ニュース
「糖質制限」で肥満・メタボのリスクを低下 甘いお菓子や清涼飲料が心筋梗塞や脳卒中の原因に
2021年09月07日

糖質を、お菓子やスナックなどの加工食品から20%、清涼飲料から40%、それぞれ削減することで、多くの人の死亡を防ぐことができ、肥満やメタボ、糖尿病も予防できるという研究が米国で発表された。
加工食品からの過剰な糖質の摂取が、肥満やメタボの原因になっている。糖質制限をすることで、248万件の心血管疾患イベントを防げ、4,700億円の医療費を削減できるとしている。
加工食品からの過剰な糖質の摂取が、肥満やメタボの原因になっている。糖質制限をすることで、248万件の心血管疾患イベントを防げ、4,700億円の医療費を削減できるとしている。
米国成人の5人に2人以上が肥満
糖質を、お菓子やスナックなどの加工食品から20%、清涼飲料から40%、それぞれ制限することで、多くの人の死亡を防ぐことができ、2型糖尿病の予防もできるという調査結果を、米国のマサチューセッツ総合病院やハーバード公衆衛生大学院などが発表した。
糖質が多く添加された甘くて高カロリーの加工食品や飲料は、肥満や2型糖尿病の増加と強く関連している。これらは、米国人の主な死亡原因となっている心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクを上昇させる。
米国成人の5人に2人以上が肥満で、2人に1人は糖尿病か糖尿病予備群だ。その結果、2人に1人が心血管疾患のリスクが高く危険にさらされている。
「健康格差の拡大や医療費の増加を抑制するために、糖質の低減目標を掲げた国家プログラムを立ち上げるべきです」と研究者は述べている。
加工食品の糖質がカロリーを高めている
菓子類や清涼飲料などの加工食品に含まれる「フルクトース(果糖)」は、食品のカロリーを高めるだけでなく、2型糖尿病や肥満、心血管疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)などのリスクも高める。
ジュースやコーラなど清涼飲料や菓子類などの甘味の強い加工食品の多くに「果糖ブドウ糖液糖」や「ブドウ糖果糖液糖」が甘味料として使われている。
これらは果糖(フルクトース)とブドウ糖(グルコース)を主成分とする異性化糖。工業的に安定して生産でき、価格が安いので、多くの加工食品に利用されている。異性化糖は甘みが強く、体内への吸収も早い。たくさん摂っても満腹感をあまり得られず、摂り過ぎにつながりやすい。
糖質を制限する政策が必要
今回の研究は、マサチューセッツ総合病院(MGH)、タフツ大学栄養科学政策大学院、ハーバード公衆衛生大学院、ニューヨーク市衛生精神衛生局(NYC DOH)などの研究グループによるもの。
米国人の多くが、食事で塩分(ナトリウム)と糖分を摂り過ぎており、健康に悪影響がもたらされている。
そこで米国では、「米国塩分・糖分削減イニシアチブ(NSSRI)」という国家プログラムが立ち上げられ、食事で摂取する塩分と糖分を減らすことが提案されている。
研究グループはこのイニシアチブにそって、糖質を制限する政策が医療や経済などにどう影響するかをシミュレートするモデルを作成した。米国民健康・栄養検査調査(2011~2016年)のデータを解析した。
糖質を削減すれば4,700億円の医療費を削減できる

糖質制限には政府の支援も必要
米国で糖質制限の政策を推進するために、政府の支援も必要になる。研究グループは、今回の研究が国や企業がコンセンサスを得るために役立てられることを期待している。
「糖質が多く含まれる食品に課税する、糖質の量を栄養表示に明記し消費者が健康的な食品を選びやすくする、学校や公共施設での販売を禁止するといった、食品の糖質含有量を減らすための政策は、米国人の健康に大きな影響を及ぼすと期待されます」と、マサチューセッツ総合病院のシイ シャングアン氏は言う。
これまで政府や食品業界などの取り組みとしては、健康に悪影響を及ぼすトランス脂肪酸や、塩分の制限については世界中で行われており、ある程度の成功をおさめている。糖質制限についても、英国、ノルウェー、シンガポールなどで取り組みが開始されており、これに米国も続くべきだとしている。
「米国塩分・糖分削減イニシアチブ(NSSRI)の目標を達成できれば、米国は糖質の過剰摂取から国民を守る先駆的な取り組みをしているリーダーになれます」と、シャングアン氏は述べている。
加工食品の栄養表示を見ることが大切
「糖質の摂取量を適正化するための取り組みは、多くの成果をもたらすと期待されます」と、タフツ大学栄養科学政策大学院部長のダリッシュ モザファリアン氏は述べている。
米国の現状の食事ガイドラインでも、甘いお菓子や清涼飲料などから果糖やブドウ糖などを摂り過ぎないよう推奨しているが、どの加工食品に糖質がどれだけ含まれているかを判別するのは容易ではない。「加工食品を利用するときには、栄養成分表示をよく見ることが大切です」としている。
「今回の研究は、10年以内に、健康改善や健康格差の解消、医療費の大幅な削減につながる可能性のある糖質制限に、国家的プロジェクトとして取り組むべきであることを示しています」と、モザファリアン氏は指摘している。
U.S. National Salt and Sugar Reduction Initiative (NSSRI)Reducing sugar in packaged foods can prevent disease in millions(マサチューセッツ総合病院 2021年8月27日)
Health Impact and Cost-Effectiveness of Achieving the National Salt and Sugar Reduction Initiative Voluntary Sugar Reduction Targets in the United States: A Micro-Simulation Study(Circulation 2021年8月27日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2022 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「特定保健指導」に関するニュース
- 2021年12月21日
- 特定健診・保健指導の効果を10年間のNDBで検証 体重や血糖値が減少し一定の効果 ただし体重減少は5年後には減弱
- 2021年12月21日
- 【子宮頸がん】ワクチン接種を受けられなかった女性へのキャッチアップが必要 子宮頸がん検診で異常率が上昇
- 2021年12月21日
- 肥満や糖尿病の人ではFGF21の抗肥満作用が低下 朝食抜き・毎日飲酒・喫煙といった生活スタイルが影響
- 2021年12月21日
- 【申込開始】今注目のナッジ理論、感染症に関する教材が新登場!遠隔指導ツールも新作追加! 保健指導・健康事業用「教材・備品カタログ2022年版」
- 2021年12月20日
- 牛乳を毎日コップ1杯飲んでいる女性は脳卒中のリスクが低下 牛乳に血圧を下げる効果が?
- 2021年12月20日
- 「住環境」は健康増進にも影響 「断熱と暖房」が血圧や住宅内での活動量に寄与 足元が暖かいことも大切
- 2021年12月13日
- 早食いは肥満や体重増加につながる ゆっくり味わってよく噛んで食べるとエネルギー消費量を増やせる
- 2021年12月13日
- 【新型コロナ】子供の心の実態調査 食事を食べられなくなる「神経性やせ症」の子供がコロナ禍で増加
- 2021年12月13日
- 【新型コロナ】ファイザーのワクチンの3回目接種はオミクロン株にも効く? 抗体価は半分に減るものの2回接種より25倍に増加
- 2021年12月13日
- 【新型コロナ】日本人はなぜ感染・死者数が少ない? 風邪でつくられた免疫が新型コロナにも有効に働いている可能性 理研
最新ニュース
- 2022年05月23日
- 【新型コロナ】保健師がコロナ禍の拡大を食い止めている 保健師の活動が活発な地域では罹患率は減少
- 2022年05月23日
- 【新型コロナ】起床・朝食が遅くなった子供で運動不足や栄養バランスの乱れが 規則正しい食事・睡眠が大切
- 2022年05月23日
- 【新型コロナ】コロナ禍で結婚数と出生数が減少 将来に対する不安や経済的な悩みが原因?
- 2022年05月23日
- 【子宮頸がん】HPVワクチンの予防効果は優れている 接種9年後の感染率は0% ワクチンの有効率は100%
- 2022年05月23日
- 余暇に軽い身体活動をするほど健診結果は良くなる 活動量の実測データにもとづく世界初の研究
~保健指導・健康事業用 教材~
-
アイテム数は3,000以上! 保健指導マーケットは、健診・保健指導に役立つ教材・備品などを取り揃えたオンラインストアです。 保健指導マーケットへ