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【新型コロナ】「飲み会」での集団感染を防ぐために何をすれば良い? 国立感染研が具体策
2020年11月04日

国立感染症研究所は、酒場などのいわゆる「飲み会」で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に集団感染したとみられる具体的な事例を公表した。
どうすれば「飲み会」での感染を防げるのか。「3密を避け、マスクを着用し、手指の衛生にも注意。回し飲みはしない」といった具体的な対策も提案している。
どうすれば「飲み会」での感染を防げるのか。「3密を避け、マスクを着用し、手指の衛生にも注意。回し飲みはしない」といった具体的な対策も提案している。
「飲み会」で感染しやすい条件とは?
国立感染症研究所は、いわゆる「飲み会」で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に集団感染したとみられる具体的な事例を公表した。
同研究所実地疫学専門家養成コース(FETP)は、COVID-19の実地疫学調査を行っている。クラスター対策班として、都道府県や保健所とともに、2020年2月以降、35都道府県の121件の集団発生事例を調査してきた。
その結果、いわゆる「飲み会」で感染した例では、客と客の間の伝播が多いことが分かった。
酒場などでは、▼十分な距離を保てない状況下での飛沫、▼発症者が同グループの同席にいた、▼店内の換気が不良、▼人が密な空間での飲食などにより感染した事例が多い。
発症者が別グループにいたにもかかわらず、客-客間で伝播した事例も報告された。
これらでは、▼参加人数が多く、人が密集しやすい環境だった、▼多数の人(別グループの人も含む)と接触し会話した、▼席移動が頻繁に行われた、▼飲み物の回し飲みがみられたといった特徴がみられた。
「飲み会」での感染を防ぐための具体策
国立感染症研究所ではこれらの調査事例をもとに、酒場などでの「飲み会」での集団感染を防ぐために、注意すべき事項として、次のことを提案している。
酒場などでの「飲み会」での感染を防ぐための具体策
まず一般的な感染対策である、マスク着用、手指衛生、従業員の健康管理、身体的距離の確保、店内のこまめな換気を実施する。
【客】■ 体調不良の人は、イベントや宴会に参加しない。
■ 感染リスクを極力おさえるため、「密閉」(換気の悪い空間)、「密集」(狭い空間に多くの人が集まっている)、「密接」(たがいに手を伸ばしたら届く距離での会話や発声)の3密を避ける。
■ 日頃から、正しいマスク着用・手指衛生を心がける。
■ 回し飲み(グラスなどの飲用に用いる容器の共用)をしない。
■ 店内の別グループへの不要な接触を避ける。 【従業員】
■ 密集しないような店内レイアウト・座席配置を工夫する(とくに宴会・イベント時)。
■ 席移動の制限を設ける。
飲み会では客-客間の伝播が多い
同研究所の今回の実地疫学調査では、いわゆる「飲み会」の際に発生したとみられる集団感染事例(同一店舗内で2例以上の確定症例が確認された事例)について、具体的な知見などにつながる情報が得られた6事例をピックアップ
なお、カラオケがあわせて行われたことが確認された事例については、今回は対象から除外された。
その結果、同グループの客-客間の伝播事例が5例、別グループの客-客間が3例、客-従業員間が2例だった(複数経路の事例あり)。
■ 同グループの客-客間の事例
ケースAでは発症者に座席が近い4人が感染し、対角線上に距離が離れた座席の者は感染しなかった。また、「飲み会」の開催時に参加者の1人がすでに咳症状を呈していた。
ケースBでは、店内に窓がなく、換気状況が不良の個室内の事例であり、同席した同グループ内の客は全員感染した。
ケースEでは、ケースBと同様に窓がなく、換気状況が不良の個室内の事例であり、隣席の客と肩がぶつかるほどの距離であり、人が密な環境だった。


出典:国立感染症研究所、2020年
別グループの客-客間の事例
上記に加えて、客が座席移動して別グループの客と一緒に会話・飲食したり、飲用容器の共用(飲み物の回し飲みなど)をしたりすることによって感染したとみられる事例も報告されたて。
ケースCでは、日本フードサービス協会、全国生活衛生同業組合中央会作成の「外食業の事業継続のためのガイドライン」に従い、テーブル上でアクリル板の設置を行っていたが、高さが十分でなく、テーブルの両端に設置されていたため、対面や隣席同士に座った客からの飛沫を防止する効果は少なかったことが示唆された。
ケースDでは、店内はカウンター席と小上がり席のみからなる小規模の店舗内の事例であり、換気状況が良好でなかったことから、出入口2か所を開放し、扇風機を使用する換気方法を実施していたが、近距離間の会話によって感染伝播した可能性が考えられる。
国は、『「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法』で、機械換気(空気調和設備、機械換気設備による換気)が実施できない場合には、窓の開放やドアを開けることによる換気を推奨しているが、客-客間に十分な距離が保てない小規模の店舗などの場合はとくに注意を要するとしている。

出典:国立感染症研究所、2020年
■ 客-従業員間の事例
ケースDでは、従業員はマスク着用をしていたにもかかわらず、客(マスク着用なし)と会話を多くしていた従業員の感染が認められた。
したがって、通常の「飲み会」では、従業員がマスク着用などの一般的な咳エチケットや適切な手指衛生を行うことによって、客から従業員への感染を防げる可能性がある。
ただし、ケースFでは、従業員はマスクを着用していたものの、感染者との近距離で会話などをしたため感染したとみられており、マスクの着用だけでは完全に感染を防げないことも示唆された。

出典:国立感染症研究所、2020年
今回の結果から、いわゆる「飲み会」の事例では、客-客間の伝播が多くみられ、「十分な距離を保てない状況下での飛沫」「発症者が同グループの同席に存在」「店内の換気不良」「人が密な空間での飲食」等によって感染したとみられる事例が認められた。
ベトナムや中国の事例によると、換気の悪い混雑した屋内環境が原因での感染拡大報告や、店内のエアコンの気流の方向と飛沫の伝播が一致したという報告があり、その中で、感染の蔓延を防ぐため、テーブル間の距離を取ること、そして店内の換気を改善することが必要であると述べられている。

出典:新型コロナウイルス感染症対策分科会、2020年
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報(国立感染症研究所)「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法(厚生労働省)
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