やした人が多い

プラスの変化を引き出すことが必要
カナダの調査でも、COVID-19のパンデミックにより75日間にわたる制限措置が講じられた結果、ジャンクフード、アルコール、タバコの消費量が大幅に増加している。
カナダ人の27%は「ジャンクフードやスイーツを以前より多く食べている」と回答し、19%は「アルコールの摂取量が増加している」と回答している。
「パンデミックによる生活スタイルの変化はマイナス面のみを含むものではありませんが、ジャンクフードやアルコールの過剰摂取は明らかに良くありません」と、同アクションのロレーヌ タロック氏は言う。
「より健康的な食品を食べるようにし、運動などのより価値ある行動に多くの時間をあてるように、プラスの変化を引き出し、国民を誘導する必要があります。政府によるコロナからの回復計画に、健康的な体重を達成するための行動を含める必要があります」としている。
子供の健康にも深刻な影響が
COVID-19によるロックダウンは、子供の健康にも悪影響をもたらしている。
米ニューヨーク州立大学バッファロー校の調査によると、イタリアではロックダウンで学校が閉鎖された結果、子供たちはより多くのジャンクフードを食べ、より多くのテレビを観て、運動をしなくなっているという。
研究チームは、イタリアのヴェローナで肥満小児41人を調査した。食事、身体活動、睡眠など生活習慣について、ロックダウンの3週間後に調査し、1年前のデータと比較した。
その結果、子供の生活習慣はネガティブな方向に変化しており、1日の食事回数が増え、睡眠時間が30分増え、スマートフォン、コンピュータ、TVなどの利用時間が5時間増えていた。また、高カロリー飲料やジャンクフードの摂取量が増加し、身体活動は週2時間以上減少した。
「肥満の子供たちは健康的な生活習慣を維持するためには不利な状況下におかれています」と、ニューヨーク州立大学のマイルス フェイス氏は言う。「学校環境は、食事時間、身体活動、睡眠などの生活スタイルを確立するために必要です。これらは肥満に大きく関わっています。学校が閉鎖された影響は大きいのです」。
「小児期および青年期の肥満の原因となる生活スタイルは、成人にまで引き継がれる傾向があります。ロックダウンの結果、増えてしまった過剰な体重は短期間には元に戻せない可能性があります。なるべく早く健康的な生活行動に戻し、成人期の肥満を防ぐために対策することが必要です」と、フェイス氏は指摘している。
Reducing obesity and improving health during the COVID-19 pandemic(オープン アクセス ガバメント 2020年6月4日)英国オープンジャーナル「オープン アクセス ガバメント」は、インターネット上で論文などの学術情報を無償で提供しており、世界中の大学や研究機関に利用されている。
Experts Call for Immediate Government Intervention on Obesity to Help Prevent Further Deaths from COVID-19(アクション オン ソルト 2020年5月29日)
Obesity and COVID-19: are they linked?(スコットランド肥満アクション 2020年6月2日)
Lack of physical activity during COVID-19 may fuel childhood obesity, new study finds(ワシントン大学 2020年5月26日)
Statement from the Chief Public Health Officer of Canada on June 7, 2020(カナダ政府 2020年6月7日)
COVID-19 lockdowns worsen childhood obesity(ニューヨーク州立大学バッファロー校 2020年6月3日)
Effects of COVID‐19 Lockdown on Lifestyle Behaviors in Children with Obesity Living in Verona, Italy: A Longitudinal Study(Obesity 2020年4月30日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2022 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「健診・検診」に関するニュース
- 2021年12月21日
- 特定健診・保健指導の効果を10年間のNDBで検証 体重や血糖値が減少し一定の効果 ただし体重減少は5年後には減弱
- 2021年12月21日
- 【申込開始】今注目のナッジ理論、感染症に関する教材が新登場!遠隔指導ツールも新作追加! 保健指導・健康事業用「教材・備品カタログ2022年版」
- 2021年12月13日
- 【新型コロナ】ファイザーのワクチンの3回目接種はオミクロン株にも効く? 抗体価は半分に減るものの2回接種より25倍に増加
- 2021年12月09日
- 保健師など保健衛生に関わる方必携の手帳「2022年版保健指導ノート」
- 2021年11月16日
- 思春期に糖質を摂り過ぎると成長後にメンタルヘルスに悪影響が 単純糖質の摂り過ぎに注意が必要
- 2021年11月09日
- 【世界糖尿病デー】東京都「今日から始めよう!糖尿病予防」キャンペーン 都民の4人に1人は糖尿病かその予備群
- 2021年11月08日
- 肥満のある人・肥満のない人の両方に保健指導が必要 日本人4.7万人の特定健診データを解析
- 2021年11月02日
- 【新型コロナ】ワクチン接種はコロナ禍を終わらせるための重要なツール 50歳以上で健康やワクチンに対する意識が上昇
- 2021年11月02日
- 健診や医療機関で腎臓の検査を受けていない高齢男性は透析のリスクが高い 7万人弱を5年間調査
- 2021年10月26日
- 「特定健診受診率向上プロジェクト」を実施 大阪府と大阪府立大学看護学科が協働 特定健診の対象者に合わせた効果的な受診勧奨
最新ニュース
- 2022年05月23日
- 【新型コロナ】保健師がコロナ禍の拡大を食い止めている 保健師の活動が活発な地域では罹患率は減少
- 2022年05月23日
- 【新型コロナ】起床・朝食が遅くなった子供で運動不足や栄養バランスの乱れが 規則正しい食事・睡眠が大切
- 2022年05月23日
- 【新型コロナ】コロナ禍で結婚数と出生数が減少 将来に対する不安や経済的な悩みが原因?
- 2022年05月23日
- 【子宮頸がん】HPVワクチンの予防効果は優れている 接種9年後の感染率は0% ワクチンの有効率は100%
- 2022年05月23日
- 余暇に軽い身体活動をするほど健診結果は良くなる 活動量の実測データにもとづく世界初の研究
~保健指導・健康事業用 教材~
-
アイテム数は3,000以上! 保健指導マーケットは、健診・保健指導に役立つ教材・備品などを取り揃えたオンラインストアです。 保健指導マーケットへ