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【子宮頸がん】HPVワクチンの積極的な接種勧奨の再開を 接種機会を逃した女性に対する支援も必要
2021年09月14日
子宮頸がんを予防するためのHPVワクチンは、2013年に無料で受けられる定期接種の対象になった。しかし同年、厚生労働省は積極的な接種の勧奨を中止した。
その結果、接種対象者(小学6年~高校1年の女子)の接種率は、70~80%から1%以下に激減した。日本では年間約3,000人の女性が、子宮頸がんにより命をおとしている。
現在、HPVワクチンの積極的な接種勧奨の再開を強く求める声が各方面から上がっている。
その結果、接種対象者(小学6年~高校1年の女子)の接種率は、70~80%から1%以下に激減した。日本では年間約3,000人の女性が、子宮頸がんにより命をおとしている。
現在、HPVワクチンの積極的な接種勧奨の再開を強く求める声が各方面から上がっている。
子宮頸がんは若い世代でも増えている
子宮頸がんは若い世代の女性でも増加している。子宮頸がんは20代後半から患者数が増え、日本では毎年1万人以上がかかり、年間約3,000人の女性が亡くなっている。若い母親が子供を残して亡くなるケースもあり、「マザーキラー」とも呼ばれている。
一方で、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を、ワクチンにより防げることは十分に認知されていない。2013年に定期接種となったが、接種後に全身の痛みやしびれなどの「多様な症状」を訴える人が相次ぎ、国は積極的な接種勧奨を一時的に差し控えていることが影響している。
その結果、国民へのHPVワクチン接種はストップし、接種率が1%未満にまで落ち込んでいる。
その一方で、HPVワクチンの有効性と安全性については再確認が進められており、十分な科学的エビデンスが国内外で蓄積されている。すでにHPVワクチンの接種が定着している海外では、日本で報道されたようなワクチン接種による「多様な症状」の増加は報告されていない。
出典:日本産科婦人科学会、2019年
HPVワクチンの積極的な接種勧奨の再開を要望
積極的勧奨の一時差し控えにより、ワクチン接種を見送る女性が次々にあらわれ、接種の有無による将来の子宮頸がんに関する健康格差が懸念されている。
HPVワクチンの積極的な接種勧奨が中止されてから、8年以上が経過した2021年8月にようやく、厚生労働大臣は積極的な接種勧奨の再開に向けた見通しを表明した。
それにさかのぼる2019年に、日本産科婦人科学会はHPVワクチンの積極的勧奨の再開を求める要望書を、内閣官房長官などに提出していた。
▼HPVワクチンの積極的勧奨の速やかな再開、▼積極的勧奨一時差し控えによりHPVワクチンを接種しないまま定期接種対象年齢を越えた女子に対する、定期接種に準じた接種機会の確保を求めている。
「みんパピ! みんなで知ろうHPVプロジェクト」の代表で産婦人科医の稲葉可奈子氏らも、「HPVワクチンの積極的な接種勧奨の再開を求める署名活動」を展開し、5万8,000人を超える署名を集めた。
出典:日本産科婦人科学会、2019年
無料のワクチン接種 高3まで接種期間の延長を
現在、自治体から接種対象者に個別に接種を奨めるような積極的勧奨は中断されているものの、定期接種としての位置づけに変化はなく、公費助成による接種は可能だ。
日本産科婦人科学会は2021年8月27日に、現在は小学6年~高校1年の女子が無料で受けられる定期接種の対象となっている子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)について、接種できる期間を高校3年まで延長するよう求める要望書を厚生労働省に提出した。
要望書では、来年度には時限措置として接種対象を全国で高校3年まで延長し、高校2年以降でも接種できることを対象者へ周知するよう求めている。接種勧奨の中止により、HPVワクチンの関する情報が届かず、接種機会を逃している女性が多い。そうした女性へのキャッチアップも必要だとしている。
新型コロナウイルスの流行が続くなか、すでに多くの自治体が1年延長の特例措置が設け、高校2年まで接種できるようになっているものの、手続きが煩雑であったり、対象学年とワクチン情報について、対象者と保護者への周知も全学年に徹底されていないなどの問題がある。
日本産科婦人科学会は、「将来、先進国の中で日本だけが、多くの女性が子宮頸がんで子宮を失ったり、命を落としたりするという不利益が、これ以上拡大しないよう、ワクチン接種と検診という両者による子宮頸がんの予防およびこの病気の排除を皆さまとともに目指していくべきと考えております」と述べている。
ワクチン接種の機会を逃した女性に対する対応も必要
子宮頸がんの95%以上は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因だ。子宮頸部に感染するHPVの感染経路は、多くは性的接触だ。HPVはごくありふれたウイルスで、性交渉の経験がある女性のうち50%~80%は、HPVに感染していると推計されている。
性交渉を経験する年頃になれば、男女を問わず、多くの人々がHPVに感染する。そのため、はじめての性交渉を経験する前にHPVワクチンの接種を受けることが、子宮頸がんを予防するために効果的だ。すでに世界の80ヵ国以上で、HPVワクチンの国の公費助成によるプログラムが実施されている。
積極的な勧奨がされなかったために、過去8年にわたり、定期接種の機会を逃した女性に対する施策も必要だ。HPVワクチンの接種費用として、ワクチン費用と手技料がかかり、任意で受ける場合は医療機関によってその価格は異なるものの、1回約1万5,000円~2万円程度が必要となる。
2021年2月には、子宮頸がんの原因となるHPV型の90%近くに対応し予防効果があるとされる9価ワクチン「シルガード9」が発売されたが、薬価基準では適用外とれさおり、現時点では任意接種で使用されている。
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