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アルコールが乳がんリスクを1.5倍に上昇 女性ホルモンや発がん物質が影響? 日本人女性3万人を調査

 アルコールを飲む女性は乳がんの発症リスクが高いことが、日本人女性を対象とした大規模調査で明らかになった。
 アルコール摂取は、乳がんリスクを1.46倍に増やし、週1回以下の飲酒でも乳がんリスクが上昇する場合があるという。
日本人女性の乳がん発症率は上昇している
 飲酒と乳がん発症リスクの上昇とは関連があることが、日本人女性を対象とした調査で明らかになった。

 日本人女性の乳がん発症率は上昇している。海外の研究では、飲酒が乳がんリスクを高めることが示されているが、日本人の女性でも同じことが言えるかどうかはよく分かっていなかった。

 「JACCスタディ」は、日本人の生活習慣ががんや2型糖尿病などの生活習慣病とどのように関連しているかを調べるために、1988年に約12万人が参加して開始されたコホート研究。

 京都大学などの研究グループは今回、「JACCスタディ」に参加した日本の24地域の40〜79歳の女性3万3,396人を対象に調査した。20年以上の追跡期間に255人が乳がんを発症した。
緑茶とコーヒーは乳がんリスクを上げない
 研究グループは、アルコール飲料のほか、非アルコール飲料である緑茶やコーヒーの摂取と乳がんの関係についても調べた。

 その結果、女性がもっとも多く飲んでいたのは緑茶で、81.6%が毎日飲むと回答した。一方で、コーヒーを毎日飲んでいたのは34.7%で、アルコール飲料を飲むと回答していた女性は23.6%にとどまった。

 緑茶とコーヒーの摂取と乳がんリスクのあいだには、統計学的に有意な関係はみられなかった。乳がんリスクは、緑茶で1.15倍、コーヒーで0.84倍になった。

 これまでに緑茶やコーヒーには健康に好ましい効果があるという研究も発表されている。
アルコール摂取は乳がんリスクを上昇させる
 飲酒習慣については、「飲酒歴なし/過去に飲酒していたが今はなし」「現在も飲酒習慣あり」のいずれかを選択してもらい、飲酒している人には、飲酒頻度(週1回未満/週に1~2回/週に3~4回/毎日)、1回の飲酒量、好んで飲むアルコール飲料の種類も選んでもらった。

 その結果、アルコール飲料の摂取は乳がんリスクの上昇に関係していた。お酒を飲む女性と、飲まない女性を比べたところ、乳がん発症リスクは1.46倍と、46%高くなった。

 週1回以下の飲酒でも乳がんリスクは増加した。飲酒頻度が週1回未満だった女性で、乳がんリスクは2.07倍と、飲まない女性に比べて2倍以上に高くなった。

 それ以外の、週に1~2回、週に3~4回、毎日、と回答した女性ではリスク上昇はみられず、飲酒頻度が増えるにつれてリスクが上昇する現象もみられなかった。

 アルコールの種類別にみると、乳がんリスクは、ワインを飲む女性ではリスクは飲まない情勢に比べ1.8倍に、ウイスキーでは1.7倍に上昇したが、どちらも人数は少なく、統計学的に有意ではなかった。
なぜアルコールを飲むと乳がんが増える?
 飲酒と乳がんリスクの関係についてのこれまでの研究で、過剰なアルコールの摂取が女性ホルモンであるエストロゲンの濃度を上昇させることが分かっている。過剰なエストロゲンは乳がんの発症に影響する。

 また、アセトアルデヒド、過酸化脂質や活性酸素といったアルコール代謝物に発がん性があり、乳がんのリスクを上昇させる。

 また、飲酒のパターンのうち、短い期間に大量に飲酒すると、エストロゲン濃度がとくに上昇しやすくなり、発がん性物質の蓄積につながると考えられている。

 なお、今回の調査では、女性の飲酒頻度について週1回未満の女性について十分なデータを得られなかった。そのため、飲酒の頻度が週1回未満の女性は、飲む頻度は少ないものの、1回に大量のアルコールを摂取している場合があり、乳がんリスクの上昇が大きくなった可能性があるとしている。

JACCスタディ(北海道大学 公衆衛生学教室)
Intake of Common Alcoholic and Non-Alcoholic Beverages and Breast Cancer Risk among Japanese Women: Findings from the Japan Collaborative Cohort Study(Asian Pacific Journal of Cancer Prevention 2020年6月1日)
[Terahata]
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