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「糖質制限」で肥満・メタボのリスクを低下 甘いお菓子や清涼飲料が心筋梗塞や脳卒中の原因に

 糖質を、お菓子やスナックなどの加工食品から20%、清涼飲料から40%、それぞれ削減することで、多くの人の死亡を防ぐことができ、肥満やメタボ、糖尿病も予防できるという研究が米国で発表された。
 加工食品からの過剰な糖質の摂取が、肥満やメタボの原因になっている。糖質制限をすることで、248万件の心血管疾患イベントを防げ、4,700億円の医療費を削減できるとしている。
米国成人の5人に2人以上が肥満
 糖質を、お菓子やスナックなどの加工食品から20%、清涼飲料から40%、それぞれ制限することで、多くの人の死亡を防ぐことができ、2型糖尿病の予防もできるという調査結果を、米国のマサチューセッツ総合病院やハーバード公衆衛生大学院などが発表した。

 糖質が多く添加された甘くて高カロリーの加工食品や飲料は、肥満や2型糖尿病の増加と強く関連している。これらは、米国人の主な死亡原因となっている心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクを上昇させる。

 米国成人の5人に2人以上が肥満で、2人に1人は糖尿病か糖尿病予備群だ。その結果、2人に1人が心血管疾患のリスクが高く危険にさらされている。

 「健康格差の拡大や医療費の増加を抑制するために、糖質の低減目標を掲げた国家プログラムを立ち上げるべきです」と研究者は述べている。
加工食品の糖質がカロリーを高めている
 菓子類や清涼飲料などの加工食品に含まれる「フルクトース(果糖)」は、食品のカロリーを高めるだけでなく、2型糖尿病や肥満、心血管疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)などのリスクも高める。

 ジュースやコーラなど清涼飲料や菓子類などの甘味の強い加工食品の多くに「果糖ブドウ糖液糖」や「ブドウ糖果糖液糖」が甘味料として使われている。

 これらは果糖(フルクトース)とブドウ糖(グルコース)を主成分とする異性化糖。工業的に安定して生産でき、価格が安いので、多くの加工食品に利用されている。異性化糖は甘みが強く、体内への吸収も早い。たくさん摂っても満腹感をあまり得られず、摂り過ぎにつながりやすい。
糖質を制限する政策が必要
 今回の研究は、マサチューセッツ総合病院(MGH)、タフツ大学栄養科学政策大学院、ハーバード公衆衛生大学院、ニューヨーク市衛生精神衛生局(NYC DOH)などの研究グループによるもの。

 米国人の多くが、食事で塩分(ナトリウム)と糖分を摂り過ぎており、健康に悪影響がもたらされている。

 そこで米国では、「米国塩分・糖分削減イニシアチブ(NSSRI)」という国家プログラムが立ち上げられ、食事で摂取する塩分と糖分を減らすことが提案されている。

 研究グループはこのイニシアチブにそって、糖質を制限する政策が医療や経済などにどう影響するかをシミュレートするモデルを作成した。米国民健康・栄養検査調査(2011~2016年)のデータを解析した。
糖質を削減すれば4,700億円の医療費を削減できる
 その結果、加工食品から20%、飲料から40%、それぞれ糖質を削減することで、248万件の心血管疾患イベント(脳卒中、心臓発作、心停止など)、49万件の心血管死、75万件の2型糖尿病の発症を予防できることが明らかになった。

 糖質制限をすることで、米国で10年間に成人人口(35~79歳)の生涯にわたり、4,700億円(42.8億ドル)の医療費を削減できると推定している。

 さらには、糖質を過剰に摂ることで発生したさまざまな病気により、労働生産性が失われている。そうした社会的損失は17兆7,000億円(1608.8億ドル)に上り、糖質制限によりこれを節約できるとしている。

 「これらは控えめに計算したもので、糖質制限により医療や経済に実際にもたらされるベネフィットは、もっと大きいかもしれません」と、研究者は指摘している。

 「食品業界が、糖質制限のポリシーを部分的に遵守した場合でも、医療と経済に大きな利益がもたられる可能性があります」としている。
糖質制限には政府の支援も必要
 米国で糖質制限の政策を推進するために、政府の支援も必要になる。研究グループは、今回の研究が国や企業がコンセンサスを得るために役立てられることを期待している。

 「糖質が多く含まれる食品に課税する、糖質の量を栄養表示に明記し消費者が健康的な食品を選びやすくする、学校や公共施設での販売を禁止するといった、食品の糖質含有量を減らすための政策は、米国人の健康に大きな影響を及ぼすと期待されます」と、マサチューセッツ総合病院のシイ シャングアン氏は言う。

 これまで政府や食品業界などの取り組みとしては、健康に悪影響を及ぼすトランス脂肪酸や、塩分の制限については世界中で行われており、ある程度の成功をおさめている。糖質制限についても、英国、ノルウェー、シンガポールなどで取り組みが開始されており、これに米国も続くべきだとしている。

 「米国塩分・糖分削減イニシアチブ(NSSRI)の目標を達成できれば、米国は糖質の過剰摂取から国民を守る先駆的な取り組みをしているリーダーになれます」と、シャングアン氏は述べている。
加工食品の栄養表示を見ることが大切
 「糖質の摂取量を適正化するための取り組みは、多くの成果をもたらすと期待されます」と、タフツ大学栄養科学政策大学院部長のダリッシュ モザファリアン氏は述べている。

 米国の現状の食事ガイドラインでも、甘いお菓子や清涼飲料などから果糖やブドウ糖などを摂り過ぎないよう推奨しているが、どの加工食品に糖質がどれだけ含まれているかを判別するのは容易ではない。「加工食品を利用するときには、栄養成分表示をよく見ることが大切です」としている。

 「今回の研究は、10年以内に、健康改善や健康格差の解消、医療費の大幅な削減につながる可能性のある糖質制限に、国家的プロジェクトとして取り組むべきであることを示しています」と、モザファリアン氏は指摘している。

U.S. National Salt and Sugar Reduction Initiative (NSSRI)
Reducing sugar in packaged foods can prevent disease in millions(マサチューセッツ総合病院 2021年8月27日)
Health Impact and Cost-Effectiveness of Achieving the National Salt and Sugar Reduction Initiative Voluntary Sugar Reduction Targets in the United States: A Micro-Simulation Study(Circulation 2021年8月27日)
[Terahata]
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