ニュース

中年期に運動と食事を改善すると人生後半は健康に 肥満・メタボは体重を3%減らしただけでも改善

 中年期に運動療法と食事療法の両方を実行していると、年齢を重ねてから、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患を予防できることが、米国心臓学会(AHA)などの研究で明らかになった。
 体重を3%減らしただけでも、肥満・メタボは改善する。早い時期から運動と食事の改善に取り組むことが、人生の後半に大きな成果につながる。
運動・食事は早い時期から取り組むことが大切
 肥満やメタボ、内臓脂肪の蓄積、血糖を下げるインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性、2型糖尿病、高血圧などがあると、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクが高まる。

 「人生の早い時期から、健康的な食事をとり、運動を習慣として続け、生活スタイルを健康的に変えていくと、年齢を重ねてから心筋梗塞や脳卒中などのリスクを低下させることにつながります」と、米ボストン大学医学部予防医学・疫学部のヴァネッサ ザンタキス氏は言う。

 「将来に健康障害が起こる危険性を回避するために、早い時期から食事や運動に取り組んで、体のコンデションを良くしておくことが大切です」としている。

 運動ガイドラインでは、肥満やメタボなどを予防・改善するために、ウォーキングなどの中強度以上の活発な運動を週に150分以上、または高強度の運動を75分以上行うことが勧められている。

 また、食事ガイドラインでは、▼野菜、全粒粉、肉や魚、果物、大豆類、豆類、乳製品など多様な食品をバランスよく摂る、▼摂取カロリーを調整することで、肥満や過体重を予防・改善する、▼不健康な脂肪(飽和脂肪酸)を減らす、▼塩分やアルコール飲料を摂り過ぎないことなどが勧められている。
運動と食事のガイドラインの順守度を調査
 この研究は、米国心臓学会(AHA)などの支援を得て行われたもので、その成果は医学誌「Journal of the American Heart Association」に発表された。

 研究グループは、米国で1948年から行われている、心筋梗塞や脳卒中の効果的な予防策を調べるための大規模研究である「フラミンガム心臓研究」のデータを利用した。この研究は現在、3世代の参加者を対象に続けられている。

 研究グループは、フラミンガム心臓研究の第3世代の参加者2,379人(平均年齢47歳、54.4%が女性)のデータについて、横断的な解析を行った。参加者に活動量計を携帯してもらい8日間の身体活動を記録し、座りがちな生活をしていないかを調べ、食事アンケートにも答えてもらった。

 米国人のための2018年版運動ガイドラインと、2015年版食事ガイドラインの順守度を調べた。運動と食事の両方のガイドラインの推奨事項を満たしていた参加者は28%だった。どちらか1つの推奨事項を満たしていた参加者は47%だった。

関連情報
食事療法と運動療法の両方を行うことが重要
 メタボリックシンドローム(メタボ)とは、内臓脂肪型肥満に高血圧、脂質異常、高血糖などが合わさった状態のことをいう。

 メタボの原因は、過食や運動不足、睡眠不足や睡眠の質の低下、生活リズムの乱れ、過剰なストレスなどさまざまだ。メタボになると、2型糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞など、さまざまな病気の危険性が上昇する。

 研究では、次のことが明らかになった。

▼運動ガイドラインの推奨事項のみに従った参加者は、メタボの危険率が51%低下した。
▼食事ガイドラインの推奨事項のみに従った参加者は、メタボの危険率が33%低下した。
▼運動と食事の両方のガイドラインに従った参加者は、メタボの危険率が65%低下した。

 「運動と食事の両方を改善すると、人生の後半になって心血管疾患の発症リスクが低下することが示されました。運動療法のみを実行していた人でも、それに食事療法が合わさることで、心血管疾患のリスクはさらに低下していきました」と、ザンタキス氏は指摘する。

 「ヘルスケアの専門家は、食事療法と運動療法を両方行うことが重要であることを患者に強調して、個々に合わせてアドバイスをできるようにすることが望まれます」としている。
体重を3%減らしただけでも血糖・脂質・血圧は改善する
 メタボがあると、2型糖尿病の発症リスクが3~6倍に上昇する。また、メタボがあると、心血管疾患の発症と死亡のリスクが1.5〜2倍に上昇する。

 肥満をともなう糖尿病の食事療法の基本は、エネルギー摂取量が適切で、栄養素バランスの良い食事をすること。

 食事療法で注意すべきなのは、急激な減量をしないこと。極端な食事制限などによって短期間で大幅に体重を減らすと、脂肪だけでなく筋肉も減ってしまう。筋肉が減ると、消費されるエネルギー量も減ってしまうため、食事から摂取したエネルギーを使えず、体重がリバウンドしてしまうおそれがある。

 健康的に減量するために勧められるのは、3~6ヵ月かけて現在の体重を3%減らす食事法だ。これなら無理なく続けられて、体重減少後のリバウンドを防げる。

 体重を3%減らしただけでも、インスリンの効きが良くなり、脂質、血圧の異常が改善することが多い。

 たとえば、体重75kgの人の場合、体重の3%は2.3kgだ。それくらいであれば、食事と運動を工夫すれば、実行するのは難しくないのではないだろうか。

Exercise, healthy diet in midlife may prevent serious health conditions in senior years(米国心臓学会 2021年3月31日)
Conjoint Associations of Adherence to Physical Activity and Dietary Guidelines With Cardiometabolic Health: The Framingham Heart Study(Journal of the American Heart Association 2021年3月31日)
Risks for all-cause mortality, cardiovascular disease, and diabetes associated with the metabolic syndrome:a summary of the evidence(Diabetes Care 2005年7月)
Lifestyle weight-loss intervention outcomes in overweight and obese adults with type 2 diabetes:a systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials(Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics 2015年9月)
[Terahata]

「健診・検診」に関するニュース

2023年02月24日
がん検診発見例が減り早期がんも減少傾向だが、現時点での評価は困難
国立がん研究センター「院内がん登録全国集計」速報値より
2023年01月20日
保健師など保健衛生に関わる方必携の手帳「2023年版保健指導ノート」
2023年01月17日
【特定健診】40歳以上の半数は生活習慣病かその予備群 健診受診率の引き上げと、働く人のヘルスリテラシーを向上することが課題に
2023年01月16日
わずか「1分間の運動」でも健康効果が 忙しい人も仕事や家事の合間に簡単な運動を行うと寿命を延ばせる
2023年01月05日
特定保健指導は効果があった! 肥満指標はわずかに改善 血糖や中性脂肪も 582万人のデータを解析
2023年01月04日
【もっとも読まれたニュース トップ10】変化の年だった2022年 保健指導リソースガイド
2022年12月20日
健診で「腎臓病」を指摘されても、医療機関で診断を受けたのは5年以上も後 理解促進と対話の場が必要
2022年12月15日
日本産業保健師会が「新任期産業保健師養成研修」「産業保健師リーダー養成研修」を開催 
参加型研修を重視し、キャリアラダーに基づいた産業保健師のための研修会
2022年12月12日
13種類のがんを1回の血液検査で発見できる次世代診断システム 「がんの種類」を高精度で区別 がん研究センターなど
2022年12月06日
40歳未満の健診情報もマイナポータルで確認・閲覧可能へ
若年世代からの生活習慣病予防・健康づくりを
アルコールと保健指導

トピックス・レポート

無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶