ニュース

【新型コロナウイルス】対策を行っている企業ほど、従業員の精神的な健康度や仕事のパフォーマンスは高い

 企業の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策についての調査で、企業内対策の数が多いほど従業員の精神的な健康度や仕事のパフォーマンスは高いことが明らかになった。
 対策をしっかり行っている企業ほど、社員が効率よく仕事に取り組めているという。
職場で実施される対策が感染拡大を防止
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対し、職場で実施される企業対策は、感染拡大を防止する重要な役割を担っている。しかし、日本での企業内対策の実施状況については明らかになっていいない。

 そこで東京大学は、企業規模別・業種別に企業の対策の実態をはじめて調査し、精神健康とパフォーマンスへの影響を調べた。

 研究グループは、緊急事態宣言発出前の3月19日~22日に、全国の一般労働者1,488人を対象に横断調査をオンラインで実施。

 回答者が勤務している企業のCOVID-19対策実施状況や、心理的なストレス、仕事のパフォーマンスなど23項目について回答してもらった。

 有効な回答数は1,379人で、平均年齢は41.2歳、男性50.6%で、所属する企業規模は、1,000人以上が33.1%、300~999人が16.6%、50~299人が27.3%、50人未満が23.0%だった。

 研究は、東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野の佐々木那津氏、川上憲人教授らが行ったもので、詳細は日本産業衛生学会の専門誌「Environmental and Occupational Health Practice」および「Journal of Occupational Health」に掲載された。
8割の企業で手洗いなど個人予防対策の励行を実施
 その結果、労働者のうち79.9%は、勤務先から感染予防対策に関する何らかの社員向け通知を受け取っており、手洗い・手指消毒・マスク着用などの個人予防対策の励行は約8割の企業で実施されていることが分かった。

 とくに「体調が悪い時の出勤自粛要請」(76.4%)、「社内外イベントの中止や延期」(60.5%)の実施率は高かった。

 一方で、「高齢者や妊婦などハイリスクな労働者への配慮」(39.8%)、「感染時の補償に関する情報提供」(35.3%)、「特別な措置が実施される期間に関する情報提供」(33.0%)、「テレワークや在宅勤務の励行」(26.8%)、「働く環境(デスクの配置や動線など)の変更」(17.2%)の実施率は低いことが明らかになった。

 また、企業規模別にみると、従業員数が1,000人以上の企業社員は93.0%が何らかの通知を受け取っていたが、50人未満の小規模企業の社員ではその割合は56.8%と少なく、企業規模によって対策通知の実施率に差があることが分かった。

 業種別にみると、製造業や情報・通信産業に比較し、小売・卸売業、運輸業では対策の実施件数が有意に少なかった。
対策をするほど労働者の精神的な健康や仕事のパフォーマンスは向上
 対策の実施状況は、社員の心理面にも影響を及ぼしている。たとえば、対策の実施数が多い企業の社員ほど、COVID-19に対する不安が強かったが、その一方で、心理的ストレス反応は有意に低く、さらに、仕事のパフォーマンスも有意に高かった。

 これにより、勤務先企業が対策を多く実施するほど、COVID-19に対する自覚が高まり不安を感じやすくなるものの、十分な対策に支えられて、労働者の精神的な健康と仕事のパフォーマンスには良い影響があることが示された。

 インフルエンザ流行時の過去の研究により、職場でのソーシャル・ディスタンスに関する対策や、体調不良者を自宅休養させる対策は、感染拡大の防止に有効であることが分かっている。

 米疾病予防管理センター(CDC)は、職場での感染予防対策に関する指針を公表しており、世界的にも企業内対策が感染拡大防止において重要であるという認識が高まっている。

 「政府などは企業に対して包括的な対策の実施を促し、規模の小さい企業や特定の業種での対策を支援することで、COVID-19の感染拡大の防止とともに、労働者の健康が維持されると期待されます」と、研究者は述べている。

Workplace responses to COVID-19 and their association with company size and industry in an early stage of the epidemic in Japan(Environmental and Occupational Health Practice 6月22日)
Workplace responses to COVID‐19 associated with mental health and work performance of employees in Japan(Journal of Occupational Health 2020年6月11日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2025年06月02日
肺がん検診ガイドライン19年ぶり改訂 重喫煙者に年1回の低線量CTを推奨【国立がん研究センター】
2025年05月20日
【調査報告】国民健康保険の保健事業を見直すロジックモデルを構築
―特定健診・特定保健指導を起点にアウトカムを可視化
2025年05月16日
高齢者がスマホなどのデジタル技術を利用すると認知症予防に 高齢者がネットを使うと健診の受診率も改善
2025年05月16日
【高血圧の日】運輸業はとく高血圧や肥満が多い 健康増進を推進し検査値が改善 二次健診者数も減少
2025年05月12日
メタボとロコモの深い関係を3万人超の健診データで解明 運動機能の低下は50代から進行 メタボとロコモの同時健診が必要
2025年05月01日
ホルモン分泌は年齢とともに変化 バランスが乱れると不調や病気が 肥満を引き起こすホルモンも【ホルモンを健康にする10の方法】
2025年05月01日
【デジタル技術を活用した血圧管理】産業保健・地域保健・健診の保健指導などでの活用を期待 日本高血圧学会
2025年04月17日
【検討会報告】保健師の未来像を2類型で提示―厚労省、2040年の地域保健を見据え議論
2025年04月14日
女性の健康のための検査・検診 日本の女性は知識不足 半数超の女性が「学校教育は不十分」と実感 「子宮の日」に調査
2025年03月03日
ウォーキングなどの運動で肥満や高血圧など19種類の慢性疾患のリスクを減少 わずか5分の運動で認知症も予防
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶